第38話
鬼畜達は言った。具合が悪く無いのに行かないのは許せないと。 それで母は、どうしてもと言うなら、じゃあそのお金は払いますと言った。 だけど本人は絶対に行かないと言っているから、例えそれを払っても、当日に家を出ても、必ず学校へは行かないで、皆が出発する時間迄はどこかそこら辺を歩き回ってから家に戻ると言っているからと言った。 だからどっちにしろ、行かせられないでしょうと。娘は必ずそうすると言っていますからと。 そして自分も、そんなフラフラと歩いていたりしてそ男の教師が車で迎えに来て、見つかって無理矢理に連れて行かれたりしたら大変だから、当日は家から一歩も出さないで、義理の兄にでも来てもらって、万が一家に訪ねて来て連れて行こうとしても出させない様にしてもらうからと言った。祖母だけだと無理矢理に入って来て、たとえ私服でもなんでも、そのままの格好で連れて行かれるかもしれないからと!! そして、もし家に来られたら直ぐに警察を呼んで、事情を説明してもらって、娘にも具合が悪いと言う様にしっかりと言い渡しておくからと言った。 又は、横須賀の妹の家に前の日から行かせて泊まらせて、絶対に修学旅行中は帰らせない様にするからと。そして、もし誰かが学校から来たりしたら、幾ら何でも横須賀までは家を探し当てて行かないとは思うが、万が一した場合には、やはり直ぐに警察を呼ぶ様に、妹にも頼んでおくからと言った。 だからどっちにしろ、今もし行かせると言ってそのお金を出したとしても、結局は行かない訳だから同じだと言った。 鬼畜達は、そんな事をするなら私が学校には合わないし、自分達は前からそう思っていたから、学校を辞めさせる様にと強く言った。母は断った。何も辞めさせる必要は無いからと。 鬼畜達は、私の様な目立つ生徒は学校に合わないと言い、どうしても辞めさせた方が良いからと、それが私の為だと言った。 甘堂も、自分が担任に決まった時には、見た目が目立つから凄く面倒臭い生徒を押し付けられたと思い、うんと嫌だったと言った。 母は言った。娘の為なら、黙って通わせて卒業させるのがそうだと。別に後5年も10年も通う訳ではないし、たった後一年なのだから。 それに、娘が合わないだなんて、そんな事がある筈がない。何故ならそこはキリストを信仰している学校で、キリスト教とは、外国の神を信仰している。そして日本が仏教国の様に、欧米ではキリスト教だ。なら、他の日本人の子よりももっと合っていると言っても、何もおかしくはないと。 今岡はそんな事は関係無いと言った。 母は、だったら娘が合わないと言うのも関係無いと。何故なら校長や副校長がそう言って辞めさせようとしている訳ではなく、現に入る時には面接もあった。だからどういう人間かを見て入れている。(副校長が面接をしたのだ。) だからよっぽど酷い、とんでもない事をした訳でもないのに、自分達が嫌だからと言う 理由で辞めさせられる訳にはいかない。 例え嫌でも、自分達が働いている学校が良いと認めて入れている訳だから、なら従業員の自分達もその学校の方針に従って、入れた 生徒にはちゃんとに普通に接するのが当たり前ではないのか、と言った。 今岡達は次には、私がいい気になっていると決め付けた。目鼻立ちがハッキリしていて、自分の顔や背が高い事で得をしているからと。 母は言った。それなら絶対に、目鼻立ちがハッキリした子は日本人でいないのかと?!そんな事はあり得ない。必ず学年に何人かいるに決まっていると言った。 又、そうした顔だからと言ってそんな事は無い。得など何もしていない。 そういうのは、もっと日本人ぽい子で、モデルなんかをやっていて、雑誌やテレビに出ている子ならそうかもしれないが、自分の娘では無い。 娘はいつもジーパンにTシャツやトレーナーだとかを着て、スニーカーを履いていて、 目立つ格好なんてしていない。目立ちたくないから地味な格好をしている。 それでも人が、ハーイだとか声をかけてきたり、小さな子供がジロジロ見たり、親に、「ママ、外人がいるよ!!」なんて言って バスの中で騒いだりして、親が困りながらも何も言わなかったりしている。 又、小学校三、四年生位の少年が3人位で いきなり側に来て、「おい、お前外人だろう。英語喋れるのか?何か言ってみろ?!」なんてうるさく騒いで、自分が叱りつけて追い払ったりだとか、自分と、私の祖母と三人とで外出しようとして家の前を歩いていたら、通った中年のサラリーマンがいきなり娘の前に飛び出して来て、片言の英語で一生懸命に話しかけて、行こうとすると隔てる。 自分達がいるのも他人かと思い、聞いているからともっと得意になって繰り返して、娘は困って黙っている。自分達も驚いて、知っているのかと聞いていたら、家族なのがやっと分かり、「すみませんでした!!申し訳ございません。」と謝りながらコソコソと逃げて行ったりだとか、もうそうした事は年中だと知らせた。(今とは違い、まだ昔の、昭和の時代、西暦なら70年代だ。) 本人にも聞いたら、そうした事は殆ど毎日か、無くても2、3日に一回は必ずあると言ったと言った。 普通ならそんな事はないし、ましてやそんな子供に、高校生で、もっと年上の子がお前呼ばわりをされたりして、凄く可哀想だと思ったと言った。 だから、決して可愛いだとか綺麗だなんて言われてチヤホヤされたりする事ばかりでは無いと言った。 又、背が高いだとか言うが、そんなのはああした子なら普通に幾らでもいる。混血や欧米人の子ならあの身長は別に高くなどないし、もっと大人でもいる。アメリカ人なら極普通にいる。 なのに背が大きいだとか顔が違うだとか、 よくそんな事が言える!自分の顔や身長なんて選べないのに、生物を教えているのによくもそんな事が言えると本人も呆れて言っていたと言った。 身長も、高いのが悪いみたいに言っていたが、「だったら、ネズミだがモグラだか知りませんが、小さければ良いだなんて事はありませんから。」、と言った。わざと嫌味でだ。(甘堂は小さいから、本当はそんな事は別に母も気にしていないのだが。) 「顔だって、もし誰かに自分が、何で目が小さいんだとか鼻が低いんだなんて言われたら、凄く悲しいし嫌ですから。自分のせいでも何でもなくそう産まれてきただけなのに。私だって選べるんなら、それこそ吉永小百合みたいな顔になりたいですから。」、と言った。そしてそうした事は、大体教師が言う様な言葉じゃない、と。 結局鬼畜達は、例えお金を払っても私は行かないし行かせない、もし当日休ませて騒がれたら、うちのかかり付けの近所の個人病院で、具合が悪いと診断書を書いてもらうし、此処も事情を話せば必ず出してくれるからと言った。 そうすれば、医者が出した物をインチキだなんて言えないし、又そんな事を言えば病院側もうんと怒るだろうと。どんな証拠があって嘘だと言うんだと言って。 とにかくこうして、長いが、最終的には話は着いた…。鬼畜達は仕方無く帰って行った。この時はさぞや悔しかったのではないだろうか?!
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