第33話
松山をその日、放課後に見た。(私は運良く、職員室に呼ばれていなかった。)能面・鈴木が一緒に帰ろうと言うのを、彼は突っぱねていた。今日はとにかく嫌だ、お前とは帰りたくないと言って。 もう一人の若い教師もそこにいたが、懇願して後をくっついて歩く鈴木に、松山は強く拒絶してそこに置き去りにして、二人で帰って行った。鈴木はポツンと取り残された。この光景を私は校庭で見た。 だが松山はあの後に、今川に何か面倒な仕事を言い付けられたのだ。やはりまだ新米教師だから、言われたら逆らえない。私を助けた青木先生と同じだ。 私が廊下でかち会ったから挨拶をしたら、嫌そうな、怒った顔をした。何かを怒っている様だった。返事をしなかった。 理由は直ぐに分かった。しばらくは今岡に目を付けられて、面倒な雑用だとかをさせられていたのだ。一度、廊下で何か言われて注意をされていたのを見たから。 今岡は学年主任だし、古いから、違う学年や関係無い教師達にも影響力があった。庭隅の様なやはり古株には違ったし、多分対等だったと思うが。 だが始末が悪い事に、樽辺が受け持つクラスの生徒二人が、私が樽辺達に睨まれて虐められているのに気付き、それをを良い事に、私に嫌がらせをする様になった。 私にわざとぶつかりながら何か悪口を言ったりして、私が言い返すと大騒ぎをして樽辺を呼んで言い付けた。私が片方に手を挙げたと。 樽辺が甘堂を従えて飛んで来て、私を叱り、謝る様に言う。何もしていないから嫌だと言うと、もう片方が、自分はしっかりと見たと言い、二人で泣き付く!! 樽辺は、自分のクラスの生徒を信じるから、謝らなければ私の母を学校へ呼ぶと何度も脅す。甘堂も嬉しそうに同意して、脅す。 呼ばせれば良かったのに、馬鹿だから面倒になると思い(もう既になっているのに‼)仕方が無いから何もしていないけれど謝ると、何度もさせられる。二人はほくそ笑む。 この二人は、シンちゃんと同じ様な、太って足が短くて、象足の様な娘達だった。 母も珍しく後から、そんな時には、「じゃあ母を呼んでください、かまいませんから。」と答えろと私に言った。 甘堂と今岡に会った時にも、今度そうした事があったら、かまわないから知らせてくれたら直ぐに行くからと、その男教師に伝える様にと言った。何もしていないのに謝るのは娘が可愛そうだからと。 この象足娘達は私を放課後、離れて見張り、行動を監視し始めた。吉川達は、クラス内ではそんな事をしていたが、放課後はしていなかった。だがクラスの違う、名前も知らないし口も聞いた事の無いこの連中が、私を毛嫌いして見張り、放課後に私の後を毎日つけ始めた。 最初は分からなかったが、私が甘党に呼ばれてない時に、帰ろうとしてトイレから出てくると、そこには甘堂が待ち構えていて、職員室へ来いと言う。そんな事がそれからは何度かあったから分かった。 それでも用があるから帰ると言うと左右の腕にこの卑劣な象足達がしがみつき、無理矢理に引き連れて行く。甘党が先頭を、頭を上げて嬉しそうに歩く。丸で隊長の様に。 そして甘堂はこの垢抜けない、スパイもどきの象足コンビに、私を見張る事を感謝して、又お願いねと何度も頼んでいた。とても感じ良く。 それで私は、放課後は走りながら急いで階段を駆け下り、急いで上履きから靴へ取り替えては、校庭へ駆け出してから校門を抜ける事をし始めた。 そうすると、こいつらは追いつけない。 太っていて身体が重いし足が短い。私は身軽で足が長いから、走れば上手く逃げられた。 始めから鬼畜(達)に呼ばれない限りは、毎日上手く校門まで逃れられた!そして校門まで行き、そこを通過して外へ出る。こうしたらもう追って来ない。 たまに少し、それでも離れて尾行していたが、私とは帰り道が違った様で、いつまでもはしなかった。 だが一度だけ、私はミスってしまった!! 校門から出たが、運悪くトイレに行きたくなってしまったのだ。もっと早くに行けば良かったのに! 放課後前なら、こいつらがつけ狙うなんてできない。クラスは違うし、したとしても私は自分のクラスに戻るだけだ。 だがこの時はトイレに行かなかったので、 25分も歩いて帰れない。本当に物凄く尿意を感じた。だから仕方無く、危険を冒して一回の一番近いトイレへと戻った。 だが、無い方が身軽だからと、カバンを校門の外に置いて行った。そんな物を誰も取る人間なんていない。カバンには外からは誰のか分からないし、他の生徒達もそれを見たからと、興味など持たずにそのまま帰宅するだろうと思った。 だが、甘かった!これが命取りとなった。 トイレから戻るとカバンが消えている。無い!! あいつらが持ち去ったのだ。職員室に持って行き、甘党へ渡したのだ。 そうすれば私が探しに又校内へ戻る。それと、甘堂が私のカバンの中を調べて、又何か下らない嫌がらせができる。だからだ。 意地悪と言うのはどんどんエスカレートする。面白くなるのだ?!相手が困る、嫌がる、苦しむ、辛い、悲しい…。 こうなるのが嬉しいし楽しい。だからやるのだ。そしてその様子を見て喜ぶ。又は見なくても、想像はつく。そうなる様に自分達がしているのだから! だからこの下衆な女達は人のカバンを勝手に持ち去り、私が探していると、甘堂が私を見つけに来た。片方の下衆が私を離れて分からない様に見張り、もう一人が急いで甘堂を呼びに行ったのだ。 甘堂は勝ち誇った様に、私に職員室へくる様にと言い、この下衆女共に丁寧に礼を言って帰した。 二人は、芸をして褒められた犬の様に嬉しそうに、得意になりながら帰って行った。 私は職員室に連れて行かれ、私のカバンがそこにはあり、今岡と樽辺がいた。 カバンの中身が全部出されていて、ノートを調べられたりの持ち物検査をされながら、校門前にカバンを置いたのを叱られて、又こってりと三人にしぼられた。 私に言わせれば、人の持ち物を勝手に持ち去る方がどうかしている。只の泥棒じゃないか!何の権利があってそんな事をするんだ?! 甘堂はこうして私に嫌がらせをする時に、たまに私の事を、背が高いとか大きいとか言って凄く馬鹿にした。だが自分は9歳位の少女並みの身長だった。又、そんな外国の派手な顔のクセにだとかも言ったりした。 余りこうした事も言うので、一度、顔や身長は自分で選べないからと言うと、こう返事が返って来た。 「選べるじゃないの?そんなもん、選べるに決まってるじゃないの?!」 驚き呆れて言った。 「どうやって選べるんですか?!」 「そうやって直ぐに口答えをするんじゃないの!何ですか、その態度は?!」 樽辺が聞いていて割り込む。この男は乱暴な言葉使いをたまにしてから又丁寧語になったり、又乱暴になったりする。 「何だ、高木、その態度?」 私が樽辺を見る。 「高木さん、あなた、お父さんはどこにいるんですか?」
「はい?」 「お父さんですよ。どこですか?言ってください?」 「うちは、いませんから。」 「いない?!いない筈無いでしょう?!どこにいて、何をしてるんですか?」 「だから、いませんから。」 「あなたね〜、いない筈がないでしょう?!どこで何をしてるんですか?」 「いないから、分かりません。」 「そんな、いない筈が無いでしょう。もしいないなら、じゃあ何故あなたが産まれたんですか?いないならそんな筈が無いでしょう?!」 この時に、言ってやろうかと凄く思った。「いなくても産まれてきます。性行為をすれば、子供は生まれますから!」 だが我慢した。そんな事を言えば、逆上すると思ったからだ。本気ではなく、ポーズでだが。親の事をそんな事を言うのかと!!と。文句を言う題材が欲しいだけだ。 どうせ樽辺は只、私の父親がどんな男なのか 興味があっただけだ。 甘堂は笑って言った。 「樽辺先生、もう良いわよ〜?どうせ自分の親の事も満足に答えられないんだから。」 「あぁ、そうですねー。可哀想ですねー、娘がこんなじゃあ。」 甘堂は、自分に都合が悪いとか答えられない時は必ずこう言った。何だその態度は?と。そうやって言えば、聞き返された事から話をそらして、その態度に文句を付けられるからだ。 そして今岡、樽辺、甘堂に共通する虐め方は、どんな事でも題材にするし、だから関係無い事も持ち出すのだ。そうしてどんな事でもしつこく非難する。これは虐めの鉄則かもしれない? だから虐めとは例えば、もし今朝は何を食べて来たかと聞かれて、トースト二枚と目玉焼きだともし答えれば、何故そんな簡単な物を食べて来たんだと叱る。もしご飯に味噌汁と鮭に海苔と玉子焼きだとかを答えれば、何でそんな面倒な、手間がかかる物を食べたのかと又叱る、怒る!ご飯と、昨夜の残りのおかずを食べたと言えば、何故手抜きして、作らないで、昨日のおかずを食べたと怒る。じゃあ、コーンフレークを食べて来たと言えば、欧米人や子供が食べる物を喜んで食べるのか?、と又馬鹿にして叱る、デニッシュやパンケーキなら、何を甘い物だとか流行りの物を食べるんだ?、と又叱る。 要は、何を食べても叱られる訳だ!もし何も食べなかったと言えば、そんなのは体に悪いだろうだとか言って、又叱るのだ。 だが、それが自分の親しいだとか好きな相手なら、例え朝からラーメンだとかカツ丼、カレーライスや焼き肉だとか、普通は食べない物でも叱らない。逆に褒めたりする。 だから、この鬼畜達はそうした輩だから、何を言っても同じなのだ。自分達も当然分かっていて、やりたいからやっているのだ。 だから、凄く意地悪い性格だし、又非常に図々しいのだ。 こうした輩を、だから、本気で相手にはできないし、しなくて良い。 甘堂の姑が、そのうち母と話す事になる。母はある出来事でついに、やっと本気で目覚める?!甘堂の家に電話をしたのが第一弾だ。その時、甘堂は留守で、舅と姑目がいたのだ。 甘堂は、夫と、二人のまだ小さな子供とで、近所に食事へ行ったそうだ。 そして母は甘堂の姑から、甘堂についてどう言った用かと執拗に聞かれる…。 そして古田、庭隅、青木、堀江はたまに学校の帰りに、四人で会う様になっていた。バラバラにその待ち合わせ場所に行く。甘党や樽辺に分からない様に。 万が一、青木や堀江が甘堂につけられたり、見つかったら、その時はそのメンバーはその飲食店には行かない。そしてその鬼畜には上手く言って逃げて帰る、又は最悪、仕方ないから付き合ってお茶をして帰る。そうすれば絶対に隠し通せるからだ。 これも大分後から分かった事だ。 この頃には青木も堀江も、もう甘堂が恐くて、前の様に一緒に帰ったりお茶をしたりをしていなかった。何だかんだ口実を付けて断り、甘党は幾ら誘っても駄目だ。 だから、とてもイライラしていた。その事でも、私に当たった。ハッキリとそうした内容を言って。 又次回に、できたらもう少し詳しく話そう。この秘密の集会についてや、又どうして私が分かったか、甘堂の義母と母との会話に付いても…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます