第32話
二年生の時には、教師の研修生だか、新人教師だかの若い、まだ20代の男性教師が入って来た。研修をうちの学校でして、そのまま残っていたみたいだが、とにかく3人が来た。 その中の一人が、私達のクラスの政治経済を教える事になった。この男は何か大人しそうな、暗そうな感じのする地味な能面顔だった。 私の政治経済の成績は良く無かった。面白くないから勉強をしなかったからだ。 今思えば、もっと、嫌いな科目でも頑張って勉強して、ある程度の成績を取っていたら 良かったのだ。そうしたら最初から、あそこまであの3匹の鬼畜に虐められたり、危機一髪な事柄に何度か会わなくても良かったのだろう。 幾ら私を嫌ったり、差別があっても、自分の教える教科ができればそこまではしなかったのではないか?! 樽辺にしても、最初の授業の時に私を怒鳴っても、それでも私が古典を頑張っていれば、幾ら何でもあそこまではしなかったのだろうとは思う。 だが、誰もそんな事を教えてくれなかったし、私も思い付かなかった。何せ馬鹿だし、家族も馬鹿なのだから!! だから結果、又私を呼び出しては甘堂、樽辺、今岡がいつもの変な言い掛かりを付けて責めて遊んでいる時に、この能面男が何か加勢した言葉を発した。直ぐ近くの席にいたからだ。 樽辺達は驚いて能面を見た。能面がまずいと思い、すぐに謝った。すると三人は凄く嬉しそうに構わないと言って、もっと言ってやってくれと頼んだ。 「良いんですよ、鈴木先生!もっと言ってやって下さい?」と。 すると能面の鈴木の顔がパッと明るくなり、嬉しそうにネチネチといびり始めた。三人は、その様子を嬉しそうに眺めていた。 それから後日、しばらくして私が午後2時位に廊下を歩いていると、樽辺とかち合った。その時、廊下の横の教室が空で、ドアは開いていた。体育とか音楽の授業でそのクラスの生徒はもういなかったのかもしれない。 私は急いで樽辺に会釈をすると、通り過ぎようとした。すると樽辺が私に、その教室に入れと言った。 冗談じゃない!!前の事があるだろう?! 今岡と甘堂とで外から鍵を締めて、中で私を追いかけ回した事が。古田が偶然そこに定規を取りに来て異変に気付き、急いで助けてくれた、あの事件だ。 だから入ったら大変だ!!私は入らないで行こうとした。直ぐに走って逃げたら良かったかもしれない。だが樽辺が又繰り返した。 「教室に入って下さい。」、と。 そこへ、能面の鈴木が歩いて来た。樽辺が 鈴木を見ると喜んで頼んだ。 「鈴木先生!丁度良い所に来た。手伝って 下さい。」 鈴木が私を見た。樽辺は急いで能面に近付くと小声で聞いた。 「先生は、外人とやった事がありますか?」能面・鈴木が驚いて樽辺を見る。 樽辺が又繰り返した。能面が言う。 「いいえ、無いです。」 私は急いで逆方向へ行こうとした。だが逆方向からは今岡が歩いて来て、私は挟み撃ちにされてしまった。今岡が樽辺達を見ながら、嬉しそうに私の前に立つ。 樽辺がそれを確認しながら、能面に又小声で言う。 「手伝って、教室へ連れ込んで下さい。そうしたら、先生にもやらせてあげますから。」能面の顔が驚く。が、直ぐにニヤついた表情に代わる。樽辺が又繰り返して言う。 「先生にもやらせてあげますよ?外人とやった事ないんでしょう?やりたいでしょう?」鈴木が決意を決めた。若い男だ。こんなチャンスは滅多に無い。 「はい。」 そう言いながら私の側に来て腕を掴もうとした! もう今度こそ一環の終わりだ?! 何故、只高校に通っているだけでこんな思いをしなくてはならないのだ?!親がちゃんとに月謝は払っているし、普通に受験して 入った。余りにも馬鹿にしているではないか?! だから、後に母がそうした事を言う。又少しエピソードが起きてからだ。何せ自分の仕事以外は殆ど何でも横着で面倒臭がりで、娘の為には中々腰を上げない親だ。 そしてこの時、私は本当にもう駄目かと思った。今度は相手が二人だ!!二人も男がいるのだから!! だが、この世にはやはり何か不思議な力というのがあるのだろうか?守護霊だとか、天使だとか? 又、危機一髪で助け船が現れる。 その時は短い休憩時間で、次の授業があるから皆教師達は通路を動き回って、自分が教えるクラスへと行く。私も確か戻るところだった。 だからその時に、樽辺と鈴木の後から若い男の教師が歩いて来た。新しく入った、能面・鈴木の仲間だ。 能面が、授業の合間に自分の事をたまに話したから聞いていたが、他の新人教師二人と共に帰り、駅ビルの中とかでよくピザや何かを食べながら雑談してから帰ると言っていた、その仲間だ。 身体が大きく、ドスンとしたガッチリした身体で、身長は樽辺と同じ位あった。柔道でもやっていそうな体格で、肩幅も広かった。 顔は、四角くて大きく、ソバカスが顔面に薄っすらとあり、三角っぽい目に、シーズーやパグの様な上を向いた鼻に大きな唇をしていた。 この青年が私達を見て、その異常な雰囲気に驚いた。そして、直ぐに察した。彼は樽辺に声をかけた。 「何をしてるんですか、樽辺先生?」 「あぁ、何でもありません。」 樽辺が困った様に言った。面倒なのが来たな、と言った感じだ。 「だって、そんな風にみんなで集まって、何してたんですかぁ?」 樽辺は返事をしない。能面は困りながらオドオドした感じになった。 今岡が言った。 「そんな事、あなたに何も関係ありませんよ。早く授業に行って下さい、松山先生!」「行きますよ。でも、皆さんも行かれた方が良いんじゃないですか?じゃないと遅れちゃいますよ? なぁ、鈴木?!」 能面は黙っていたが、急いで逃げる様に行ってしまった。 今岡が返事をした。 「あなた、何を偉そうに指図してるんですか?!自分の立場を分かってるんですか?!」 ヒステリー状態だ。 「アハハ、そんなに向きにならないで下さいよー!そんなにピリピリして怒ると、顔の シワが目立ちますよ?」 「な、何ですって〜?!」 「アッ?!すみません。僕、正直なんで。」 樽辺は松山を、残念そうに、敗北した様に見ていた。自分よりも若くて体格の立派な、今時の若い男を前にして。 口も達者だし、体力的にも負ける。私を無理に連れ込む事はもう無理だ。 今岡も悔しそうに諦めると、急いで私に命令した。 「高木さん、あなた何をいつまでも見てるの?!さっさと自分の教室に戻りなさい!!」 私は返事もしないで離れた。 「あなたももう行きなさい、松山先生!」 「はーい。」 松山がすっとぼけた様に返事をしてそのまま歩いて行ったのを、振り返って見た。 今岡と樽辺はまだそこに、悔しそうに立ち尽くしていた。本当なら、私をその空いた教室ヘ連れ込みレイプできた、見届けられた。松山さえ来なければ。そうして何食わぬ顔で、少し遅れて自分達の教える教室へ行って 授業をする。それが失敗に終わったのだから!! そう、この松山先生が来なければ、私は樽辺と能面・鈴木の餌食になっていた。そして、私の処女をこんな奴等に強姦されて、奪われていた。 こうした状況が二年生の時にずっと続いていたので、この頃、私の味方の学年教師達は放課後に集まり、相談をしていた。 皆で、横浜駅に集まる。一緒には行かない。甘党達に見つかるだとか、怪しまれる。矢野先生の様に見つかっては大変だから…。 これについても、次回話そう。
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