第31話
樽辺は矢野先生の事を今岡に話した。甘堂にも話したと思う。 今岡は副校長だとか、勿論校長にも言った。全ての教師達の知る所となり、生徒達も皆知った。 今迄廊下でかち合ったら挨拶をしていた生徒達の多くがしないで、矢野先生を無視をする様になった。 私が一度休み時間に廊下でかち合った時には、(自分の機転のおかけだったが)矢野先生が樽辺の事を怒鳴って叱った事があり、あの時上手く逃げられたのがあったから、私は矢野先生に親しみが湧いていたので元気良く挨拶をした。矢野先生も感じ良く挨拶を返してくれた。 すると一緒にいた誰かクラスの子が嫌そうに言った。 「何で挨拶なんかするの?矢野先生は、トルコへ行ったんだよ?!そんな所に出入りしてたんだよ!」 矢野先生が嫌そうな顔をした。 私は当時、信じていなかった。何かの間違いだと思っていた。だからこう返事した。 「そんな、矢野先生がそんな事する訳ないジャン?!」 「絶対にそうだよ。もう、凄い噂だよ?!みんな、知ってるんだから!!」 矢野先生は、苦笑いしながら私を見た。そして通って行った。 矢野先生は毎日学校へ来るのが、どんな気持だっただろう? 結局、生徒の親達にもそれが分かって問題になったみたいだ。PTAの役員だとかに。聖職者なのに、学校の帰りにそんな所に出入りしていたと言うので。 それで学校を辞める事になった。 最初は次の職場を探すのに苦労して中々見つからなかったらしい。だが、知人のいるその教会に職が決まり、とても良い所だと言って大変に喜んでいた。イエス様に助けて頂いたと。 樽辺達はそうした言葉を内心馬鹿にして聞いていただろう。辞めさせてやって面白いと。だが、矢野先生はそんな事、もう物ともしなかっただろう!!
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