第27話
私にとって、最も危険だった事に付いて話そう。だがその前に、私がまだ古田のクラスにいた、一年生の時だ。この頃は、樽辺が古典を教えていた。 樽辺は私を嫌っていたが、ある時から、私を変な目付きで見る様になった。 授業の時ではない。だが、通路で会ったりした時だ。 この男も毎回毎回嫌がらせはできない。他のクラスへ教えに行かなければならないから。だがらそうした時にすれ違ったりすると、何か嫌らしそうな、私を吟味する様に一瞥しながら通る事が度々あった。 嫌だなぁ、と思いながらも、一年生の時にはそれで終わった。私は古田のクラスだから、樽辺も余り何かをできない。 樽辺と今岡は同盟を結んだが、甘堂が担任になってから、虐めが酷くなったのだ。 何せ、担任の甘堂が虐めを率先してやっていたのだから!喜んで、樽辺と今岡を大歓迎のウエルカム状態で迎えて、一緒に虐めまくったのだから。 だから二年生になった時には、私は甘堂にしょっちゅう教室や職員室に呼ばれていたが、ある時、教室を移動して受ける音楽だとか何かの授業の時に、私は甘堂に言われた。教室に残れ、と。 何なんだろう?!不安で、嫌だった。 今岡も直ぐに来て、二人で私にそこにいる様に命令した。 クラスの皆は行ってしまって、いない。 私が不安に思いながらも教室に残ると、二人は、樽辺が私に用事があると言った。何か大切な話があるからと。 凄く変だと思った。一体何の話があるのだ?!ある訳が無い。 そこへ樽辺が急いでやって来た。 「樽辺先生、お願いします。」 二人が待ち構えていた様に、嬉しそうに言った。 「はい、分かりました。」 樽辺も嬉しそうに返事をしながら教室に入る。するといきなり、甘堂と今岡はドアを閉めた。 エッ?!そう思った瞬間、樽辺がいきなり無言で私に突進して来た!! 私は急いで机と机の間に入って逃げた!! 樽辺がそこへ走る。私は又走り、曲がり、違う机の間に入る。そこへ樽辺が走って来る。捕まえようとして、手を伸ばす。素早く交わして逃げて、又違う机の間に入る。 そうしてグルグルと、教室中を走り回って逃げる。二人で教室中を走り回り、丸で鬼ごっこだ!!真剣勝負の。 私は当時、凄くすばしっこかった。背は高いのだが、凄く細かった。馬で言えば、贅肉の丸で無い、競馬馬だ。ああした馬の人間版の様だった。だから身軽で、よく動けた。それが役に立った!! だが樽辺も必死だ。年はそんなには若くないが、まだ三十代半ばだ。まだまだ十分に動けるし、太っていない。身長も、175センチ近くはあったんじゃないだろうか?割と大きかったと思う。だから歩幅も小さくない。 そしてしばらくこれは続いたが、ついにドアへたどり着いた!樽辺はまだ離れているから、開けたら出られる。急いで引き戸のドアを引いて開ける、開ける筈だった!だが、開かない?! 鍵が閉まっていた。外側から鍵をかけたのだ!!驚愕して、物凄く焦ったのは言うまでもない。物凄く恐くなった。 「開けて?!開けてください!!」 怒鳴った。返事は無い。 「開けて!!」 だが、又無視だ。 これは凄く短い間の出来事だ。樽辺が近くまで迫って来たから。 私は急いでドアから離れて逃げた。 だが又、スキを見てドアへ近付く。 もう少しだったが、樽辺が追って来たから離れた。その時に話し声が聞こえた。 「もう少しね?」 「いえ、もうそろそろ終わったんじゃないですか?」 「そう?そろそろ開ける?」 「いや、もう少し待ちましょう。年の為に。」 そんな風に楽しそうな話し声が聞こえた。 私はもう必死だった。逃げながらどうしようかと思った。このままだとその内必ず捕まる。何せドアは外側から鍵が閉められているのだ。 私と樽辺はまだ教室内を走り回っていた。樽辺は真顔で、真剣に私を捕まえようとしている。物凄い勢いだ! 「先生、止めて?!」、「止めて下さい!!」 走りながら何度か叫んだが無言で追いかけて来る。 それで一度、片方の隣のクラスを教えていた女教師が騒ぎに気付いて出て来て、聞いているのが聞こえた。一体何の騒ぎだと。 二人は、何でもないと言って無理矢理に返した。今岡のきつい、強い調子で追い払う声が響いた。 両隣の教室で教えていたのは、担当クラスを持たない、余り関係ない教師達だったのだ。だから、青木や堀江達が教えていない時を狙ったのだ! 私は逃げながらも冷静になりながら、どうやってこの窮地から脱出するかを考えていた。そしてこうした廻りの状況も把握できた。 私はこんな時でも、ある程度冷静でいられた。(元々そんな風だったし、修羅場に合うのは初めてでは無い。) その時、声を聞いた!!! 「何をされているんですか?」 古田の声だ。 「先生!!助けてー!!」 急いで叫んだ。 「高木か?!」 「助けてー!!」 「高木!どうした?!」 「助けてー!!」 古田が引き戸のドアを開けようとしてるのが分った。だが鍵がかかっている。 樽辺は困った顔をしながらもまだ私を追いかける。 「何だ?!鍵はどこだ〜?」 古田の怒鳴り声が聞こえた。 「おい、どこだ?!出せ!!」 甘堂と今岡は黙っていて、渡さないんだろう。 「出せっ!!早くしろっ!!」 物凄い声で又怒鳴り付けた。 それから鍵を開けて、教室に飛び込んで来た。「高木、大丈夫かぁ〜っ?!」、と叫びながら。 「せ、先生!!」 私は止まった。 樽辺も仕方なさそうに止まった。古田を悔しそうに見る。 「あなた達は、一体何をやってるんだ?!」古田が真っ赤な顔で怒鳴った。甘堂も今岡も困って黙っている。 古田が樽辺を睨みつけた。 「樽辺先生、あなたは…、あなたって人は!!」 樽辺は、気まずそうに黙って横を向いている。何も言わない。 「来て良かった!!どうしても授業で、あの三角形の定規が使いたくてね。他にもあったんだけど、あれをここの教室に忘れたから、やっぱり取りに来たんだけど。だから、きっと虫の知らせだな。本当に、来て良かったよ。」 三匹の鬼畜は嫌そうに黙っている。 「樽辺先生、甘堂先生、今岡先生!これ、犯罪ですよ?!もし本当にそんな事をしたら、どうなったんですか?ねー、樽辺先生?!」 古田は、助かって呆然と立っている私に声をかけた。 「高木、もう大丈夫だから、早くみんなの所へ行きなさい!」 私は走り出た。古田が来なければ、私は樽辺にレイプされていた。甘堂と今岡に頼まれて。樽辺は喜んでその依頼を受けて、実行しようとしたのだ。 そして、この男はまだ諦めなかった。又しばらくすると、実行しようとしたのだ。 甘堂と今岡はそれには関与していない。そして又、運良く未遂で終わるのだが。 だがこんな事が真っ昼間に、私立の女子校で起こったのだ。三人の教師達に寄って仕組まれて。 考え付いた首謀者は恐らく今岡だろう。又は甘堂だ。 私を強姦したら、私はショックで学校を辞めるだろう。自主退学だ。それをさせたかったのだ。後は、面白いからだ。 私はこの時、勿論処女だ。だからきっとおかしくなってしまったかもしれない?!だが、樽辺は私が処女だとは思っていなかった。だから余計、平気だと思ったのだろう。 この男は、実際にそうした事をその後職員室へ呼び、廻りに余り人がいない時に何度も言ったからだ。 「高木さん、あなたは処女ですか?」と。 驚いて直ぐに返事をしないと、又言った。 「どうしました?何で返事しないんですか?」 「はい、そうです。」 こんな質問を高校生の女の子がされて、しかも学校内で教師にされた!凄く嫌だし恥ずかしかった。 だが又畳み掛ける。 「本当ですか?」 「はい。」 「嘘でしょう?!あなた、嘘を付かないで下さい。」 私はこの異様さに、恐いのと呆れながらで、その狂気じみて尚更お粗末で下卑て見える顔を見つめた。 「ふん、そんな嘘をついても分かりますよ〜。違うって言うのは。」 「本当です!!それにそんな質問を、何故するんですか?」 私も腹が立ち、むきになって答える。 「まあ、良いでしょう。そんな嘘は直ぐに分かりますから。」 何を馬鹿な事を言っているのだ?! だがそれは、この男はまだ懲りていなかったからだ!まだやる気満々だったのだ。私を犯す、私と性行為をする事を。 後日、しばらくすると又仕掛けてきたのだから…。 その時には、甘堂と今岡は関与していない。そして又、運良く未遂で終わった。だが、危なかった!! この話も又披露する。だが何故樽辺は私が処女では無いと思ったのか?これには二つの理由がある。 一つには、この男は、欧米人や欧米系の男女が、性行為をかなり早いうちから皆していると思い込んでいたのだ。 ドラマや映画で、十代の男女が学校内で手を繋いで歩いたり、キスしたり、男女関係をするのを目にするが、ああした事を、私の事も当然そうだと思っていたのだ。 二つ目は、シンちゃんが甘堂に話した事だ。私がホテルのプールへ入り浸っていて、そこの従業員や客の男とチャラチャラしてふざけて話したりだとか、わざと派手なビキニを着てプールの周りをうろつくだとかと言ったのだ。教師達に反感を買う様に。 只泳ぎに行っていただけだし、従業員の立花さんと口をきく様になっただけだ。他の客とも話していない。 シンちゃんと一緒の時に一度だけ、隣にいた20代の、一人で来ていた男が話しかけてきた位だ。 「高校生?良いねー、一番良い時だね。」と何度も言って。 その時私は、シンちゃんもだが、凄く厳しくてうるさい学校へ通っているから、別に一つも良くなんかないと何度も否定した。それだけだ。 水着も只のセパレーツを、母が買って来た物を着ていただけだ。色は女の子らしく、赤に白の水玉だったが。 だから樽辺は、私がもう処女ではないし、むしろ性的に軽いのだとかを勝手に思い込み、私と性交しようと、執着した。 甘堂や今岡にも、私に対しての執着心には理由があった。後にそれを話すが、樽辺が恐喝をした教師と、乱暴で暴力好きな甘堂の手下の一人、吉川に付いてを次には話したい。
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