第25話

まず、甘堂と、その二人の女教師に付いて説明しよう。彼女達は、三人でよく一緒に帰っていた。そして、帰りにどこかヘ入り、お茶をする。楽しく談笑する。        だが私が甘堂のクラスになり、それはある時から変わった。甘堂は殆ど毎日の様に私を放課後に呼び付けてはああだこうだと文句を一時間は、必ず言っていたからだ。     最初はそこまでではなかったが、段々とエスカレートしたのだ。調子に乗ったのもあるだろうが、要は嫌いだから、憂さ晴らしの丁度良い道具にしたのだろう。そして、その内に学校からいびり出す為にも。       職員室での甘堂の机は、世界史を教える仲良しの青木桃子の隣の隣だ。だから青木先生は嫌でも全てが聞こえる。甘堂のキンキンした大声が。                もう一人の英語の教師、堀江弓子先生は、確か直ぐ隣の席だったかもしれない。    甘堂は私を呼んでは毎回色々な嫌がらせを言う。たまに、前に座る樽辺も喜んで加わる。今岡も、近くにいる時には喜んで加わる。 そうして最終的にはこの三人がメインになり、私を呼び付けては一緒にイジメっ子をする事が多くなった。彼等に取っては一種の楽しいゲームだ。嫌いな生徒を虐めて遊ぶ。 私が一度、何で呼ばれたのか分からないと言うと、今岡が言った。何度も尤もらしい顔をして。                 「そんな事も分からないの?そんな事を、何で分からないの?!駄目じゃないの?!」 樽辺も加勢する。            「そうですよー。あなた、何故そんな簡単な事も分からないんですかー?」      「そうよ、駄目じゃないの?!」     甲高い声で甘堂が叫ぶ。         こうしたセリフは、理由が無い時に、相手が反論した時ヘの常套手段だ。だから幾らこちらが真剣に、真面目に聞いても答えは返ってこない。初めから無いのだから!!    又、もし何か理由があったとしても、何度もしつこくそれを責められていたら、もうその言われた内容がクリアしているなら、そしてもうしていないだとか反省しているなら、もうそれは時効だろう。(余程の犯罪ならまだしも、それでも普通はそうしたシステムではないのか? )             だから、こんな事を2日か3日に一度、又は毎日続く事もあるのだから、それを見ているまともな教師なら誰でも呆れるし、恐いと思う。                  甘堂は私を教室内に一人だけ残して、自分と二人だけにして、ああだこうだと言い掛かりを付ける時もあった。          言い掛かりの中身は沢山あった。幾らでも考えつくのだから。            例えば一つには、私が誰かクラスの子に、「うちの家系は戦国武将の家系なんだってさ。おばあちゃんが、田舎には、家紋が付いた何かがあるって、前に話してたからね。」、と言った事だ。             甘堂はそんなどうでもいい、何も関係が無い事まで酷く責めた。私は嫌だから言っていないと否定した。すると嘘を付くなと怒鳴った。ちゃんとに、それを聞いた当人には確認してあるからと。それで、私は仕方無いから認めた。                すると、よくもそんな酷い嘘がつける、恥を知れ、と騒ぐ。大体漢字が違うじゃないか!、と。(改めて言うが、ここに書いてある高木が私の苗字では無い。)       それで、昔は、負けて逃げたりすると、苗字の字や読み方をを変えたり、苗字を切って短くするとか何か字を足すとか、上や下の字を丸で違う字にしたりだとかをするそうだと私は言った。だからうちも多分そうなのだろうと言うと、又烈火の如くに怒った。    「あんたなんかがそんな血が入っている訳が無いでしょう!」、「あんたみたいなクズが!」、と怒鳴った。           そうして私をいきなりビンタしては何度もクズ呼ばわりしたり、「あんたなんか、生まれて来なければ良かったのに!」、とやはり何度も言った。(ビンタは、この女から二度はされている。)              甘堂は、どんな事でも私の不利になる事や、私の行動で気付いたとか変わった事は無いかを徹底的に調べて、自分に報告する様にと、手下三人とシンちゃんヘ頼んでいたのだ。 皆は喜んで協力した。三人はシンちゃんの敵討ちの為に。何せ私は、彼女達の敵なのだから?!                 そして当のシンちゃんも、羽村が土下座をさせようとした時には同情的な感じがしたが、でもチクりとなると、スパイさながらに色々と私について知る限りを話した。実際に廊下で、シンちゃんがが甘堂と、コソコソと話していたのを一度見た。          「お酒や煙草は、やってないの?」、   「いえ、そういうのはしないみたいですけど。」 、                「そう…。じゃあ又何か、思い出したら教えてね?」、               「はい。」                こんな会話が耳に入ったが、私が横を通ると、直ぐに二人は私に気付かないフリをしながら、サッと離れた。          その時はまだ、シンちゃんは甘堂に呼び止められて、私の事を聞かれていたのかと思ったが、色々と情報を教える様に頼まれていたし、彼女も進んで協力していたのだ…。  甘堂は又ある時は、昼休みにわざと呼び付けて、自分は弁当を食べながら、昼休みの一時間中ずっと文句や注意をして、昼休みの鐘が鳴って休み時間が終わってからやっと解放した。                  「何をソワソワしてるの?時間を気にしているの?」                そんな風に言いながらゆっくりと自分は弁当を食べながら、わざと私に昼ご飯を食べらせない様にした。             この時、私は戻ってから急いで弁当箱を開けて箸を出して食べようとすると、吉川が山田と結城を連れて私の所ヘ来て、いきなり私の持っている箸を払いのけた。       「お前、何をやってるんだよ〜?!何、食おうとしてんだよ!!」、と叫びながら。   箸が床に転がり、驚きながら箸を拾っていると、稲川瑠奈が怒って文句を言おうとした。彼女と私と目があった。だが私は本当に馬鹿で、これ以上騒ぎを起こしたら又何か後から甘堂にされたくないと、そんな風に深読みをして、きっと困った顔をしたのだろう?、本当はどうせきっと何をしても同じだったのに…。                 だが瑠奈は、私が手助けをしないでほしいだとか、されたら困るだとかの表情と見て取った。私の顔を直視してから、諦めて黙った。本人がそうなら仕方ない、と言った風に。 (だが彼女の気持は非常にありがたかった!!)                そしてその時、英語の堀江先生が教室ヘ入って来た。吉川は私が弁当を食べようとしている、と得意そうに言い付けた。堀江は(昼休みに食べる筈なのだからと)驚きながらも、私に弁当をしまえと言った。そうして授業が始まった。               そして次の授業が始まる前の短い休憩時間、その時に本当なら私は弁当を出して食べられた。だが、この吉川達が私に食べさせない様にとじっと見張っていた。野生動物が遠くから獲物をじっと、狩る為に観察する様に。 もし私が弁当を出したら又飛んで来て、それを叩き付けたりして食べさせない様にしようとしていたのは分った。かと言ってトイレとかヘ持って行って食べる事もできない。カバンから出して教室から出ようとすれば、必ずすっ飛んて来て同じ事をしただろう。(こいつらは、普段でもよく私を見張っていた。憎らしそうな顔でジッと見つめて。)     だからその日、私は空きっ腹で残りの授業を受けた。家に戻り、祖母は弁当箱を見て驚き、ガッカリした。           「わぁ、食べてないの〜?!どうしてー?」私は訳を言った。しつこく聞くし、私も言いたかった。祖母は呆れ返った。甘堂の事も、その手下三人の事も。          「酷い事をするね〜?!」        実は自分もこうした人間で、私も似た様な事を幼児の時に、一寸した事でされているが、他人が孫にしたらやはり怒るのだ!だから母が帰ってくると言い付けた。       「あんた、そんな事があったんだよ!何とかしたら?」               だが、まだ母は動じなかった。基本、面倒臭いのだ。後は、信用していなかった。そこまでそんな事をする教師や生徒がいるだなんて思わなかった。又、認めたくなかったのだ。娘がそんな事までされるなんて!     だから、何か食欲がないとかで、叱られるから、そんな適当な作り話をした位にしか思わなかった。だから、それで終わってしまった。その時は…。            甘堂は又違う日の放課後に、トイレヘ行こうとしていたら無理矢理に一緒に職員室へ連れて行かれた。又ネチネチと訳の分からない、ストレス解消の嫌がらせを言い始めたから、私は頼んだ。              「トイレに行ってもいいですか?もう、我慢できませんから。」           「駄目よ。行かせないわよ。」      「お願いします!!」          「何を子供みたいな事を言ってるの?一体幾つなの?!もう高校生のクセに。何を馬鹿な事を言ってるのよ?赤ん坊じゃないでしょう?!」                「だけどさっき行こうとしたら駄目だって言ったから。どうしても一緒に来る様にって言ったから、行けなかったんです。お願いします。」                  必死に頼んだ。             「そんな事、してませんよ!何を赤ん坊みたいな事を言って、今、先生が話してるんだから、黙って聞くのが当たり前でしょう?」 もう漏れそうだった。甘堂は絶対に駄目だと言って行かせなかった。(黙って飛び出して行けば良かったのだ!)         大体こうした場合、自分に気に食わない事を言われると、大概人は皆、よく言う。(ましてやこうして自分の方がもっと年上だと。)何を子供みたいな事を言っているのか?、と。又は○歳でしょう?、だとか、何年生だとか大学生にもなって、だとか、もう社会人のクセに、だとかを。          又、親に相談すると言えば、何をいい年をして、もう大人が子供みたいな事を言ってるんだ、と。                馬鹿か?!何歳になっても親や家族に重大な、とか大切な事を相談するなんて当たり前だ。何もおかしくないし、小さな子供以外は親に相談したらいけないのか?そんな事ある筈がない!!              だがそうした事を当たり前に、こういう輩は言ってくる。そうすれば相手が恥ずかしいと思い、小さくなる。そして言い返せなくなるから。多分そんな魂胆だろう。      側に座っていた桃子先生はずっとイライラした顔で不愉快そうにしながら何かを書いて、仕事をしていた。だが、丸聞こえだ。いきなりこちらを向くと、甘堂に言った。    「甘堂先生、トイレに行かせたらどうですか。」                  質問ではなく、命令口調だ。いい加減にしろ、と言う感じの。           「いいのよ、青木先生。気にしないで。」 「だって、こんなに行きたがってるんだから。」                  すると甘堂は私に、我慢をしろと言った。 そしてどうしてもできなければ、そこの床にしろと。しゃがんで自分に見える所にオシッコをしろと、何度も言った。       「もういい加減に行かせたら?可愛そうじゃないの?!」              「良いのよ〜。どうしてもしたきゃ、そこにしたらいいの。大丈夫、ちゃんとに後は掃除させるから!」             そう半分笑いながら、嬉しそうに言った。「そんなぁ?!」            「大丈夫よ。自分て後始末させて、ちゃんとに掃除させるから。」           青木は目を大きく見開き、甘堂を恐ろしそうに見た。                「高木さん、早くトイレに行きなさい!!」いきなり私にそう怒鳴った。       私は驚いて顔を見た。普段はとても当たりの良い先生だ。              「早く行きなさい?!」         又怒鳴った。              「はい!」               私は急いで職員室から出てトイレに走り、用を足すと、仕方無いから戻った。     甘堂と青木は言い合いをしていたが、私を見ると止めて、甘堂は怒り顔で私を睨み付けた。青木はそのまま、やはり不機嫌な、嫌な顔をして又下を見て、何かを書き始めた。 甘堂は私に又文句を言い始めたが、早めに解放した。今岡が入って来たからだ。    急いで今岡の側へ行き、小声で何か告げ口をした。私は青木が気になり、職員室から出る時に気を付けて、分からない様にしばらく見ていた。樽辺がいなかったから良かった。だが、古田も堀江もその時はいなかった。  今岡は甘堂から話を聞くと、青木に近付いた。何かを言うと戻り、書類の束を持って来て彼女の机にドサッと置いた。罰だ。私に加勢をしたから、何かの仕事をさせるのだ。 青木は驚きながらもガッカリした、嫌な顔をした。今岡と甘堂はとても嬉しそうだった。そして甘堂は青木へと近付いた。     職員室には余り人がその時はいなかったし、尚更静かだった。そして声が大きいからハッキリと聞こえた。            「青木先生、さっきは言い過ぎたわ。ごめんなさい?」               青木は怒り顔でニコリともしない。    「だから又一緒に帰りましょうよ。お茶しましょうよ?」              青木は一瞬悩んだ。甘堂は自信有りげに、ニコニコして彼女を凝視する。      「え、ええ。そうね。」         弱々しく、元気無く答えた。甘堂を恐そうに見ながら。屈しないと、又色々と余計な仕事をさせられる。今岡ヘ言い付けられて。きっとそう思ったからだ。          これが発端で三人の"仲良しトリオ"は壊れて行く。甘堂は友達二人を無くすのだ。   彼女は堀江とも、私の事でひと悶着を起こす。これが起きる前から、もう青木から聞いていて、甘堂がどんな人間かはよく分かってきたみたいだが。            私は後日、二人が廊下で話すのを聞いたからだ。私が挨拶をして通った時に、私をチラチラと見ながら、小声で話したのだ。    昔は、私は凄く耳が良い。若い時はかなりそうだったと思う。それで、聞こえた。   「あの子、可愛そうね。結局何にもしてなかったのね?」              「あれだけ嫌うから、よっぽど何か自分にされたのかと思ってたんだけど。」     「やっばりあの噂、本当だったんだー?!」「恐いわね〜、甘堂先生。」       この噂と言うのが、他校で気に入らない生徒を何人も虐めまくり、辞めさせていたと言う物だ。この時は分からなかった。何の噂だろうと思った。               私ももっと早くに家で相談をすれば良かったのだが、何でも自分で解決しろ、我慢しろ、基本何でも殆ど自分が悪い、相手は悪く無い、相手に良くしていればいつか必ずその気持が通じて分かり合えるし良くしてくれる的な教えを、祖母や母に幼少から叩きこまれていた自分だ。              だから、最初は中々彼等の虐めについて言わなかった。又ついに言っても、母はそうした事を娘がされているとかされるのが嫌だから、違うと否定する。毎日働きに行っているから面倒臭いのもあった。学校の事までいちいち関わりたくなかったのだ。だから、そんな事を絶対に最初は認めなかった。    余りに酷いから、私は弁当の出来事以来は 甘堂へ電話して、殆ど毎日、一時間か一時間半もしくは二時間位を残さない様に頼んでくれる様にと母に聞いてみた。だが母は必ず言った。                 「何で先生がそんな事するの?!おかしいじゃないの?!そんな事する筈がないでしょ。仮にも学校の先生だよ。じゃあ、あんたが何か怒らせたんでしょう?なら、仕方無いじゃないの。」                いつもこんな感じで、丸で話にならなかった。祖母も、母がそんな風だから黙っていた。母が何もしないなら自分も面倒だから、もう仕方ないや!と言う感じだった。   只母はそれでも、よく電話して自分の妹と話していたから、私の話を一応はしてみた。そんな事を最近自分へ言ってきて困る、一体何なんだろうと相談したのだ。       叔母は、それは全て本当だと言った。私からも、自分の出た高校が今はやたら厳しいと聞いていて驚いていたし、私立高には色々と変な教師も多いと聞いている、と言った。  ましてや、そうしたキリスト教の高校だと変なのも多いらしいと。自分の娘は、県立の高校へ通っていた。だから、真剣に話を聞いて、何とかしてやらないともっと大変になるとアドバイスをした。          それで母は少しずつ、私の言う事を信じる様になった。               とにかく甘堂は、樽辺と今岡もそうだが、異常だったから。             ある時甘堂は、何の用紙かは忘れたが、皆の生年月日を書く物にも、私が皆より一年、年が上だと記入するのを、書き間違えだとかわざとやっているだとか凄く非難した。そんなに皆よりも年が上になりたいのかと、考えられない理屈を言った!          私が本当に一歳年上だと分かると、病気で入院していたから一年下がったのかと勝手に決め込み、それも否定すると物凄く怒った。体が弱かったとか病気だとかが何故恥ずかしいのか?、何でそんな嘘を言って隠すのかと責めた。                 私が、以前にインターナショナルスクールに行っていたから、母が公立の小学校ヘ転校させた時に、頼んで学年を下げて入れたと言うのを絶対に信じずに、そんな事はあり得ないと言った。               日本の漢字は物凄く難しい。それを殆ど何も読めなかったのが、一年下がって小学校ヘ入っても、できて同じになるなんて筈が無いと言い張った。              私が初めから日本の小学校ヘ入り、ランドセルを背負って通っていたクセに何を嘘を言っている、と言った。そんな嘘を言ってまでそうした学校ヘ通っていた、と人に信じ込ませたいのかと。              あなたの気持も分かるけど、哀れなものだな、と鼻で笑った。あなたが英語の成績が良いのも、自分に欧米の血が入っているから、やはりその国の言葉に憧れて一生懸命に勉強するからだろうと。幾ら否定してもそう言い張って、嘘つき呼ばわりをされて、叱られて返された。               後日、又呼ばれてその学校の事や、英語ができるのも努力して勉強しているからだろうと、認める様にしつこく迫られた。樽辺も介入してきて、嘘を付くなと言われて、それならそのインターナショナルスクールに通っていた証拠を持って来て見せる様にと言われた。通知表だとかアルバムだとかだ。   私はそこで初めて、嘘をついていたと言った。甘堂と樽の言い掛かりを認めた。   何故ならそうした大切な物を持参して、こんな物は嘘だと言ってビリビリに破られたり、こんな物はインチキだとかを言われて没収されたら困ると思ったからだ。       それが本物だと当然分かっても、それが悔しいから余計にそうした嫌がらせをすると確信したからだ。              だから、私がそうして嘘だと言うと大変に喜び、最初からそんな嘘は見破っていたと言って又叱った。              そして甘堂は、私が認めた事が本当であるのを証明する為に、後日、堀江に頼んで私を試すと言った。              本当にそうした学校ヘは行っていないし、だから英語なんて教科書以外、勉強していない物以外はできないと確定する、そうして恥をかかせて嘲りながら又叱り、二度ともうそうした嘘をつかせない為にだ。       直ぐに後日呼ばれて、そこには堀江がいて、甘道は樽辺を証人として横に置き、(樽辺も喜んでそこに待ち構えていて)、私に英語の本を見せた。図書室にあったと言う子供用の薄い、絵が沢山描いてある本だ。「大草原の小さな家」の、ローラ・インがルズの本だ。                  その本をいきなり開き、そのページを左右声を出して読んでから訳せ、と言うのだ。それを堀江が聞いて、ちゃんとに読んでいるか、内容は正しいかを判断する。       これを七回位繰り返してやらされた。そしてその都度、甘堂が堀江に聞く。     「先生、あっていますか?」、「間違えてませんか?」、「ちゃんとに読んでますか?意味、正しいですか?」と。          「はい、あってます。」、「ちゃんとに読めてますよ。」                そう返事をしながら、堀江は内心呆れていて、嫌そうだった。           甘堂と樽辺は、次には私ヘ英語で話す様にと堀江に頼んだ。堀江が私に質問をした。彼等はおかしくないか?、こんな馬鹿な事をして、と。驚いたが、彼らには分からないから大丈夫だと言われた。だから私もそう思うと返事した。そして私達は軽く笑った。   堀江が又聞いた。彼等を好きかと。私は、意地が悪いから大嫌いだと答えた。堀江は、自分もそうだと言った。又二人で、ケラケラと笑った。                樽辺と甘堂は私達が会話して笑ってる事に、驚愕していた。丸で鳩が豆鉄砲をくらったみたいな顔をしていた!!         だが甘堂はまだ諦めなかった。まだ焦りながら、私にその本を読ませ、あら捜しをしようとした。どこか読めないページはないかと。だが堀江がピシャリと言った。      「甘堂先生、もう良くないですか?これ以上こんな事をしなくても。」        「でももう少し…。」          「もう良いんじゃあないですか?!もう高木さんが、英語ができるのは分ったでしょう?私も忙しいんですから。樽辺先生も、もう良いですよね?」             「あっ、はい。私は別に…。」      「じゃあ高木さん、あなたももう行きなさい。」                 「はい。」                こうした馬鹿げた下らない事を甘堂は何度も考えて、私を学校から追い出したかったのだ。過去に自分がそうした生徒達の様に。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る