第18話

シンちゃんは私の事をクラス内で色々と悪口を言ったので、今迄何でもなかった子達が急に態度が悪くなったり、口をきかなくなった子達もいた。              チコは、だから何処かへ一緒に行かなかった訳ではないみたいだった。(公衆電話からかけていると言う電話はそのまま毎日あったからだ。)                 後から誰か他の生徒に言われた事があるのだ。高木さんって、その子とは付き合ってはいけないと親に言われたからと。クラス内で、ある時言われたのだ。        「ごめんね、リナ。リナとはどっかへ一緒に行ったら駄目だって、家できつく言われているから。だから、どんなに学校の中では仲 良くしてても良いけど、外では絶対に会っちゃ駄目だって。だから、悪く思わないで。」                 そう、私が目立つから嫌がったのだ。自分の子供が私と一緒にいて、何かあったら困るからだ。親ならそうした気持があってもおかしくないのかもしれない。         だからチコもそうだったのかは分からない。だが、ドライで他人の事など何も気にしないタイプに見えた。            とにかく、クラス内では他には嫌な事や酷い事は特に無かった。           だが、最初に言った様に、此処には変な、 他校からお払い箱になった教師達がたむろしていた。                だからそうした教師達の授業の時に私は嫌な思いをしていた。            例えば、隣のクラスの担任は体育を教えて いた。太った色黒の中年女で、短い、パーマをかけた髪型は男の様な感じだった。目は 小さく、見るからに焼き芋体型で芋臭い女だった。一応は結婚していて、幼稚園児の息子が一人いた。              この女、羽村昌美は私を嫌った。一番最初の体育の授業の時に、皆に身だしなみを注意した。体操着の着方や、それに付けた名前が ちゃんとに書かれているかだとか、そうした事だ。                 この時、最後にこう付け加えた。     「高木!!良いか、お前は目立つんだから、特に注意をする様に。分かったな?!」  私は驚きながらも、腹がたった。何もそんな事を言わなくても良いんじゃないのか?誰も他人がそこにいる訳じゃないし、同じクラスの人間だけだ。誰に目立つからそこまで注意をしなければいけないのだろう?そんなコメントはいらないんじゃないのか?そう思った。                  そしてその初日と、その後もう一度か二度、授業が終わってクラスヘ戻る時に、私にだけ校庭をランニング20周しろ、と命令した。(そう、確か20か25周た‼ )      授業中に何も変な態度はしていない。なのに私にだけそう命じた。皆も私がそう言われた時には驚いていた様だったが、直ぐにどんどんと教室へ戻って行く。         私は何もしていないから馬鹿馬鹿しくて、 無視して行こうとした。すると又凄い口調で命じた。そしてするまで教室へは戻ってはいけないし、戻さないと言った。戻れば担任に言いつけて問題にすると言った。     それで私は、馬鹿らしいと思いながら走った。走るのは苦じゃなかった。まだうんと 若いし細い。校庭もそんなに広くはない。だが、これは差別だし虐めだな、と思いながら走った。                この羽村は何かの持病持ちで、病院ヘ通っていた。だからたまに休んでいた。そしてそれを私のせいにした。           「お前がちゃんとにしないから、先生は病気が治らないんだそ。お前が病気を悪化させてるんだからな。本当に迷惑で、困るよ!」 私は何もしていない。こっちこそ迷惑だ。何を下らない言いがかりを付けてるんだ?! 又ある時はこう言った。放課後、帰ろうとしたら校庭でかち合ってしまった。まずいと 思ったら目の前に来てこう言った。    「高木さん!ね〜、あなた、私の事を馬鹿にしているんじゃないの?」        (体育の授業以外では普段は殆どこうした話し方だった。)             「エッ?」             

「そりゃあ、私はあなたみたいな綺麗な顔じゃありませんよ。そりゃ、あなたは美人で、素敵なお顔をしてますからね〜?良いですよね〜?」                「そんな事、思ってません。」       「あら、そうですか〜?」         ニヤニヤしながら言う。         「あの、もう帰っていいですか?」    「はい、どうぞ。早く帰って下さい!でないと、又先生の具合が悪くなるといけないから。」                  この女はシンちゃんが入っていたバスケットボール部の顧問だ。だからシンちゃんは、 よく私にもバスケット部に入れと最初の頃は言っていた。私はこの羽村が嫌だし、部活には(前に話した理由で)、バスケは嫌いじゃないが、どっちにしろ入りたくなかった。なのにある時、羽村がいきなり言った。   「例えもしバスケが好きでも、上手くても、お前をバスケット部には絶対に入れない。 お前なんかは入れない。」、と。      私は入りたいだなんて一言も言っていない。そして高校二年生になり、ある時放課後、 帰る時にバスケ部が練習をしている所の横を通った。通らざるを得なかった。校門を出る為に。                 すると羽村が私に気が付き、そこにいたシンちゃんに言った。            「新宮司、お前の大好きな、憧れの人が今 此処を通るよ〜!!」          シンちゃんとはあれっきりだ。クラスは別々になっている。私は三種類あるコースの中の進学クラス、彼女は商業クラス、チコは家政科コースへと進んだから。        シンちゃんは一瞬困った顔になって私を  見た。私と目が合った。動揺している目だった。だが直ぐに目をそらして羽村を見た。「嫌だなぁ、先生。もう違いますよー。」「そうか、違うのか?!」          「もう、止めて下さいよ〜!」      「ハハハ、そうかー?」          私を嬉しそうに見た。          「そうだってよ、高木さん。もう興味無いってよ?」                私はお辞儀して行こうとした。するといきなり言った。               「おい、高木!お前、そこに土下座しろ。」 私は驚いた。シンちゃんや周りの生徒達もだ。山田や、他の知っている生徒達もだ。 私の人生、この前にも後にも土下座をしろと強要された事は5回位かな?、あるのだ。そして仕方無くしたのは、もっとうんと前に二度だけを、母にだ。           何かに怒ると大した内容でなくても、そうした決定版的な事が好きで、過度に私に求めた。私の父親を恨み、その血が入った、生き写しの様な私に我慢できなかったらしい。 そうハッキリと母の事を言った人間もいた。完全に事実だろう、反対はしない!!   話に戻るが、私は焦ったがそのまま行こうとしたら、羽村が数名の名前を呼んだ。   「藤原!、山田!」            これは一年生の時に、同じクラスにいた連中だ。山田は私のプールの会員のカードで一度ホテルに泳ぎに行っている。私に礼の一つも無かったが…。             二人は驚いて羽村を見る。        羽村がニヤニヤしながら言う。      「おい、逃がすなよ。土下座させるまで行かせるな!」               「はい!!」               二人も嬉しそうに返事をして、私を取り囲む様にする。               どうしよう?!逃げようとすれば押さえ付ける気だ。私は一人、バスケ部の連中はその時十人はいた。もっとかもだ。       シンちゃんを見た。助けを求めようとしたのではないが、見た。彼女は困った顔をしていた。やはり、どうしよう?!、と言う、そして同情的な表情にも見て取れた。     羽村が言った。             「おい、高木〜?早く土下座しなよ?!でないとお家へ帰れないよ。早く帰りたいんでしょう、小さな子供みたいに?大好きなお家に!!」                 シンちゃんにも言った。         「あれ、どうした、新宮司?何か気にしてるのかー?!」              「いいえ。」               「本当かなー?おい高木、早く土下座しろよー?」                 こんな事が現実に起きたのだから、この女教師、丸でヤクザか何かだ!!       私は土下座をする気は無かったが、どうしたらこの状態を突破できないかと必死に考えていた。                 すると同じ校庭内の、少し離れた所に古田がいたのだ。私が立っていた後方に。    古田は、私と、この異様な光景に気が付いた。他の生徒達や教師もいたが、彼女達は気付かずに、何かの練習をしていた。    だが古田は気付いて、大声で聞いた。   「おい、高木、どうした?!」       そう言いながら急いで側へ近付いて来て、 羽村に言った。             「羽村先生、どうかされましたか?」

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