第19話
古田に声をかけられた羽村はしどろもどろになりながら言った。 「いえ、別に。なんでもありません。」「今、高木に何をさせようとしていたんですか?」 「いえ、別に…。」 「羽村先生、おっしゃって下さいよ。皆で高木を取り囲んで、一体何の真似ですか?」 羽村が困っていると、古田が強い語調で言った。 「藤原!何をさせようとしてたんだ?おい、言ってみろ!」 「…土下座を。」 「土下座?!」 古田はきつい顔で羽村を見た。 「分かりました、羽村先生。高木が先生に何かされたのなら、高木の代わりに私が土下座をしましょう!」 「はい?!」 「ですから、私が代わりにしましょう。」 「そ、そんな、止めて下さい?!何故古田先生がそんな事をするんですか?」 「高木は私の元生徒だし、その高木が何かしでかして、先生を、土下座をさせる程怒らせたのなら、それは全て私の責任ですから。」古田はそう言って土下座をしようとして片足を折ろうとした。 「止めて!!もういいですから、そんな事止めて下さい、古田先生!」 そして私を見た。 「高木〜!!お前のせいで、古田先生がお前の代わりに土下座するなんて言われてるんだぞ?!おい、お前、悪いと思わないのか?!」 「高木を攻めないで下さい!!」 羽村は黙った。 古田はすると言った。 「じゃあ、もう良いんですね?」 「…はい。」 羽村が力無く、小さな声で返事をした。 「よし、高木。お前は早く帰れ。速くしろ。何ボヤボヤしてるんだ?早く校門迄走って出ろ!止まらないで走って行け!!」 私は古田の顔をジッと見た。 「先生、…。」 「早く走れ!!早く!!」 私は一目散に校門迄走って、門を抜けた。 古田は私を助けてくれたのだ。羽村に言い掛かりをつけられたから、わざと自分が土下座をすると言った。そうすれば、同僚の教師に幾ら羽村でもそんな事はさせない。 そして私に走らせたのも、そうすれば早くに校外ヘ出られる。もし歩いていたら、自分が羽村達から離れたら、羽村が又生徒達を使って追いかけさせ、私を連れ戻すかもしれない。そして又ああした悪質な嫌がらせをするだろうから。 古田がいなかったら一体どんな事になっていただろう?! 古田が私を助けたのは他にもある。だが、それを語る前に、もう一人の気狂い教師の話をしなければ…。今度のは、男だ。
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