第17話
授業の合間の休憩時間に、いつもシンちゃんは私の席に来たりして、話していた。だが、新しい席になってからシンちゃんが側に来ると、私とチコがよく話しながら笑っていたりした。 それでシンちゃんも話に加わってくる。だが何か余り盛り上がらないし、シンちゃんが 来る前の方がいつも面白かった。別に大した事を話している訳ではないのだが。 シンちゃんは私がチコと仲が良いから自分も親しくなろうとして、一生懸命に話しかけたが、チコの方はそっけなかった。 それでシンちゃんと二人きりになると、チコの悪口を言うし、私も何か責められる。 チコはシンちゃんが嫌みたいだった。それで結局、もうシンちゃんとは付き合わない方が良いと勧めるし、私もそう思い始めた。 チコは、付き合いを止めるのならまずは交換日記を止める事だと言った。そして、シンちゃんを完全に無視する。 私はそんな事はできないから、本人に、もう付き合えないと言った。シンちゃんは興奮して取り乱しながら、何故だと聞いた。 私は説明した。強引な所や、直ぐに馬鹿に した様な事を年中言う所が嫌だと。 彼女は直すからと言った。だが私はとにかくもう友達付き合いはできないし、交換日記もできないと言った。 シンちゃんは目を真っ赤にしながら、ブル ブルと震えていた。私は何だか悪くなった。だけどその時はそれで終わった。まだ学校内にいる時に話したから、とにかくその日は それで終わった。 だが次の日に、シンちゃんはいつもと同じ様に、交換日記を持って来て私の机に置いた。そして自分の席に戻った。顔は、引きつっていた。 その時は席から離れて、チコと話していたのだが、それを見た。チコも気付いた。 「シンちゃん、まだ交換日記を持ってきたよ。」 チコが言った。 「どうしよう?」 「いいよ、そんなの。無視すれば。」 「でも、何か凄い顔してるし、一寸可愛そうだよ。」 「そんな事を言ってたら、又ずっとリナに つきまとうよ?!いいの?」 「でも…。シンちゃんは凄い所があるから。やっぱり無視なんかしたら、何をするか分からないし…。」 「大丈夫だよ、そんなの!!」 「いや、大丈夫じゃないと思う。やっぱり あの交換日記、私、見るよ!!」 「リナ!止めなよ。あんなの、見ないでいいの。後から私が、あの子の席に戻しておくから!」 「エーッ?!」 「大丈夫だよ。心配しすぎだよ。」 チコには何にも分かっていなかった。彼女は間違っていた。 だから、私は自分のカンだとか自分の気持に従えば良かったのだ。黙って交換日記を受け取り、読めば良かったのだ。 恐らく中には、悪かっただとかの反省や謝罪や弁解が書いてあり、だからそのまま付き 合って欲しいと書いてあったのだと思う。 そしてそれを見れば、私もほだされて又元に戻っていたと思う。 だが、チコはそのノートを取ると、シンちゃんが分からない様に彼女の机の中に入れた。そして、笑いながら戻って来たのだ。 正直、心が傷んだ。 シンちゃんは後からそのノートが戻されて いるのを見てどう思っただろう?中には何も書いてない。自分が書いた所がそのままだ。凄く悲しかったと思う。 翌日、もうシンちゃんは何も言ってこなくなり、酷く落ち込んでいた。それからはずっとしばらく、そんな感じだった。 昼ごはんを食べる時も、何故か元々は違う グループで食べていたから、そうした関係はなかった。だから、もう接触する事は無かった。 とにかく、こうして私とシンちゃんとの友情関係は絶たれる。 だが、やはりシンちゃんと付き合っていたら良かったのだ。シンちゃんは後から、酷い 仕返しをする。 そして、チコの事だ。 彼女は、最初は良かったし楽しかった。 だが、実はとてもドライな性格だったのだ。彼女はある時から、毎日私の家に、公衆電話から電話をかけてきた。だが、かけてくるだけで何も話さない。只、暇でつまらないからの時間つぶしだったのだ。 こちらがだから気を使って何か話す。だが 反応は薄い。うん、とか、そう、だとかを 短く返事をするだけだ。だがこちらから切らなければ絶対に切らない。 普段は誰とも話さず、部活も入っていないから放課後にはアッと言う間に帰る。気付いたらいつもいない。 彼女も、私とは違う方向だったが家が近くて、徒歩で15分位の所に住んでいた。 そしていつも殆どマスクをしていて、体が 弱いと言って、体育はいつも休んでいた。 年の離れた兄と姉がいて、どちらも結婚していて、もう彼女には小さな甥や姪っ子がいた。彼等は近所に住んでいたらしく、それが理由かは分からないが、友達がいないしいなくても良かったみたいだ。 私とも、一度だけ買い物ヘ行ったが、Tシャツを一枚買うとすぐに帰ってしまった。何も食べなかったし、会って一時間かそこらだった。あれには驚いた。公衆電話からは、毎日しつこく電話があるのに!! 何を考えているのか、とても変だし、まだ シンちゃんの方がよほど普通だった。 そして絶対に、その一回だけで後は何処へも一緒に行かないし、行きたがらなかった。 彼女は、勉強もできなかった。 ハッキリ言って、シンちゃんの方がまだもっと普通だったし、面白いだとか楽しかった。だがもう今更後戻りできないと思った。本当は、謝って早い内に元に戻れば良かったかもしれない。まだ間に合う内に。 彼女は、担任の古田に私の事を相談したのだ。付き合えなくなった事を。私はそんな 事はちっとも知らなかったが、かなり後から分かった。 そして、古田はもう諦める様に言ったのだ。彼は、以前の事を話してしまったのだ! 以前、私とシンちゃんが放課後に飲食店に 出入りしたのを誰かが見て学校ヘ通報したと言って、もう寄り道をせずに真っ直ぐに帰る様に注意をした事柄があった。だが、あれは実は私が古田に、シンちゃんと寄り道をしたくないと相談したので、そうした作り話を自分がしたと言ったのだ。 だから、私は前からシンちゃんに不満があったのだから、だからそんな風になったのだろうと。だからもう高木の事は諦めろ、と古田はシンちゃんに話したのだ。 当然、シンちゃんは又凄くショックを受けた。今迄はそんな事は知らず、まさか夢にも思わなかっただろうから。 この事が、何故私が分かったかは、又その うち話す。 余談だが、シンちゃんはあのホテルのプールサイドでビールやフライドポテトを売って いた立花さんの事も、私の悪口を言っていたと私に伝えた事で、彼をホテルの近くで待ち伏せをしていたのだ。頭に来たから問い詰めてやる為に…。来そうな時間帯に何日間か。結局一度会って、怒って近付くと逃げたから追って行き、ホテルの周りで掴みかかろうとしたので立花さんが腕を抑えた。 それで喚いて騒いでいたら、側を通る客が皆驚いて見るしで、ホテルの男性スタッフが 二人来て、「お客様、困ります。」だとか 言って彼女を追い払ったのだ。 これをシンちゃんは後日、怒りながら私に 伝えた…。
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