第16話
結局シンちゃんは変な事をしたからもうプールへは一緒に行かれず、夏は終わった。 だから彼女は電話をかけてきた時に言った。負け惜しみだろう。恐らく母親や山田もそんな事を言って慰めたのだろう。 「もうあんなホテルのプールなんてどうだっていいよ!何であんな所、そんなに好きで 良かったのか分からないよ!あんな所どうってこと無いのにさ。只のプールなんだから。今から思えば本当に馬鹿みたいだよ。あんな所に夢中になってさ!!リナだって、よくあんな所に年中通って泳いでたよね?まぁ、 せっかくお母さんがカードを買ってくれたんだから、行かなきゃ悪いもんね?1万幾ら もするんだから。」 「私は泳ぐのが好きだから、良いんだ。みんな、喜んで行く大人だって沢山いるんだし。そんな変な所じゃないんだからさ。」 私はそんな風に言った。 「変な所なんで言ってないけど、そんな感謝して喜ぶ様な所でもないって事だよね。」「そうだね!体育館でバスケやって、大きなボールを必死に取り合って、汗だらけになって、転げ回ってるのと同じだね!大した事 ないもんね?!」 バスケットボールは嫌いじゃない。だけど わざと言った。 シンちゃんは又何かを悔しそうに言おうと したから、用があると言って切った。大概はこうした時には直後に電話して来て、何か嫌な事を又言い返す癖があったから、わざとしばらくはいないと言った。 要は、本当はずっと最後まで、あのプールへ行きたかったのだ。だが駄目になって、結局夏も終わってしまい、もう絶対に行けない。それが悔しかったんだろう。来年になれば、自分でそのカードを買えば、又行けるだろうが。 だから、凄く負けず嫌いな子だった…。 そしてニ学期になり、新しい席になり、私は金下知寿子と言う子の隣の席になった。 彼女はシンちゃんとは正反対で、ギスギスにやせていた。顔に沢山のソバカスがあり、目がギョロ目で、一年中殆どマスクをしていた変わり者だった。 シンちゃんは、それでも相変わらず私にベッタリで、この頃には交換日記をしようと言われてしていた。 金下さんの方は大変に大人しくて、隣にいても何も話さず、いつも黙っていた。 私もそうしたタイプなのだが、何かの拍子に口をきくと、割と面白くて、それで互いに下の名前を呼び合う様になった。彼女は自分を、チコと呼ぶ様にと言った。 チコはシンちゃんを余り好きでなかった様で、その太った体を馬鹿にしていた。 そしてシンちゃんは、私の横の席のチコの事を気にしていた…。
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