第13話

「あら、雪子さん?後でかけようかと思ってたんだけと、今日はどうもありがとう。娘の友達まで一緒に行っちゃって、本当に悪かったわね。」                母が電話で話すのを、近くで心配そうに私は見た。                 「エッ?、エーッ?!」         母が驚く。               「嘘でしょう?!」           母はみるみるうちに怒り顔になって、私の方を見た。                「わぁ、あなた、ごめんなさい!!」   「そうよ、私もそうよ。」、        「ええ、そう。嫌よ、あんな子。」、    「そうなのよー、私もそう思っていたのよ。」、                 「そう…。分かったわ。私は嫌だけど、 あなたがそう言うなら、もう仕方無いわね…。」                そうして長い間話してから、やっと電話を 切った。それから私を睨みつけた。そして真剣な声で言った。            「あんた、今日一体何があったの?」   もう全て分かっていたが、私に聞いた。私は仕方無く洗いざらい話した。       「だからママはあんな子、嫌だったんだよ!!」                 雪子さんはこうした事を言ったらしい。 「ねー、あなた!一寸何なの、あのシンちゃんって子?!凄く最低な、嫌な子ね〜!! あんなとんでもない、礼儀知らずな子と、 よくリナちゃんを付き合わせてるわね〜。 何でなの?あんな図々しい、ふてぶてしい子なんかと。駄目じゃないの、あんな酷いのと友達にさせてたら?今にリナちゃんまであんな風に変になるわよ?!」          雪子さんは、プールで自分の事を何か小声で言いながらいつまでもクスクス笑っていたり、食事をしようといえば食べたい物を当たり前に要求して、しかも食べながら何も話さず黙々とつまらなそうにしながら食べて、 食べ終えても幾らでも欲しがり、食べても 食べても一向に足りずに食べて、しかも美味しいの一言も無ければ、最後には礼も言わ ない。リナちゃんが注意をすれば、頼みも しないのに勝手に奢るんだから言う必要など無い、と自分を前にして何度も平然と言った、と母に話したのだ。そうして怒りまくって いたのだ!そして雪子さんは最後にこう言ったのだ。              「こんな不愉快な思いをしたのなんてまず 無いわ!ましてやあんな高校生の、まだ子供なんかに馬鹿にされて!!あなたの子供の友達だと思うから我慢して叱らなかったけど、もうあなたとも、不愉快だから、付き合えないから。」と。              だから母は物凄く怒っていた。      「あんたのせいだよ。あんたの馬鹿な、下らない友達のせいで、ママは何十年も付き合っていた友達ともう付き合えなくなったんだよ!!」                「だけど、まさかあんな態度を取るなんて 思わないから!!」           私は必死で弁解した。          「だから最初に、連れて行くなって、止めろって言ったんだよ。あんな子!!」    だが、実は母もシンちゃんと私を一度、お好み焼き屋ヘ連れて行った事があったのだ。 その時は、仕事から戻ったら彼女がいたのだ。                  もう晩御飯時だった。だから母が、皆でお好み焼きを食べに行こうと言った。祖母と自分、私とシンちゃんと四人で。      祖母は断った。面倒だから行かないと言った。それで私達は三人で行った。     お好み焼き屋なんて中々周りには無い。だから私もシンちゃんもお好み焼き屋は初めてだったし、作り方も分からない。母は会社の帰りに誰か友達に一、二度連れて行ってもらったから、作り方は分かると言った。    そしてこれから行くその店は、割と美味しいと聞いたから行ってみよう、とそうした事になったのだ。そしてタクシーに乗ってそこへ行った。                そこは偶然にもシンちゃんが住むエリアに 近かった。だから彼女は、帰りは歩いて帰れる。私達親子は又タクシーで戻れば良いからと。                  私達はざわついているお好み焼き屋に入り、畳に座った。周りにはお好み焼きを焼いたり、食べている人間が沢山いた。     母が習ったばかりの、お好み焼きの作り方をする、焼く。そして焼いたのを食べる。 「どう、美味しい?」          「美味しい。ママ、作るの上手いね!」 「そう?ママ、習ったんだよ。だから、これで良い筈だよ?」              そして聞いた。             「シンちゃん、どう?美味しい?お好み焼き、好き?」              「普通です。」             「味はどう?」             「お好み焼きなんてあんまり食べたことないから…。分かりません。」        「そう…。」              結果その時も彼女は黙って何も話さずに、 ずっと下を見ながら黙々と食べた。そして母がもっと食べるかと聞くと、はいと返事をして頷く。そうして母はやはり二度追加注文をした。                 食べ終えると私達は店を出たが、その時も シンちゃんは無言だった。私も母も意外だったが黙っていた。            店を出て少ししてから私達は別れた。   「じゃあ、ここでね?」         「はい。」               「じゃあね、シンちゃん。」、私が言った。「うん。バイバイ。」           そうして帰って行った。         「あの子、何であんなつまらなそうな顔してたんだろう?不味かったのかな?」    「ううん、凄く美味しかったよ!」    「ママもだよ。だけど…、なんかつまらない子だねー。」              「ごめんね、ママ、だけど悪気はないんだよ。もしかしたらママがいたから、緊張したのかな?」               「そうだと良いよ!あれだけ食べといて悪気があったら、ママも面白くないからね。アハハハ!」                だから母もシンちゃんのその食べ方や、礼を言わないのも経験済みだったのだ。    だが、まさか又あんな事をするだなんて幾ら何でも思わなかった。母も、そんな事を考えなかったかもしれない。         こうして、母と雪子さんとの友情にひびが 入った。母は大変に落ち込んだ。     只、先に言っておくと、1ヶ月近くすると 雪子さんから母に電話があった。内容はこんなだ。                 「あなた、私も言い過ぎたわ。あなたが悪い訳じゃないのに!みんなあのシンちゃんって子が悪いだけなんだから。きっと親が馬鹿で、何も躾してないのね。だからよ…。だから、又前みたいに付き合いましょうよ?良いでしょう?」              母は二つ返事でオッケーした。良かった!!だが雪子さんが怒って電話してきた後、私はとても母に悪いと思った。シンちゃんの事を恨んだ。しばらくはプールヘ行こうと誘うのを拒んだ。               只、雪子さんと母が仲違いした事はシンちゃんに言わなかった。面白がると思ったからだ。                  シンちゃんはしつこかった。だから私は風邪気味だからプールヘは行けないと言い、家にも来らせなかった。           それでシンちゃんは相変わらず何度も電話をかけてきたが、祖母も、私は出掛けているからと断った。使いに行ってるとか、親戚の所に行っているからと嘘をついた。     母がそうする様に祖母に頼んだし、祖母も、シンちゃんのしつこさを嫌がり始めたのだ。彼女を、疫病神だと言い始めた。     結局この後、数回はプールヘ一緒に行ったが、その後は一切一緒に連れて行かなくなる。                  それには原因があった。ある事柄が起きたのだ。彼女は又、やらかしたのだ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る