第274話 大会当日
小物が考えるような悪事なんて、私達にとっては、楽しいお遊びのようなもの。
簡単にあしらえてしまう
不敵に笑う。
「何があっても、私がルミア達の事は守るわ。」
私の大切な家族だもの。
そんな皆んなを害する者がいたら、私は全力で排除に動く。
相手が権力者だろうが関係ない。
全員が私の敵だ。
「・・はい、ありがとうございます、ディア様。」
瞳を潤ませ、ルミアはトウカを抱き締めた。
すり替え防止の為、作った武器は大会当日に会場に持って行く事になっているので、ルミアが腕に大事に抱えている。
ちゃんと大会運営の人達も、妨害対策を考えているようだ。
「まぁ、あの男の監視は数人はいるけどね。」
こちらを伺う様な視線がちらほら。
ゲスナンにお金で雇われた、この街の荒くれ者達だ。
もちろん、彼らも私達の敵ではない。
「あぁ、無謀にも私達の工房にも侵入しようとした輩もいたわね。」
全員、リリスが撃退したが。
侵入の目的は、大会に出す物の破壊、もしくは盗み出す事だと白状してくれた。
「愚かな男です。」
辛辣に言い捨てる、ディオン。
「力の差も分からないようでは、あの男も、もう終わりですね。」
コクヨウが口角を上げる。
「あら、もっと面白く足掻いてくださらないと、ディア様の楽しみが無くなってしまいますわ。」
アディライトは楽しげに笑う。
その瞳は冷たい。
「「暗殺する??」」
しまいには、双子が物騒な事を言い、私へ首を傾げる。
私からの許可があれば、本気でやりかねない。
「皆んな、落ち着きなさいな。」
暗殺?
簡単に、終わらせてなんかあげない。
「ふふ、屈辱の色に染まって、思い知れば良いのよ。」
誰に喧嘩を売ったのかを。
「楽しみね?」
ワクワクが止まらない。
足取り軽く、会場へと向かう私達。
そんな私達の前に。
「ーーーー・・良く来たな、ルミア。」
ボス登場です。
「その腕に抱えているのが、大会に出す物か?」
ルミアの腕に抱えられているトウカに、ゲスナンの視線が向けられる。
トウカは大事に布に入れられているので、ゲスナンにはどんなものか分からないだろうが。
「・・貴方には、関係ありません。」
強張る、ルミアの顔。
トウカを抱えたルミアの腕に、力がこもる。
「ふっ、お前が大会に出るだけ無駄だぜ?どうせ、優勝するのは俺だからな。」
「っっ、そんなの、まだ分かりません!」
「はっ、そんな細っちょい物で、俺に勝てるとでも思っているのか?」
嘲笑う、ゲスナン。
その口元は醜く歪んでいる。
「勝ちます。」
「あ?」
「勝って、私が貴方より優秀だと証明しますよ。絶対に!」
燃える、ルミアの瞳。
苛烈に、増悪に。
一心に、全ての感情がゲスナンだけに向かう。
「大会で優秀?お前が、この俺よりも優秀だと証明する?」
「はい。」
「まだ子供のお前が俺に勝つだと?」
「はい。」
「くくっ、」
ゲスナンが肩を震わせる。
「なっ、何が可笑しいんですか!!?」
「だって、考えてみろ?何の実績もなく、知識も経験も俺より劣るお前が本当に勝てると思うのか??」
「っっ、そ、それは、」
「笑わせるな、ルミア!!何十年とかけて培う職人の技が、簡単に会得できると思うなよ!?」
ぎらつく、ゲスナンの瞳。
「最大工房の本気、お前に見せてやるさ。」
「・・望むところです。私の全力で、貴方に勝利します!」
火花散る、2人の間。
「なぁ、ルミア、1つ賭けをしないか?」
「賭け?」
「そうだ。賭けの対価は、この大会で優勝した方の言う事を何でも1つだけ聞く事、でどうだ?」
「お断りします。私に、賭けに乗るメリットはありません。」
「逃げるのか?」
「ーー・・。」
ゲスナンの横をすり抜け、会場へ向け歩き出すルミアの足が止まる。
「俺に勝つ気なんだろ?」
「・・・。」
「なら、この賭けを受けても問題はないはずだ。違うか?」
「・・本気、ですか?」
「あぁ、俺は本気だぜ?で、どうする?逃げるか?それとも、受けるか決めてくれ。」
「分かりました、良いでしょう。その賭け、受けましょう。」
ゆっくり、ルミアが振り返る。
「では、ちゃんと契約しましょうか。」
「契約?」
ルミアが懐から契約書を取り出す。
魔法付与された契約書。
この紙の書かれた事は、何があっても履行しなくてはならない。
「こちらの契約書にサイン、して下さいますよね?」
「なっ、なんでこんなもの用意してやがる!?」
「こんな事もあろうかと、契約書を用意していたんですよ。貴方の事は、信用ならないので。」
ルミアが冷たい目をゲスナンへ向けた。
「ーーーまさか、貴方から言い出した事なんですから、いまさら逃げたりしませんよね?」
不敵な笑みを浮かべて。
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