第273話 冬華

大会の日まで、ギリギリまで刀の改良を続けたルミアとルルキ。

ルミアの疲労の色は濃い。

その横では、弟のルルキも、ぐったりとしている。



「っっ、で、出来ました!!」



歓声を上げるルミア。

そして、ついに完成した武器がこれだ。




レア度:特殊ユニーク

機能:所有者制限、重力軽減、貫通、氷付与、ステータスダウン




製作者:ルミア




素晴らしい出来である。

この仕上がりに、文句のつけようもない。



「うんうん、良くここまでの作品を完成させたね、ルミア、ルルキ。今日までお疲れ様。」

「頑張りました。」

「へへへ、」



2人とも疲労の色はあるが、誇らしげな顔で笑う。



「・・あの、ディア様?」

「ん?」

「出来れば、この刀に名をディア様からいただけませんか?」

「えっ、ルミア、私が決めて良いの?」



ルミアのお願いに、目を見開く。

てっきり、ルミアが自分で名付けると思ってた。

驚きのお願いだ。



「はい、この刀は、ディア様の為に作り、そして捧げるもの。なれば、この刀はディア様に名付けていただきたいのです。」



縋るような眼差しを向けるルミア。



「・・分かった、この刀に相応しい名前を考えるわ。」

「あ、ありがとうございます、ディア様!」



ルミアが口元を綻ばす。

とは言っても、この刀の名前、かぁ。

しげしげと眺める。



「ーーー・・『トウカ』。」



思い浮かぶ、1つの名。

ポツリと呟く。



「トウカ、ですか?」

「私の生まれた場所で、冬の華という言葉でトウカ。どう?」

「トウカ、冬の華。はい、とても気に入りました。」



ルミアが噛み締めるように呟く。




刀 :冬華トウカ

レア度:特殊ユニーク

機能:所有者制限、重力軽減、貫通、氷付与、ステータスダウン



製作者:ルミア




改めて鑑定してみれば、ちゃんと名も表示されている。



「うん、ちゃんと名前もついたね。」

「はい、ディア様。ありがとうございます。」



嬉しそうに、ルミアが微笑む。



「あぁ、しかも、まさか私が#特殊__ユニーク__#級の武器を作れる様になるなんてっっ、」



感慨もひとしおのようだ。



「これも全て、ディア様のおかげです!」

「ふふ、大げさね。」

「いえ、大げさではありません。ディア様、私の女神ですもの。」



真顔で言い切るルミア。

どうやら、ルミアの私への崇拝度が上がってしまったようだ。

ルルキも同意と言わんばかりに頷いている。



「では、このトウカを今回の大会へ出そうと思います、ディア様!」

「了解。」



このトウカなら、優勝も間違いなし。

大会が楽しみ。



「なら、ルミア、ルルキ。」

「はい?」

「何でしょう?」

「2人とも、しばらく休みなさい。」



隈がすごいからね。

2人の身体の事が私は心配だよ。



「えっ、ですが、」

「ディア様、僕達なら、まだ大丈夫ですよ?」

「ダメ、休みなさい。」



まだまだ働きそうな2人の事を嗜める。

無理は許しません。



「これは、私からの命令です。」



本当は、こんな風に命令なんかしたくなんだけど。

が、仕方ない。

これも、2人の為だ。



「2人とも分かった?ちゃんと休むのよ?」

「・・はい。」

「かしこまりました。」



残念そうな顔だけど、了承する2人。



「ちなみに、2人の監視としてリリスの事をつけるから、そのつもりで。」

「「!!?」」



驚愕に染まる2人の顔。



「・・まさか、こっそりと作業するつもりだったの?」

「「・・・。」」



逸らされる、2人の視線。

・・図星か。



「はぁ、リリス、2人の監視を徹底的にお願い。」

「ディア様、かしこまりました。」



ルミアとルルキの2人に半目になる私の足元の影が蠢き、リリスの了承の声が。

私は、良い笑顔を2人に向ける。



「休むよね、2人とも?」

「「・・はい。」」



ヒクつく、目の前の2人の顔。

これ以上の抵抗は無意味と悟ったのか、2人はすごすごと自分の寝室へと向かって行った。



「まったく、しょうがない子達なんだから。」



そんな2人の背中を見送る。



「大会の日まで、2人ともゆっくりやすませましょうか。」



もちろん、リリスの監視下で。



「うん、見張っていないと、隠れて新しく何かを作りそうだしね。」



案の定、リリスがいなければ隠れて作業しそうな2人の事を叱り、寝室に送り返してを繰り返しながら迎えた大会当日を迎えた。

良く晴れた、大会当日。

私達は余裕を持って、全員で会場へと向かう。



「・・襲撃、有りませんね。」



トウカを手に私の後ろを歩くルミアが硬い表情で小さく呟く。

どうやら、襲撃を警戒しているらしい。



「ルミア、大丈夫よ。」

「大丈夫?」

「あの男の手下の中に、私達に勝てる相手なんていないもの。」



色々と企んではいるようだけどね?

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