第236話 王子の告白
頑張れ、王様。
私の楽しい復讐の為にも。
「まずは、ディアちゃんに誠心誠意の謝罪は?」
「くだらないお前達の国の事情にディアちゃんを巻き込んだ件について、心からの謝罪は必要ではなくて?」
「お前のディアちゃんへの謝罪は本当の気持ちなの?打算目的の謝罪ではなく?」
「違うと言うなら、ディアちゃんに対して、ちゃんと態度で示しなさいな。私達に嘘は通じないわよ?」
2人の瞳に怒気が宿る。
あら、やだ、私の事で怒ってくれて嬉しいじゃないか、2人とも。
「こちらに来なかった、火と土の精霊王2人もずいぶんと怒っていたわよ?」
「えぇ、お前がディアちゃんを利用しよとした事を、ね?」
1人で感動する私をよそに、王様への2人の怒りの責めは止まらない。
追撃とばかりに、他の2人もお怒りだとアピールである。
「っっ、も、申し訳ありません!」
「私に、ではなく、謝るのはディアちゃんに、でしょう?」
「は、はい、」
どんどん顔を青ざめさせる王様。
他の王族の方々も、一様に同じで顔を青ざめさせている。
うん、どんまい。
「ねぇ、チリになりたいの?」
「灰になる?」
王様から正式な謝罪はもらっていると言うのに、彼女達の怒りは収まらない様子。
打算や何かしらの理由からの謝罪だとしても、私は納得して許しているのに。
うふふ、彼女達に本当に愛されてるなぁ、私。
「っっ、お、お許しを!」
王様を震え上がらせるのは、まぁ、やり過ぎだと思うが。
「サーラ、アーラ、王様からは正式な謝罪をもらってるから、もう許してあげて?それで私は許しているから。」
「・・ディアちゃんが、そう言うなら。」
「・・仕方ないわね。」
しぶしぶ、私の取りなしで怒りを収めてくれた2人。
ホッとした表情をする王様。
・・・うん、心労で倒れないでね?
「ーー・・あの、王様、一体、先ほどから様子が変ですが、いかがなさいましたか?」
声を上げたのは、離れた場所に控えていた古参らしき年配の女官。
その顔は訝しげな表情を浮かべている。
「言っておくけど、それに、私達の姿は見えていないわ。」
「もちろん、私達の声も聞こえてないわよ?」
王よりも先に、さらりと述べるサーラとアーラの2人。
2人の姿と声は、私達と王族一家にしか見えず、聞こえていないらしい。
だからこそ、様子のおかしい王様を見て、声をかけてきたのだろう。
「余計な者に私達の姿を見られ、ディアちゃんの迷惑にはなりたくないもの。」
「この意味、お前は分かるわよね?」
王様へ向く、2人の冷たい瞳。
ある意味で脅しである。
ーー自分達の存在を、黙っていろと。
「・・はい。」
だからこそ、頷くしかない王様。
2人の脅しは情報漏洩は最大限に少なくし、なおかつ、私への王族からの圧力を許さない力を持つ。
まさに、精霊王様々である。
「王様?」
「何でもない、もう少しの間、皆の者はこの場から離れておれ。誰であろうと、この場に近ずく事は王命によって禁止する。」
精霊王に逆らえない王様。
古参の女官や、お付きの人達を、王命を使ってこの場から下がらせる。
「王よ、忠告しておくわ。」
「婚姻でディアちゃんを王家に取り入れようと欲を出そうとしない事ね。」
サーラとアーラが冷たく告げたのは、王族以外の全ての人間がこの場から離れた時だった。
「私達は、ディアちゃんの幸せを何よりも望んでいるの。」
「もし、この国がディアちゃんの幸せを奪うつもりなら容赦はしない。」
「っっ、肝に命じます。」
了承する王様。
言質、いただきました。
「・・あ、あの、精霊王様方、一言、よろしいでしょうか?」
喜んだのもつかの間。
第三王子が、震える声を上げた。
「何?」
「特別に聞いてあげるわ。」
「あ、ありがとうございます。」
頭を下げた第三王子は、顔を上げ、ごくりと唾を飲む。
「なぜ、ディアレンシア嬢を思う気持ちが許されないのでしょうか?」
私に向く、第三王子の熱を孕んだ瞳。
次の瞬間。
「ディアレンシア嬢、私は貴方が好きです。」
突然の告白である。
「あ、アレンっっ、!?」
焦る王様。
「ーーまぁ、」
頬を染め、口元を手で覆うミンティシア様。
「っっ、」
顔面蒼白で、椅子に座っていなければ、その場に今にも倒れそうな王妃様。
「わ、私も!」
「私だって!」
張り合うように、声を上げる他の王子様達。
・・何なの、これ?
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