第237話 論外の男

この国の王子様3人に告白される私。

関わりも少ないのに、何故だ?



「「・・・」」



そんな王子達に対して、とても冷ややかな目になるサーラとアーラの2人。

精霊王の2人の圧に、王子達を除く王家の皆様の顔色が、どんどん悪くなっていく。

下手をしたら、国が滅びかねないもの。




「「「・・・」」」



しかも、無言のコクヨウ達の醸し出す雰囲気も黒くなっていく。

全員が無表情なのが、また怖さに拍車をかけているんだけど。

もう、カオスである。



「王子殿下方、申し訳ございませんが、そのお話はお断りさせて下さいませ。」



しっかり、拒否。

私の意思は変わらず、拒否一択である。



「っっ、なぜですか!?」

「理由をお聞かせ下さい。」

「身分のせい、でしょうか?」



が、それで簡単に食い下がらないのが3人の王子様方。

はっきり言おう、王子の妻なんて面倒の一言でしかないんですよ。



「恐れながら、王子殿下方では、私の夫になる条件を満たせないからです。ですから、私を妻にと言う話は、お断りさせていただきますわ。」

「夫になる条件?」

「そうです、アレン王子殿下。」



第三王子め、余計な事を言いよって。



「その、ディアレンシア嬢の夫になる為の条件とは、一体、何なのですか?」

「・・知って、どうするのです?」



意味ある?



「努力いたします。」

「努力?」

「はい、努力してディアレンシア嬢の言う条件を満たし、必ず好きになってもらえるように。」



きっぱり言い切る、アレン王子。

甘いと言うか。



「・・努力、ですか。」

「そうです、ディアレンシア嬢。」

「ーーでは、私の為に大切なご自分の家族を、今この場で切り捨てて下さいな。」



幸せな子ね?

痛みも、絶望も知らず幸せに育った子。

汚れを知らなすぎる。



「え?」

「出来ますでしょう?私の為に、夫となる為に条件を満たす努力をして下さるのですから。」



困惑するアレン王子に、私はゆるりと口角を上げていく。

楽しげな微笑で。



「私の夫になる条件は、ご自分の全てを捨てられる方だけですの。」



私は、半端な愛はいらない。

ーーたった1人、私だけを愛する心が欲しいの。



「アレン王子、私の為にご自分の大事な国を、家族を、今お持ちの全てを捨てられますか?」

「それ、は、」

「ーーふふ、出来ませんでしょう?」



だから、断りのだと笑う。

お前では、私の夫にはなれないのだと。



「当然の事ですわ。アレン王子殿下は、ずっと王族としてお育ちになったのですもの。」



王族は、民を守る者。

民の為に生き、国のために死ぬ。



「いつか、アレン王子殿下は、私より家族を、この国を選ぶ時が来るでしょう。」



王族として、それが、あるべき姿。

正しい選択だ。



「この国の為に、他国から、自国から高貴なご令嬢を第2、第3の妻として娶る必要が出てくるかもしれません。」



その血を残すこと。

何よりも、それは王族の義務。

理解している。



「ですが、アレン王子殿下?ふふ、こう見えて私は、とても貪欲な女ですの。」



私だけを見て欲しい。

この心が渇望するのは、浅ましい願い。

貪欲な欲求。

ーー私だけを、愛して欲しい。



「誰か他の者を触れるかもしれない夫で、私は満足が出来る女ではありませんのよ?」



欲しいと願うなら。

好きだと言うなら、私以外の全てを捨てて。



「私以外の者を捨てれない貴方様では、一生、この心を捧げる事はないでしょう。」



出来ないなら、無理。

役不足である。



「ーー貴方の夫は、それが出来る、と?」

「もちろん。」



強張る顔の王子達へ微笑む。

コクヨウも、ディオンも、私以外の全てを捨てることを厭わないだろう。



「夫の1人は、たった1人の血の繋がった家族である妹よりも、妻である私を取るそうです。」



オリバー言った。

大事な妹であるクロエの身に何かあったとしても、自分が優先するのは私である、と。



『もしも、クロエが人質に取られ、ディア様の何らかの不利益になる場合、その時は俺は妹を切り捨てます。』



そして、オリバーだって。

今まで守ってきた妹より、私を取ると言う。

何よりも、私を取ると。



『ディア様を優先する兄を、私は心から誇りに思いますわ。』



普通なら、怒る。

しかし、当の妹であるクロエは、そんな兄であるオリバーの決意に大絶賛。

自分よりも私を優先させると言い切るオリバーを、咎めもしない。



『ふふ、ディア様より私を優先するような時は、この手で兄を叩き潰しますから、ご安心下さいね?』



むしろ、後押しするクロエ。

皆んなを危険に晒す気はさらさらないが、私の為なら自分の身が傷つくのも厭わないのである。

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