第225話 弊害

出来てしまったのなら、有り難く拠点として活用しよう。

実際、素晴らしい出来なのだから。



「イーア、ありがとう、ね?あと、ノーム達も、頑張ってくれて、ありがとう。とっても嬉しい。」

「っっ、ディアちゃん!」

「「褒められた~」」



私が喜べば歓喜する、イーアと、ノーム達。



「・・私がお願いしたら、世界制覇もしそうよね。」



ちょろくないか、精霊達よ。

心配になる。



「この屋敷の中に入れるのは、ディアちゃんが認めた者だけに結界を設定するわね?」

「え、イーア、それは、ユリーファが認めないんじゃ・・?」

「構いませんわ、ディアレンシア様。何よりもディアレンシア様の身の安全が優先です。」



あっさり了承するユリーファ。

・・良いんかい。



「ーーまぁ、この里の長になるユリーファが良いんなら、文句はない、の、かな?」



煩わしい客人の相手をしなくて済むし。

イーアの結界は有難いかも?



「ディア様、この屋敷を管理する為にも、新しい奴隷を購入されてはいかがですか?」



屋敷の維持の為の提案するアディライト。

ふむ、確かに。



「そう、ね、この里の迷宮を他の子達にも攻略させたいし、そうなったら、今の子達だけじゃ色々と人手は足りないかな?」



あちらの屋敷の維持もあるし、ルーベルンへ帰ったら、さっそく新しい子達を迎え入れますか。



「ふぅ、やる事がたくさんね。」



迷宮攻略に、新しい子達の購入、新商品の開発、と大忙し。

この里の迷宮攻略が終わったら、しばらく皆んなでゆっくりしますか。



「ディアちゃん、家の中も見てみて?」

「ふふ、イーア、そんな急がなくても良いんじゃない?」



笑顔のイーアに連れられて、屋敷の中へ。



「やり過ぎよ!」



豪華すぎる屋敷内に私が悲鳴を上げるのは、この後すぐの事。

精霊の力、侮りがたし。



「はぁ、イーア達は限度を知らないのかしら?」



イーア達、精霊の限度のなさに疲れながらも、ユリーファの許可を得た、この里の迷宮攻略へ挑む私達。

この里の迷宮は、全35階層。



「・・あの、私のやる事、ないんだけど?」



私が動く前に殲滅されるモンスター達。

・・あれ、この前の二の舞?



「ふふ、これしきの敵、ディア様のお手を煩わせる事などありませんわ。」



アディライトが微笑を浮かべる。

頼もい、が。



「でもね、アディライト?私もモンスター達と戦いたいんだけど!」



見ているだけなんて、つまらない。

私も倒したいのに!!

アディライトに詰め寄る。



「ーー分かり、ました。ディア様がそこまで言うのであれば。」

「へ?良いの?」



目が輝く。



「ですが、一瞬で終わると思いますよ?」

「うん?」

「まぁ、して見て下さい、ディア様。」

「・・?良く分かんないけど、了解!」



気合いを入れますか。

武器を手に、胸を弾ませる。

アディライトの意味深な言葉の意味を私が理解するのは、すぐ後の事。



「ーー・・っっ、な、何で?」



悲鳴を上げた。



「ディア様、だから言ったでは、ありませんか。一瞬で終わると思いますよ、と。」



アディライトが苦笑する。



「で、でも、魔法の一撃で終わるとは思わないじゃない!?」



私の望み通り、モンスターは倒した。

倒したが、納得がいかない。

ーーそう、私の魔法攻撃の一撃で終わってしまうモンスターとの戦闘に。



「うぅ、武器で攻撃しても、一瞬で終わっちゃうし。」



不満である。

あっさりしすぎて、物足りない。



「ディア様、気を落とさず。僕達のレベルなら、これも致し方ない事では?」



嘆く私を、コクヨウが慰めてくれる。



「今は浅い階層ですし、もう少ししたら高レベルのモンスターも出てきますよ。」

「むぅ、」



高レベルになった弊害が、ここに来て私を苦しめるとは。

・・くっ、無念。



「危険なことはしたくないけど、これじゃあ、スリルがないじゃない。」



せっかくの冒険なのに。

強敵のモンスターなんて、そうそう出てくる訳でもないし。



「っっ、良いもん。こうなったら片っ端からモンスターを倒して、全部お金に換えてやる!」



お金には、全く困っていないんだけどね!



「「あっ、サンダーホーク!」」



フィリアとフィリオが声を上げる。



「「倒す?」」

「ダメー!」



2人とも、私の敵を取らないで!

慌てて駆け出す。



「ディア様が満足されるようなモンスターでも、育てましょうか?」

「それなら、ディア様に知られぬように育てなければ。」

「ディア様の事です、ご自身で育てられたモンスターを倒せないでしょうから。」



アディライト、ディオン、コクヨウがひっそりと計画を立ていた事を、私は知る由もなかった。

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