第221話 証明

事実を言って、謝罪しろとはおかしな話だ。

全く言っている意味がわからない。



「なんだと!?」

「あぁ、侮辱だとお怒りになるのであれば、はっきりと宣言なさってはいかが?ご自分は悪くないと。」



名案とばかりに提案する。

悪意、の、ね?



「何?」

「もちろん、無実だと宣言なさるのであれば、精霊王様達の名において、ですけどね?」



口角を吊り上げる。



「侮辱だと言い切るのであれば、精霊王様の名において、ご自分は無実だと宣言して下さいませ。それが出来るのであれば、私も発言の訂正と謝罪をいたしますわ。」

「っっ、」

「うふふ、出来るんですよね?」



目を細め笑う。



「ーー・・私に謝罪を要求する、なら。」



やってみろ?

自分達が絶対的に崇拝する精霊の、その王たるものの前で。



「もしも本当に事実無根の侮辱をしたのなら、私は心からの謝罪をいたしますわ。」



私の前で自分の確たる無実を示せ?

そうでないなら、こんな屑達に下げる頭はない。

が、全てが無実無根なら、話は別だ。

ちゃんと謝罪しよう。



「はっきりと、精霊王様達の目の前で、無実だと、自分は何もユリーファ様に対して疚しい気持ちは抱いていないと証明して下さい。」

「!?」

「ふふ、そんなに難しい事ではないですよね?ただ、真実を言えばいいのですから。」

「っっ、そ、れ、は、」

「それは?」

「ーーーー、」

「・・出来ない、のですか。」



だろうね。

黙るぐらいなら、最初から喚かなければ良かったのに。

やっぱりバカだ。



「では、私からの謝罪は必要ありませんね?」



言えないんだもん。

ふふ、しかも私が言った事が事実だって、自分で認めちゃったて気付いてるのかな?

・・・うん、おバカさんだから、気付いていなさそうだわ。

周囲からの視線も冷たくなっている事にも気づかないぐらいだし。



「ユリーファ様に伺います。」

「・・、何、でしょう?」

「未だに清いお身体だと、ユリーファ様は精霊王様達の目の前で、宣言が出来ますか?」

「ーーはい、精霊王様の名に誓い、私は純潔の身でございます。」



ユリーファがしっかりと頷き、宣言する。

よく言った、ユリーファ。

心の中で拍手喝采。



「うふふ、ユリーファ様は、誰かさんとは違いますね?」



嫌味を、ちくり。



「くっ、」



あっ、屑の父親、悔しそう。

笑える。



「あらあら、そんなに悔しければ、今からでも、ご自分も精霊王様に宣言なさっては?」

「!?」



赤から青へ。

コロコロと変わる顔色の変化が面白い。



「小者ね。」

「たわいない。」

「歯応えなさ過ぎよ。」

「反論、なし?」



精霊王達も屑の父親へ嘲笑。

当然である。



「で、屑さん?何か私に言う事は?」

「・・・?」



意味が分からないって顔をする屑な父親。

本気、か?



「えっ、謝罪もないの?」



驚きだわ。

あっ、おバカさんだから、それも仕方ない、事なのか・・?



「私には理不尽な謝罪を要求しておいて、ご自分はないのですかね?」

「なっ、私が謝罪、だと!?」



目を見開く、屑な父親。

屑な父親は、本気で驚いている様子。

・・マジ、か。



「人の事は侮辱するなって言うくせに、自分はどうななのよ?」



少し前の自分の発言を思い出せ?

忘れたなんて言わせない。



「本当に良く、この里の長でいられたね?」



常識なさ過ぎだよ。

引き攣る顔。



「・・もう、良いや。」



この屑にに期待するだけ、時間の無駄だ。

諦めは大事だよね?



「それでは、」

「私からの罰を受けてくだされば、それで十分ですもの。」



期待に輝く屑の父親の言葉を遮る。

だから、謝罪は良いや。



「・・は?」

「何をそんなに驚いているの?謝罪がないんだから、当たり前の事でしょう?」



例え心からの謝罪があったとしても、許さないのが私。

絶対に、罰は受けてもらいます。



「ば、罰?お前、一体、何を考えている。」

「ふふ、屑な貴方達へ相応しい罰は、ちゃんと考えてあるのでご安心を。」



にこにこ微笑む私。

そんな私の様子に、里の皆さんは身を引いているのは気のせいかな?

うん、気にしない事にする。



「っっ、安心が出来る訳なかろう!」

「ちょ、達って、どう言う意味!?もしかして、私達もなの!?」

「なぜ、父上の罰を私達も受けねばならないんだ!?」



喚く罪人一家。

あら、本当に仲良しさん。



「え?貴方屑のせいで、もう少しで私も命の危険があったのに、ですか?」

「「「!?」」」



首を傾げれば、親子で固まった。



「魔族から聞きましたよ?貴方の愚息の目的は、自分の父親と私達を殺す事だったとか、ね?」



いくら愚息が私達の脅威ではなくても、許される範囲を逸脱している。

間違い無く、魔族に洗脳されていたとしても、愚息の行いは犯罪。

罰があって当然でしょう?

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