第222話 クズ一家の末路

下手したら、私だけでなく、里の住人にも被害が及んでいたかもしれない。

その事を、屑家族は理解しているのかしら?



「で、そちらの屑女は魔族を引き入れ、そんな危ない思考を持つ愚息を唆したとか?」



救いようがない。

息子を唆して、凶行に走らせる母親とか、ないわー。



「ありがとうございます、屑達!こうして私に断罪するチャンスをくれて!」



感謝だよ、屑家族。

自分達から私に断罪する機会を与えてくれるなんて、なんて素晴らしい家族なんだろうか。



「なっ、それなら、私も被害者だぞ!?」

「は?妻子を纏めあげるのか家長の役目ではないの?」

「そ、それは、」

「当然、貴方も処罰の対象ですけど?私の大切なディオンを虐げ、娘であるユリーファ様を自分の欲望の為に監禁する変態犯罪者さん?」



何言ってんの?

妻子に罪を擦りつけて、自分は逃げるつもり?



「ーーあぁ、貴方は、妻子を管理する事も出来ない無能なのですね?」



屑の父親へ軽蔑の目を向ける。



「あぁ、私も精霊王様の名において、この場で真実を話している事を誓いますわ。」



私の発言が事が全て嘘だと言われたら、ムカつくし?

屑の父親の逃げ道は少しも残さん。



「ふふ、私からの罰、きっちり受けて下さいますよね?」



屑達の反論は、一切、聞かん。

当たり前の権利だ。



「ーーっっ、何を、する、つもりだ?」



屑の父親が、声を震わす。



「ん?貴方がディオンにした痛みを与えるだけだよ?」

「・・は?」



呆ける、屑の父親。

私の言葉の意味を、存分にその身に分からせてあげる。



「ーー・・ステア、お願い。」

「任せて、私達の最愛。」



お願いされたサラマンダー、ステアが嬉しそうに手を無造作に振るう。

舞う、炎。



「ぐっ、あっ、!?」

「きゃあっ、!?」

「ひっ、い、痛い、!?」



屑家族の片方の羽を、ステアの炎が跡形もなく焼いた。

痛みに藻掻く屑家族。



「ふふ、どう?これが私から貴方達へ与える罰よ。」



藻掻く屑家族を見下ろす。



「ディオンの苦しみと痛みを、生き恥を晒しながら身を以て知りなさい?」



浮かぶ冷笑。

ディオンが味わった苦痛を、目の前の屑達も思い知れば良い。

それが、屑な貴方達へ私が与える罰。



「わ、私が、片、羽?」

「ひっ、いゃぁあッ!」

「そ、そんな、う、嘘だ!」



呆然、狂乱、逃避。

カオスと化す、屑家族の面々。

この時を待っていた。



「ーー・・あぁ、私は、貴方達の、その顔が見たかったの。」



絶望に染まる、その顔を。

うっとりと、屑家族へ微笑む。



「ねぇ、貴方達が与えたディオンの痛みは、こんなもんじゃないのよ?」



片方だけの羽を持つ妖精族は、里の中で忌み嫌われる存在。

かつて、ディオンが置かれていた境遇だ。

苦しんで?

ディオンが苦しんだ年月と同じだけ、これから先も、ずっと。



「私は貴方達を、殺しはしない。」



それだと、この屑達は幸せになってしまうでしょう?



「楽に死ぬなんて、許さないわ。」



藻掻き苦しめ。

その命の炎が消える最後の瞬間まで。



「ユリーファ様、この者達の里での処遇はいかがなさるのですか?」



ユリーファへと視線を向ける。

出番です、ユリーファ。



「はい、ディアレンシア様。この罪人達を追放はしませんが、魔封じを付けたまま、この里での一切の発言権だけを剥奪します。」



長としてユリーファが言い切る。

甘いと思うなかれ。



「ふふ、この里自体が地獄の牢獄、ね?」



目の前の屑達は、平穏な日々を、この里で二度と送れまい。

屑達には相応しい末路。



「っっ、た、助けてくれ、セリス!」

「・・私は、セリス様では、ありませんと言ったはずですが?」



縋り付こうとする屑父親から、ユリーファが汚らわしそうな表情で一歩身を引く。

当たり前だろう。



「ユリーファ様、その屑は、分別のつかないほど耄碌されているのでは?」



私も嘲笑う。

ユリーファの、私は味方だもの。

援護射撃は任せなさい!



「セリスっっ、!」

「父上、貴方はこの里から外に出る事は生涯叶いません。どうぞ、このまま、この里で慎ましく余生をお過ごしください。」



一礼したユリーファが、屑な父親に背を向けて歩き出す。



「早急に父上達を、私が過ごしていた離れへお連れして。これ以降、外へ出る事を長として禁じます。」

「はっ、」

「かしこまりました。」



ユリーファの命令に頷いた数名が屑達を連れ出そうと動き出す。



「い、嫌だ、ディオン、助けてくれ。」



手負いの獣は足掻く。

在ろう事か、屑な父親はディオンへと救いの手を求める。

バカなの?



「ーー冗談、でしょう?」



調子の良い自分の父親へ、とても冷ややかな目を向けるディオン。



「他人の私が、なぜ、貴方の事を救わねばならぬのですか?」

「ディ、ディオン・・?」

「虫のいい男ですね。自分がした事を、思い出したらいかがです?」

「っっ、」



立場が入れ替わった親子。

無情にも助けを求めたディオンにも拒否られた父親は、妻子と共に連れ出される。

私の待望の復讐は、こうして果たされた。

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