第191話 伏線への誘い

見上げ、ディオンの頬に指を伸ばす。



「だから、ディオンはそんなに心配そうな顔をしないで?私の愛おしい旦那様。」

「っっ、ディア様。」

「私の事は、皆んなが、ディオンが守ってくれるのでしょう?」



ディオンの頬を撫でた。



「ーー・・必ず何があろうとも私が守ります。私の愛おしい人、ディア。」



私の頭に落ちる口付け。



「ふふ、なら安心ね?誰も私に指一本だって触れる事は出来ないのだから。」



ディオンや皆んな以上に強い存在なんて、早々この世界にはいないもの。

私の身の安全は保証された様なものだ。



「ねぇ、ディオン?お父様や一族の皆さんを見返す為に、1つだけ貴方に提案があるんだけど。」

「提案?」

「うん、実はね?」



これは少し前から考えていた事。

ディオンの生まれ故郷に帰る前に、済ませておきたい1つの布石。



「っっ、そ、れ、は、」



私の提案を聞いたディオンの目が見開く。



「嫌だ?」

「いえ、少し驚いただけで嫌ではありません。しかし、ディア様、そんな事は可能なのですか?」

「ふふふ、ディオン、今の私に出来ない事は何もないよ?」



その為の力。

愛する者の為に使わないのなら、この力に何の意味があると言うの?



「ーー、分かり、ました。ディア様のそのお話、お受けします。」

「本当!?」

「えぇ、貴方の事を守る力が増えるのは、私も嬉しいですから。必ず貴方の為に役立てます。」

「まぁ、」



どこまでも私優先なのね?

くすくすと笑う。



「じゃあ、この話は進めましょうか、ディオン。」

「はい、ディア様。」

「ふふ、でも、その前に、」



ーーーー・・私にディオンの事を頂戴?

ディオンの身体を後ろへのベットの上に押し倒す。

丁度ベットの上にいるんだし、少しぐらい他の事を忘れても良いよね?



「っっ、ディア、」



欲情に染まるディオンを見下ろす。



「ーー・・ディア、ディオンばかりではなく、僕の事も忘れないで下さいよ?」

「んっ、」



後ろから首筋に落ちるコクヨウけらの、口付け。

身体を震わす。



「っっ、コクヨウ、ディオン、」



落ちて行く。

どこまでも、2人から与えられる愛に。



「愛してるわ。」



この身が朽ち果てたとしても、2人の事を愛してる。

ベットに沈む。

至る所へ口付けを、愛部される身体。

散々2人に愛され乱された後、ぐったりと私はベットに沈む。



「ところでディア様、オリバーの事はどうするのですか?」

「んっ、」



ベットの上でぐったりする私の剥き出しの背中を撫でるコクヨウの指に身体を震わす。



「・・っっ、オリバー?」

「そうです。オリバーへは、ディア様はご寵愛をあげないのですか?」



楽しげな表情のコクヨウは、私への悪戯を止めようとしない。



「あっ、っっ、コクヨウ、止めて、」

「嫌ですか?」

「ちが、う、けど、話が出来、ない、」



頭が痺れる。

コクヨウの悪戯は私の思考を奪っていく。



「それは残念。」

「・・っっ、もう、バカ。」



やっと悪戯を止めたコクヨウを悪態ついて睨むけど、効果はなし。

1人翻弄され、悔しい気分。



「ふふ、ディア様、そう不貞腐れないで下さい。コクヨウの懸念も、もっともな事なんですから。」

「むぅ、分かってる。」



宥める様とするディオンに唇を尖らせる。

私がオリバーに、ずっとお預けさせている事ぐらいは、ね。



「2人は私とオリバーとの事を受け入れてくれるの?大丈夫?」

「ディア様が、それを望むなら。」

「私達は否やはありません。」



きっぱりと言い切る2人の顔に私とオリバーの関係を否定する色は全く見えない。



「ただ、」

「ただ?」

「オリバーにばかりかまけて、僕達の事を忘れないで下さいよ?」

「もう、コクヨウ、そんな事は当たり前でしょう?私が忘れる訳無いじゃない。」



私が大事な2人の事を忘れたり、蔑ろにする訳がないじゃないか。



「なら、良いんです。」

「きっと、オリバーも喜びますね。」



笑顔の2人。



「・・・何か意外だわ。」

「へ?」

「何がですか?」



ポツリと呟いた私に2人が首を傾げる。



「オリバーの事、2人はもっと虐めるのかと思ってた。」



オリバーにだけ意地悪な2人。

そんなコクヨウとディオンの2人が、オリバーの事を率先して私に進めるなんて不思議だ。



「ディア様、僕はオリバーの事を嫌いではありませんよ?」

「私もオリバーの事は嫌いではありませんね。」

「へ?そうなの?」



なら、なんで2人はオリバーに対してあんなに意地悪だったんだろう?

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