第192話 知らされる事実

首を捻る私。

オリバーの事を嫌っていないのに、コクヨウとディオンの2人は意地悪してたの?



「僕達のオリバーへのあれは、ディア様に敵意を向けた事に対するお仕置きです。」

「え!?」

「コクヨウの言う通りですよ?ルルーシェルにも、必要以上にディア様へ接近する事に対して禁止令が出ていますし。」

「はいっ!?」



ルルーシェルへ私への接近禁止令?

なんだ、それ。

私、それは初耳なんですけど?

愕然とする。



「ディア様に対してあの様に敵意を向けておいて、オリバーとルルーシェルの2人は、あれだけのお仕置きで済んでいる事を感謝して欲しいですね。」

「その事を2人も分かっているから、私達のお仕置きに何も文句を言わないのです。」

「ははっ、」



私の庇護下にいなければ、2人は間違いなく悲惨な事になっていたのね。

・・・怖ッ!



「2人も反省している事ですし、」

「ディア様が旅に出られる前に、オリバーの事をすっきりさせましょう。」

「うん、分かった。」



2人がオリバーの事を認めてくれるなら、私が躊躇する必要はない。



「明日はオリバーと一緒に過ごす。」

「はい、ディア様。」

「ディア様の御心のままに。」

「ありがとう、2人とも。」



笑う2人の安心できる腕の中に飛び込む。

ありがとう、私のこんな最低な我儘を許してくれて。



「僕達にお礼など不要です。貴方の幸せが僕達の何よりの望みなのですから。」

「ディア様の笑顔を守れれば、私達はそれで良いのです。」



2人の安心する腕の中で、どこまでも私はどろどろに甘やかされていく。

その安心する腕が、明日1つ増えるのだ。

うっとりと目を閉じる。



「・・さて、少し困ったわね。」



次の日の朝。

私は自室で悩んでいた。



「うーん、オリバーとの事についてコクヨウとディオンの2人からお許しが出たけど、なんと誘えば良いのかしら?」



悩む。

アディライトに朝の身支度をしてもらいながら、私は頭を悩ませる。



「ふふ、ディア様、素直なお気持ちをオリバーへ伝えたらよろしいのですよ。」

「素直な気持ち?」

「ディア様に好きだと言われて、抗える者などいると思いますか?」

「へ?普通にいるでしょ。」



世の中の全員が私に惚れるなんて、乙女ゲームやお話の中だけだ。

こちらの世界での私は容姿に優れたが、それで自惚れる事はない。



「・・・無自覚、なのですね。」

「え?」



小さくアディライトが呟く。

私の髪を梳くアディライトから、哀れむような眼差しを向けられた。

・・・あれ、なぜ?



「おほん、良いですか、ディア様?オリバーはディア様を愛しています。」

「・・うん。」



私の事を好きだって、言ってくれた。

それは信じてる。



「なら、そんなディア様のどんな誘いもオリバーにとってはご褒美。・・・くっ、オリバー、なんて羨ましいのでしょう!」

「・・ちょ、アディライト!?」



どうして涙目になるの?

最後の方は小声で、何て言ったのか分からなかったし。



「すみません、ディア様。少し感情が高まってしまいました。」

「う、うん、良いよ?」

「ありがとうございます。」



アディライトがにっこりと笑う。



「ディア様、今宵のご衣装はご期待下さいね?」

「衣装?」

「うふふ、ディア様が考案された衣装の中からオリバーを悩殺する物をご用意しますわ。」

「の、悩殺って、」



張り切るアディライトに顔が引き攣る。



「ふ、普通で良いよ?」

「まぁ、いけません。」

「なんで!?」



無常にも私の提案はアディライトなキッパリと拒否られてしまう。

いつも普通の服だよね?

何で今日は普通の服ではダメなの!?



「ディア様、今日はオリバーとの初めての夜なのですよ?」

「っっ、」



アディライトの言葉に私の頬が熱を持つ。

確かに、オリバーとは初めて一線を越える夜なのだけど、その行為自体は経験済みな訳で。



「うん、やっぱり普通の服で良いと思う。」



下手に変えるのは、ね?



「っっ、そんな、」

「ちょ、なんで泣きそうな顔なの!?」



今にも涙を流しそうな悲痛な顔のアディライトに身を引く。



「ディア様を美しく着飾れないなんて、そんなの、あんまりです!酷いですわ!」

「や、あの、」

「コクヨウとディオンの時も、私はディア様へご衣装をご用意が出来なかったのですよ!?」



アディライトが拳を握った。

・・あの、もしもしアディライトさん?

衣装1つで大袈裟過ぎない?

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