第185話 カーシュ公の末路
口角を上げる。
「私から身の危険を感じた、と?そうカーシュ公は主張するのですね?」
「そ、そうだ!」
「理由は?」
「は?」
「私が貴方を害する理由は何です?」
さぁ、言ってみろ?
地下牢で大人しくしていれば、私がカーシュ公を害する理由などないよ?
「貴方を害する理由がないのに、私から身の危険を感じたのですよね?私が貴方を害する理由を教えてくださる?」
「っっ、そ、れは、」
「それは?」
言い訳、聞こうじゃないか。
あるなら、ね?
「っっ、そう、私の権力を欲して、」
「罪人として地下牢に入れられた人の?これから裁かれるんですよね?」
「・・・。」
「・・・。」
私達の間に沈黙が流れる。
「・・あの、思い浮かぶ理由はそれだけ?」
違うよね?
カーシュ公の返事を待ってみる。
流れる沈黙。
「・・いや、その、」
「・・・。」
「あの、だな、」
「・・・。」
「う、」
「ーーーー話にならない。」
待った私がバカだった。
目を泳がせて言葉に詰まるカーシュ公の身体を重力魔法で地面に転がす。
カーシュ公への敬意など皆無である。
「っっ、ぅ、」
打ち付けた身体の痛みに、カーシュ公が呻き声を上げた。
「な、にを、す、」
「さて、カーシュ公?」
這いつくばるカーシュ公を見下ろす。
何か言いかけた?
貴族?
不敬罪?
犯罪者のカーシュ公の言う事など、私が聞く必要などない。
「ふふふ、今度は私の番ですよね?」
にっこり微笑む。
色々と無謀だったけど計画してくれたし?
お礼は必要よね?
「何・・?」
「私を害そうとしたんですもの。ご自分にそれと同じ事を私にされても文句は言えないと思えません?」
「っっ、!?」
青ざめる、カーシュ公の顔。
反撃されると全く考えなかったって顔ですね。
「あ、許し、」
「嫌です。慈悲は与えません。」
言葉を遮る。
今さら私に慈悲を乞うとは厚かましい。
「私の家族を自分の欲の為に欲した貴方を、私が簡単に許すとでも?」
「っっ、」
「貴方は王からの断罪で許しを乞うべきだった。甘い誘惑に乗らずに。」
その機会を逸したのは自分自身。
自業自得。
「カーシュ公、貴方は犯罪者なのです。」
理解しろ。
救いは自分にはないのだと。
カーシュ公へのお仕置きを続けていれば、王と宰相と兵達が庭園に現れる。
「・・・ソウル嬢、一体、何をしている?」
「へ?何って、お仕置きですけど?」
自分の魔力で作り上げた氷の氷柱をカーシュ公の太腿に躊躇なく突き刺す。
「ぐっ、」
上がるカーシュ公の呻き声。
「・・お仕置き?カーシュ公への拷問ではなく?」
「拷問で私はカーシュ公から聞き出したい事なんかないですよ?これは、ただのお仕置きです。」
「・・なぜ、そんな仕置になったのだ?」
「ん?痛みって抵抗も反論も無駄だって直ぐに分かるじゃないですか?」
人は痛みと苦痛で学習するものだ。
学ぶ、とも言う。
「バカなカーシュ公でも理解が出来るよう、身体に言い聞かせています。あっ、直ぐに治療しているので、カーシュ公が死ぬ事はないですよ?」
「「「・・・。」」」
私の発言にドン引きの王様達一行。
顔も青い。
ふむ、なぜだ?
「これは、ディア様の敵です。」
「お仕置きだけとは、何とも生ぬるい。」
一方でコクヨウとディオンの2人がカーシュ公へ向ける眼差しは冷たい。
2人以外の皆んなは、万が一家の方への襲撃に備えて待機中。
鉄壁の守りである。
「た、助け、」
「は?王位を陛下から奪おとしてたくせに、その相手に助けを求めるってバカなの?」
王ミハイル様へと助けを求めるカーシュ公の太腿に、また氷柱を突き刺す。
まだ、カーシュ公は痛みが足りないようだ。
「ぐっ、あ、」
「殺さないだけ有難いと思ってね?貴方には、もっと絶望して欲しいんだから。」
死は救い。
それで全てが終わるんだから。
「ーー・・陛下、私のお願いをお聞き下さいますか?」
許せる訳がない。
「何だ?」
「まず、お聞きしたいのですが、このバカの処罰はどれほどのもになるのでしょうか?」
「うむ、王宮内で刃物を振り回し、たくさんの罪を犯し、王の命令を破り、地下牢から逃げた罪人は極刑だろ。幽閉では傀儡の王へと担ぎ出す輩が現れるやも知れぬからな。」
それは処刑って事かな?
「ふむ、将来への不安の種を潰す、と。」
王子も3人いるし、種馬としての価値もカーシュ公にはないのね。
カーシュ公から権力と血筋を取ったら?
ただのゴミとなる。
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