第166話 パーティー当日
はい、ついに来てしまいました。
各国の要人を呼んだ、私達のSランク冒険者となったお披露目パーティー当日。
わざわざお城から迎えに来てくれた豪華な馬車に揺られて、今回のお披露目の会場へと向かう私、コクヨウ、ディオン、アディライトの3人。
フィリアとフィリオの2人は、今日のお披露目は欠席して屋敷で皆んなとお留守番だ。
「本当にお綺麗です、ディア様。」
「えぇ、地上に舞い降りて来た美の女神のようです。」
うっとりとした眼差しで私を見つめるコクヨウとディオンにの2人に頬が染まる。
は、恥ずかしい。
2人から向けられる、その眼差しの中に熱を感じるのは私だけ?
「っっ、美の女神って、2人とも褒め過ぎよ。アディライト達が頑張って作ってくれた衣装が素晴らしい出来なの。」
アディライトも最高傑作だと言ってたし。
馬子にも衣装?
「ふふ、お褒めに預かり光栄です、ディア様。想像以上のお綺麗な姿を見れて幸せですわ。」
とても良い笑顔でアディライトが笑う。
「いえ、もちろんアディライト達の作った衣装も確かに素晴らしいですが、ディア様自身が光り輝いているのです。」
「目を離した隙に私達を置いてどこかへ飛び立ってしまいそうですね。」
「今日はディア様から目が離せません。」
「このまま、何処へも行けぬ様にディア様の事を閉じ込めてしまいましょうか?」
甘い。
2人の眼差しが甘すぎる。
「その姿のディア様を、僕達以外の誰にも見せたくないですしね。こんな綺麗なディア様を見たら、不埒な事を考える者がいそうですし。」
「しかし、こんなにも素晴らしいディア様の姿を見せびらかしたくもあります。悩ましい事だ。」
い、居た堪れない。
羞恥心に馬車の中で身を縮こませる。
「僕達の、ディア。」
「麗しき、女神。」
「うぅ、」
今回のお披露目の会場となるお城へ着くまで永遠と2人から賛辞を聞かされ続ける、この拷問。
あの、2人とも?
私を羞恥心で悶え殺す気ですか?
「うふふ、ディア様、何事も諦めが大切ですよ?」
羞恥心に真っ赤になっていれば、良い笑顔をアディライトから頂いてしまった。
あの、アディライトさん?
私達のやり取りを微笑ましげに見ているだけで助けてはくれないのね?
「つ、着いた。」
何とか苦行を乗り切った私。
メインのお披露目パーティーが始まる前に疲れ切るって、どうなの?
先に馬車から降りたコクヨウとディオンの2人が、まだ中にいる私へと手を差し伸べる。
「お手をどうぞ、ディア様。」
「僭越ながら、会場までディア様を私達がエスコートさせていただきます。」
はわ、2人とも紳士。
ヤバい、さっきの2人じゃないけど、皆んなにこんなにカッコいいコクヨウとディオンの2人の姿を見せたくないかも知れない。
今日の衣装の効果もあって、2人の事がいつも以上に光り輝いて見える。
「むぅ、」
コクヨウとディオンの2人が私以外の女性をエスコートする姿を想像してしまった。
頬が膨らむ。
コクヨウとディオンの2人は私の旦那様。
例え王族の血筋の女性であっても、2人の隣は明け渡さないんだから。
「ディア様?」
「どうかされましたか?」
少しだけ想像の中の女性に嫉妬して悶々としていれば、不思議そうにコクヨウとディオンの2人が首を傾げる。
い、いけない、トリップしてた。
「な、何でもないの、気にしないで。2人ともありがとう。」
照れながら2人の手を借りる。
紳士な2人の姿に憂鬱なお披露目パーティーの事など私の頭の中から消え去ってしまいそう。
別の嫉妬心で悶々とするが。
「ディア様、足元が危ないので気を付けて馬車から降りて下さいね?」
「なんなら私がディア様の事を抱き上げましょうか?」
「だ、大丈夫。」
もう、2人ともカッコ良くないですか?
素敵な旦那様2人に手を引かれ、ゆっくりとお城の入り口へ向かった。
ここまで周囲に人がいないのは、既に会場内へ入っているからなのだろうか?
人がいない方が、私は気が楽だが。
「そうだ、アディライト。」
私達の後ろを付いてくるアディライトに視線を向ける。
「はい、ディア様。」
「今日のコクヨウとディオンの2人の衣装、とっても素敵。もちろん、アディライトの衣装もね?」
「ふふ、お褒めに預かり、とても光栄ですわ、ディア様。今日のディア様の衣装に合わせた自信作なのです。」
嬉しそうにアディライトが微笑んだ。
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