第161話 騒がしい朝

涙目を2人へ向ける。



「っっ、絶対、2人の方、が、特別扱いでしょう?」



側から見れば、そうだ。

コクヨウとディオンの2人は、他の皆んなからは私の特別に見えるだろう。

それで皆んなから非難された事はないが、家族の一部を特別扱いするのはダメだ。



「そんな涙目を向けて、ディアは僕達を誘ってるのですか?」

「ディアのご期待に私達も、しっかりと応えなくてはなりませんね。」

「~~~っっ、!?」



・・だから、一体、なぜ、そうなるの?



「ディアの特別になれなくても良いですから、心の中を独占させてください。」

「それぐらいの独占欲は許してくださいますよね、ディア?」

「っっ、」



散々2人に乱された夜。

お願い通り何も考える事なく私は朝を迎えた。



「ディア様?」

「機嫌をお直し下さい。」

「やっ、」



が、不機嫌な私は2人から顔を逸らす。

だって、2人が悪いんだから。

カーシュ公が与えた不安と嫌な事を忘れさせてくれって頼んだのは間違いなく私だよ?

だからって。



「っっ、あんな、意地悪、」



酷いよ。

何度、もう止めてとお願いしただろう。

その度に2人からの愛撫を与えられ、最後には私の方から2人の事が欲しいと強請らされたのだ。

思い出すだけで恥ずかしい。



「もう、しばらくは2人としないッ!」

「「っっ、!?」」



私の言葉に、ぴしりと固まる2人。

動揺を滲ませる。

でも、今回は2人が悪いんだもん。



「っっ、しない、とは、ディア様、どこまでですか?」

「手を繋ぐのは?ディア様を抱き締める事さえダメなのですか!?」

「・・・それ、ぐらい、は、良い、よ。」



ハグまでなら?

まぁ、ギリギリ形容範囲としよう。



「では、キスは?」



コクヨウが切羽詰ったように私に迫る。



「んー、キスもダメ?」

「「っっ、!?」」



酷くショックを受ける2人。

だって、ねぇ?



「2人ともキスだけで終われる?」

「「・・・。」」



あっ、無言。

うん、2人ともキスだけでは無理なんだね。



「だから、キスはダメ。」



許しません。



「っっ、どうしても?」

「お、お許しいただく訳には?」

「昨日の夜に散々、私に意地悪した罰です。しばらく2人は罰を受けて反省してください。」



2人からそっぽを向き、シーツを自分の裸の身体に巻き付ける。



「今回の事をちゃんと反省して、2人とも。」



言い置いて、衝撃に固まる2人の事をベッドの上に放置してお風呂場へ向かった。

私の身体に散る赤い華。



「ーー・・キスだけ、で、私だって終われないじゃない。」



小さく呟き、2人に愛された証に指を這わす。

愛おしい証。



「好き、なんだもん。」



コクヨウとディオンの2人に触れられのは、心地良くて好きだ。

が、意地悪な事をされるのは羞恥心が勝る。

断固として罰を受けてもらう。



「もう、あんな意地悪じゃ無くて、ただ普通に愛してよ。」



2人のバカ。

ふくれっ面でシャワーを浴びる。



「っっ、ディア様!」

「どうか、お許しを!」



自室のお風呂場でシャワーを浴びる私の元へコクヨウとディオンが慌てた表情で駆け込んできたのは、数分後。

今度は私が固まる事になる。



「「ディア様!」」

「っっ、~~~、2人とも早く出てってッ!」



羞恥に叫ぶ私。



「~~~っっ、2人の、バカッ!」



何してんの?

一緒にお風呂に入った事があるからって乱入する?



「・・あ、アディライトッ!」



この場にいないアディライトに助けを求める私。

朝から、カオスです。



「ディア様?リリスさんから来るように言われたのですが?」



アディライトがお風呂場に顔を覗かせる。

ナイスだよ、リリス。

不思議そうな顔をするアディライトの腕の中に涙目になった私は飛び込んだ。



「ディア様!?」

「ふぇ、アディライトっっ、」



助けて、本当。

羞恥で死にそうです。

そんなカオスなやり取りがあったお風呂場。

アディライトとリリスによって、お風呂場から叩き出されたコクヨウとディオンの2人に安心して、私はシャワーを浴びた。



「ーー・・ディア様、それほど不貞腐れなくてもよろしいのでは?」



甲斐甲斐しく私の世話を焼くアディライトが困ったような表情を浮かべる。



「無理。コクヨウとディオンの2人が意地悪なのがいけないんだもん。」



そっぽを向く。

2人が反省するまで放置だ。



「あらあら、2人の絶望する顔が想像できてしまいますね。」

「絶望?」

「ディア様のお側に寄れないのですよ?2人ともしばらくは使い物にならないでしょうね。」



どんだけ落ち込むんだ、2人とも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る