第146話 オリバーの告白
オリバー、辛かったね。
誰にも弱音を吐けず、兄だからと自分の弱さを隠して生きてきたオリバーは偉いよ。
尊敬する。
「大丈夫、全て分かっているから。」
「っっ、」
「もう、私がいるから1人で頑張らなくて良いよ。」
「っっ、」
「ふふ、お兄ちゃん、今日まで良く頑張りました。」
お疲れ様、オリバー。
お兄ちゃん、良く頑張りました。
「これは、頑張ったお兄ちゃんへのご褒美、ね?」
頑張ったオリバーへ、私からの褒美。
静かな部屋の中。
オリバーの寝息が聞こえるまで、私はその髪を撫で続けた。
私の膝枕でオリバーを甘やかした翌日。
「っっ、ディア様、本当に申し訳ありませんでしたッ!」
跪き私に頭を下げるオリバー。
目を覚ました時のオリバーと言ったら、顔を赤くしたと思ったら青くなったりと朝から大忙し。
疲れないのかな?
ころころと変わるオリバーの表情に笑ってしまった。
「ふふ、オリバー、それは何の謝罪よ。」
「そ、それは、ディア様の部屋で寝てしまうなど許されない事なので。」
「あら、私が許した事なのに?」
真面目ね、オリバーは。
全く気にする事はないのに。
「・・でも、お2人は俺の事をお許しにならないのでは?」
「うん?2人?」
オリバーの言う2人って誰の事だ?
私は首を傾げる。
「・・・その、ディア様の一番近くにおられる、コクヨウさんとディオンさんです。」
オリバーの目が彷徨う。
「あのお2人は、ディア様にとって大事な方、何ですよね・・?」
「うん、コクヨウもディオンも私の大事な子だね。ふふ、それにオリバーも、だよ。」
「はい?」
「私、皆んなに順位はつけてない。皆んな私にとって等しく大事な子なの。」
コクヨウとディオンの2人は夫でもあるけれど、私の一番じゃない。
私の一番は、この家の子全員なの。
「えっと、」
「理解が出来ない?」
「・・はい、少し。」
「ふふ、素直だね?私、ね、オリバー、皆んなの事を愛してるの。」
皆んなへ向けるのは愛情と執着。
私だけを見て欲しい。
強く愛して欲しいと願い、渇望する。
「だから、皆んなから愛されたい。私が誰かを一番になんて決めたら、その子からの強い愛しか与えてもらえないでしょう?」
足りないの。
たった1人からの愛情だけでは、私の心は満たされないから。
「でも、こんな最低で傲慢な気持ちを抱えているのが本当の私なの。」
オリバーの頬を撫でる。
「・・オリバー、私の事を幻滅した?」
「え?」
「1人の事を大事にしないで、他の皆んなも等しく愛してるなんて、さ。」
日本でなら、これは浮気だ。
到底、この思いは許される事じゃない。
最低な事だ。
「・・・、いえ、俺の方がディア様に幻滅されるかもしれません。」
「ん?何で?」
私がオリバーを幻滅する?
そんな要素、オリバーには何一つないんだけど。
「嬉しいと思ってしまいました。」
「はい?嬉しい?」
「皆んなを平等に愛するなら、俺にもチャンスはありますよね?ディア様に愛を乞い、触れられるチャンスが俺にもあるって事ですから。」
「え・・?」
私の愛を乞う?
「ーー・・ディア様、俺も貴方の事を欲しいと望んでも、願っても良いですか?」
私をただ見上げるオリバーの瞳。
その瞳の奥に熱が孕む。
「・・それ、は、私が欲しいって言う事?」
「はい。」
「オリバーは私の事が好きなの?」
「そうです、ディア様。」
熱を孕んだ真っ直ぐなオリバーの目が私を見つめる。
私が欲しいと。
「1人にだけ愛を向けられない最低な私を、オリバーは求めてくれるのかしら?」
最低な私。
それでも、私は愛を求めて止まない。
「それが許されるなら。」
ーーー・・目の前の、オリバーからの愛も。
この私の気持ちは、オリバーが求める愛情とは違うものだろう。
そんな綺麗な感情じゃない。
汚くて、歪な執着心。
「・・・ずっと、オリバーは私の側にいてくれる?」
なのに、求めてしまう。
同じ
「ディア様が俺をいらないと思われないなら、ずっと側におります。」
「私を捨てない?」
「俺がディアを捨てる事など、あり得ないでしょうね。逆はあり得そうですが。」
「・・何で私なの?」
この家には素晴らしい子達が揃ってる。
私の最高の家族だから、それは当たり前の事なんだけど。
オリバーが好きになる素晴らしい子がいるはずなのに、私を選ぶと言う。
「別に、オリバーさ私じゃなくても、っっ、」
ーーーー・・良いんじゃない?
私の続くはずだった言葉は、オリバーの手によって阻まれる。
オリバーの手に塞がれる私の口。
「ディア様以外の方は、俺が嫌なんです。」
「ーー、うん。」
直ぐに外されたオリバーの手。
私の口からは、それしか出ることはなかった。
「ご無礼を、お許し下さい、ディア様。俺は、これで失礼します。」
出て行くオリバーを黙って見送る。
「ーー・・っっ、」
そっと自分の口元を手で覆う。
私の口に触れた、オリバーの大きな手。
「あれ・・?」
何だが、ドキドキする。
コクヨウともディオンとも違う、男の人の手の温かさに頬が熱かった。
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