第145話 謝罪とご褒美
楽しい宴で綻ぶ皆んなの表情。
そんな皆んなの表情に私の方まで頬が緩んでしまう。
ほっこりしていれば、皆んなと団欒していたオリバーとクロエ2人が私の方へと来る。
「ソウル様、この様な宴を開いていただき、本当にありがとうございました。心よりソウル様に感謝いたします。」
「私も心からソウル様にお礼申し上げますわ。」
私に頭を下げる2人。
「ふふ、2人とも気にしないで?」
律儀な2人に私は笑う。
「それと、2人とも私の事はディアって呼んで?」
「「っっ、よろしいのですか!?」」
歓喜を滲ませる2人。
「うん、これからはディアで。」
「はい、ディア様!」
「喜んで呼ばせていただきます、ディア様!」
2人が涙ぐむ。
「無礼を働いたと言うのに、お名前を呼ばせていただけるなんて!」
「それも愛称よ、兄さん!」
「あぁ、ディア様に心からお仕えしよう、クロエ!」
「えぇ、兄さん!」
張り切る2人の姿に私の頬が引き攣る。
「・・・その、2人とも、ほどほどに、ね?」
「「はい、お任せください、ディア様!」」
2人が満面の笑みを浮かべて頷いた。
あれれ?
不安になるのは何故なのだろうか。
「ずっと皆んな楽しそうに笑ってたよね。」
色々あった2人の歓迎会。
たくさんの笑顔に溢れていて嬉しかった。
オリバーとクロエの2人の豹変ぶりに多少は引いたものの、皆んなと同じように、私の事をディアと親しげに呼んでもらえるようになったので機嫌も良い。
「ねぇ、アディライト。クロエの事をちゃんと部屋で休ませてくれた?」
その歓迎会も終わり、自分の部屋で寝る前の身支度で私の髪を櫛で梳くアディライトを鏡ごしに見上げる。
「はい、目の負担にならぬ様、クロエには早めに今日は休ませました。念の為、寝る時に暖かいタオルを目に当てる様にクロエへ言ってあります。」
「ありがとう、アディライト。」
気がきく。
さすが、私のアディライト。
万能メイドである。
頬を緩ませていれば部屋のドアをノックする音が。
「ーーーー・・あの、ディア様、寝る前に少しだけお話し、よろしいでしょうか?」
「オリバー?」
オリバーの声に私は驚きに目を瞬かせる。
「ディア様、いかがなさいますか?」
「んー、何か話があるみたいだから、アディライト、オリバーを部屋の中へ入れてあげて?」
「かしこまりました、ディア様。」
アディライトにオリバーの入室の許可を出し、部屋のドアを開けてもらう。
「オリバー、どうしたの?」
部屋の中へ入って来たオリバーへ私は首を傾げる。
何かあったのだろうか?
「あの、その、」
「うん?」
目線を迷わすオリバー。
「あー、アディライト、オリバーと2人にしてくてる?」
「はい。」
頷いたアディライトが私の髪の毛を梳かしていた櫛を片付けてから室内から出て行く。
扉が閉まったと同時にオリバーが床に座った。
「へ?オリバー?」
「ディア様に改めてお礼と謝罪をしに参りました。」
「お礼と謝罪?」
「はい、妹の目を治していただき、本当にありがとうございました。それと、あの時はディア様へ失礼な態度を取りました事、誠に申し訳ありません。」
地面に叩頭くオリバー。
・・・うん、それ、土下座だよね?
「はぁ、オリバー?私は何も怒ってないから顔を上げて?」
「っっ、ですが、」
「もう、私が良いって言ってるんだよ?だから、早く顔を上げてよ、オリバー。」
全部クロエの為だって分かってるんだから、私がオリバーを怒るわけないじゃない?
だから、私にオリバーが謝る必要なんてないのに。
「ね?オリバー、さぁ、頭を上げて?」
「・・・、は、い、」
所在なさげに顔を上げたオリバー。
困った様なオリバーの表情が可愛いと思った。
「ふふ、オリバー、おいで。」
手を差し伸べる。
ふらふらしながら私の側に来たオリバーの手を引き、大きなベッドへと向かう。
「ディア様?」
「うん?」
「あの、どこに行くのですか?」
「ベッドだよ。」
「えっ!?」
驚きに声を上げるオリバーに微笑む。
「ふふ、今日は頑張ったオリバーの事を私が甘やかしてあげる。」
「甘やかす・・?」
ベッドの背もたれに背中を預け、困惑するオリバーの頭を膝の上に乗せる。
「今回は特別。このまま眠って良いから。」
「えっ!?」
私の膝の上で固まるオリバーの頭を撫でた。
自分の大事な妹であるクロエを守る事に人生を捧げてきたオリバー。
なら、オリバーの幸せは?
「っっ、ディア様!?」
「オリバー、もう良いんだよ?」
「え?」
「貴方はずっとクロエの事を守ってきたけど、なら、オリバーは?オリバーの事は一体、誰が守るの?」
頑張って、耐えて。
そんなオリバーを誰が守ってくれるのか。
心がばらばらに壊れてしまう前にオリバーを甘やかしてあげたい。
「もう、オリバーも甘えて良いの。」
「っっ、」
オリバーの身体が震えだす。
「・・、お、れは、」
「うん?」
「・・兄、だから、」
「うん。」
「っっ、だから、クロエの事を俺が守らなくちゃって、思っ、」
私の膝がオリバーが流す涙で濡れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます