第135話 破廉恥な旦那様

滑稽に踊ってもらいましょう。

私の掌の上で。

そして、ディオンにした事を死ぬほど後悔すれば良いのだ。



「っっ、ディア様が私の妻!?」



ディオンが顔を赤らめる。



「うん?ディオンもコクヨウも私の大事な旦那様でしょう?」

「「っっ、ディア様ッ!」」

「わっ、!?」



なぜか幸せそうな表情を浮かべたコクヨウとディオンの2人に抱き付かれる。

・・・あの、2人とも、ここ、まだ人目がある外なんですけど。



「ちょっ、いきなり2人とも一体、何!?」



何があった、2人とも?

ぎゅうぎゅうと私に抱き付くコクヨウとディオンの2人に困惑するしか無かった。



「大好きです、ディア様。」

「へ?急に何、コクヨウ?」

「私も愛してますよ、ディア様。」

「っっ、なっ、ディオンまで!?」



本当に一体、コクヨウとディオンの2人に何があったんだ?



「ーー・・はぁ、本当に無自覚なお方ですわ、ディア様は。」

「「鈍感?」」



アディライト達が呆れたように呟いていた事をコクヨウとディオンに抱き付かれていた私は知らない。

急に抱きつく2人に私はあたふたしていた。

これ、どうすれば良いの?



「っっ、アディライト、フィリア、フィリオ、ちょ、見てないで助けて!」



口は災いの元。

色んな意味で目立ち注目されていた私達は、しまいには生暖かい眼差しを周囲から頂いてしまった。

羞恥から顔から火を噴くかと思ったよ。

どんな羞恥プレイ!?



「っっ、もう、2人とも、街中で抱き付いてくるなんて一体、何を考えているの!?」



あまりのいたたまれなさに、そのまま屋敷に戻って来た私は街中で急に抱き付いてきたコクヨウとディオンの2人を、さっそく自室で叱る事にしたのけれど。



「あれは、ディア様がいけないんですよ?」

「えぇ、コクヨウの言う通りです。」

「まさか2人から責任を押し付けられた!?」



なぜか、2人は私が悪いと言う。

あれ?

これ、私が悪いのか?

思い返してみる。

のだが。



「ねぇ、私、何も悪くなくない?」



私の中に悪い事をした記憶は全く無いのだけど?

全く理不尽である。



「ひ、酷い、2人とも!私、何もしてないよ!?」



だよね?

あの時、私は2人に何かした気はないぞ!?

半泣きで私はコクヨウとディオンの2人の事を睨む。

負けるものか。



「・・ディア様、自覚がなさ過ぎです。」



呆れるコクヨウ。



「まぁ、ディア様のそこも可愛らしいのですけどね。」



しまいには、微笑ましげな眼差しをディオンから向けられる。



「あぁ、それは確かに。」

「っっ、!?」



頷き合う2人に目を剥く。

これは何の羞恥プレイですか・・?

い、居た堪れない。



「か、可愛くなんかないし、」

「ディア様、それが無自覚だと言うのですよ。」

「この世界でディア様以上に可愛らしい方がいらっしゃると?」

「世界規模!?」

「「当たり前です。」」



・・あぁ、はい、即答なのね。

2人の声もぴったり。

て、違う!



「っっ、だって、アディライトだって、フィリアだって可愛いよ!?ロッテマリーだって、ルルーシェルだって、可愛い子はたくさんいるじゃない!?」

「・・心外ですね、ディア様。僕達がディア様以外に可愛らしいと誰かに目移りするとでも?」

「アディライト達は同士で、それ以外の他の者達は眼中にありません。それなのに私達がディア様以外に心を動かされるとお思いで?」

「っっ、!?」



ヤバイ。

顔が熱を持つ。

なんなの、この2人の甘い雰囲気は!?



「・・ディア様は、僕達が他の女性を褒めても良いのですか?」



コクヨウが悲しげな顔をした。

褒める?

コクヨウが、ディオンが他の女性の事を?



「・・・ヤダ、っっ、」


胸が痛い。

他の女性を目に映しちゃ嫌だ。

私だけを見て欲しい。



「2人は私のことだけ見てなくちゃダメなの!」



なんて勝手な言い分だろう。

最低だと頭では分かっているけど、私の口は止まらない。



「なら、僕達が可愛いと思うのも、こうして愛を囁くのも、妻であるディア様だけだと理解してくださいね?」

「可愛い妻を愛でるのも、夫の楽しみなのですよ?」

「・・・妻、夫、」



あぁ、そうか。

私が2人の妻だって無意識に言ってたからコクヨウもディオンも嬉しかったんだ。

何だ、そっか、そうなのか。



「へへ、」



ふにゃりと、頬が緩む。



「ディア様?」

「どうしました?」

「コクヨウとディオンの2人に妻って言われれの恥ずかしいけど、嬉しい、ね?」



無意識に言ってた自分、凄い。

偉くない?



「っっ、本当、貴方って人はッ!」

「私達をこうして乱すのは、ディア様、貴方だけだ。」

「へ?わっ、」



コクヨウの腕に抱き上げられ、寝室へ運ばれる。

あ、あれ?



「っっ、コクヨウ?ディオン・・?」



急にどうした?



「何なの!?ちょ、降ろしてよ!」



コクヨウの腕の中で、抗議しながらジタバタと暴れる。

身の危険を感じるんですけど!?



「僕達を誘ったディア様が悪いんですよ?」

「あんな顔で笑うなんて、反則です。」



コクヨウの腕から降ろされてベッドに沈む私は2人に責められる。

どうして!?



「なっ、誘ってないよ!?」



真っ赤になりながら首を横に振って、否定する。



「ディア様、もう諦めて下さい。」



私の髪を撫でるコクヨウ。



「諦め・・?」

「私達にディア様はただ愛されてくださるだけで良いのです。」



うっそりと、ディオンが微笑む。



「~~~!!」



旦那様、やっぱり破廉恥です。

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