第134話 お礼参りは大事
私の期待に応えようと張り切るのは良いよ?
でも、無理をして私の大事な家族の誰かが大きな怪我をしたりするのは嫌だものね。
「かしこまりました、ディア様。当日は十分に気を付けて指導します。」
「んー、ロッテマリー達が街の外への実戦へ向かう時はアスラとユエの2人に着いて行ってもらおうかな?」
2人が皆んなの側で見守ってくれるなら、私も安心が出来るし。
うん、良い考えかも。
後でアスラとユエの2人にお願いしておこう。
「まぁ、本当ですか?アスラさんとユエさんお2人のお力をお貸しいただけるなら、皆んなの安全は格段に良くなります。」
「うん、お願いしてみるよ。」
「ありがとうございます、ディア様。よろしくお願いいたしますわ。」
ロッテマリーも頬を緩ませる。
「それとディア様、お願いがあるのですが、今の者達の指導が落ち着きましたら、新しい奴隷をご購入頂けませんか?」
「うん、そのつもり。今のこの人数で、この広い屋敷の維持は大変だもんね?」
2人で一部屋を使用しても、まだ余るし。
家族が増えるのは賛成。
「ハビスさんに他の奴隷商も紹介してもらうよ。人数は多い方が良いから。」
「そちらもお願いします、ディア様。では、これで私も皆んなの指導へ戻りますので。」
「報告、ご苦労様。ロッテマリー、皆んなの事をよろしくね?」
「はい、お任せ下さい。」
さすが元貴族と思わせる綺麗な一礼をしたロッテマリーが、私の自室から出て行く。
「アスラ、ユエ?」
ロッテマリーが部屋から出て行った後、私は自分の足元の影に声を掛ける。
そうすれば、するりと私の影の中から滑り出てくる2つの存在。
「2人とも、話は聞いていてくれた?」
「うむ、聞いていた。我ら2人に、あの者達の見守り役を頼みたいのであろう?」
「ディアの大切な者達だ、アスラと共に危険のないように力を尽くそう。」
「ありがとう、2人とも大好き。」
2人の身体に抱き付いて、ふかふかの毛の中に自分の顔を埋める。
「・・はぁ、ふかふかで幸せ。」
新しい家族を屋敷へ迎え、たくさん戯れながらまったりとした日々を過ごした数日。
旅の移動手段の馬車を確保する為に、コクヨウ達を連れて街へと出かける。
馬車を自分で作れ?
いやいや、こんな時こそ迷宮攻略の売却金と魔族討伐で貰った報奨金で余りまくっているお金を使わないとでしょ!
「せっかくの馬車だもん、自分の納得のいく出来にしたい!」
張り切っております。
てな訳で、さっそく馬車を作る為のお店へと向かう。
たどり着いたお店で店員さんにあれこれ馬車への注文を出し、構想を詰めていった。
話し合う事数時間。
「では、これで承ります。」
「お願いします!」
どうにか自分の納得のいく馬車の注文を終え、お店を出る。
お店の人曰く、馬車が出来上がるのにだいたい1ヶ月ぐらい掛かるらしい。
うん、今から出来上がりが楽しみ。
「ディア様、そう言えば馬車を引く馬はどうされるのですか?」
上機嫌で屋敷に戻る私にディオンが問いかけた。
ん?
馬車を引く馬?
馬車とくれば、それを引く馬が必要だ。
もちろん、その事は考えてある。
「ディオン、馬車を引く馬はね?新しく従魔を迎えようと思うの。」
「従魔を?」
「そう、その子に馬車を引いてもらおうと考えているよ。」
色んな国へ行くんだから、馬車を引きせるのは普通の馬より従魔の方が何かと都合が良い。
戦えて走れる従魔である。
膨らむ妄想。
今から馬車を引く凛々しい姿が目に浮かぶ。
「なるほど、馬車を引く馬の代わりを従魔にさせるのですね。で、何の従魔になさるのですか?」
「ふふ、あのね?新しい従魔にするのはペガサスよ。」
憧れない?
空を飛ぶ生き物ってさ。
「・・また、すごいモンスターをディア様は従魔に選びましたね。」
「ん?ディオン、ペガサスってすごいの?」
「ペガサスのモンスターランクはAです。強いと言うより、希少種であるからAランクに指定されていますね。」
ほう、ペガサスが希少種ね。
良い事を聞いた。
もしも、希少種なモンスターが自分の目の前にいたら?
はい、絶対におバカさん達が釣れる!
「希少種のペガサスを馬代わりに馬車を引かせようとするのは、きっと世界中でディア様だけですよ?」
「うふふ、ディオン、希少種だから良いんじゃない。」
ちなみに、この世界のモンスターランクは上からS、A、B、C、D、Eの6段階で危険度を表しているらしい。
リリスからの補足によると危険度、希少種を総合してモンスターランクは冒険者ギルドと王達の協議によって付けられるらしい。
ペガサスは上から2番のランクなんだね。
「ねぇ、ディオンのお父様は、ペガサスを見たら泣いて喜ぶかな?」
「・・いえ、泣いて喜ぶよりも欲しがりますね。間違い無く、あの人なら絶対に。」
「へぇ?」
そうか、間違い無く欲しがるか。
「じゃあ、やっぱりペガサスを新しい従魔にする。」
「・・だと思いました。はぁ、私としてはあまりディア様に厄介事へ関わって欲しくないのですが。」
「うーん、今回は無理。ディオンの妻として、お父様や一族の方達へお礼参りはしないとね?」
にんまりと微笑んだ。
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