第133話 メイド長(仮)

あの後、従魔であるリリス、アスラ、ユエの紹介でひと騒動と言う名の、皆んなから私への好感度がマックス状態に。

私の皆んなからの女神様認定が、確固たるものになりました。



「うぅ、私は神なんかじゃないのに!」



枕に顔を埋める。

何で私が皆んなから女神様認定されて崇拝されるのよ!?

可笑しいでしょう!!?



「良いではないですか?皆んなディア様を敬愛するほど好きだと言う事なんですから。」



笑うコクヨウ。

慰めになってないから。



「不貞腐れてるディア様も、可愛いですね。」

「っっ、」



怒っているのに。

不機嫌になっているのに、そんなこと言い甘い眼差しで私を見つめるコクヨウに怒りも萎んでいく。

狡いよ、コクヨウは。



「そろそろ機嫌を直してください、ディア様。」



恨めしげな目をコクヨウに向けていれば、ベッドの淵に座った苦笑いのディオンが私の髪を撫でる。

此方も狡い。

私が本気で2人の事を怒れないって分かっているんだもの。

溜息を吐き出し、ベッドの上に座り直す。



「機嫌、直りましたか?」

「ん、」

「それは良かったです。」

「ディア様には笑顔が1番似合いますからね。」



こくりと頷いた私に2人が微笑む。

私はこの笑顔に弱い。



「そう言えば、ディア様?どのぐらいこの屋敷にディア様は留まる予定なのですか?」

「うーん、この街でのやる事を全部済ませてからかな?」



ディオンからの問いに、頭の中でこれからやる事をリストアップしていく。

まずは新しい皆んなとの交流を深めながらレベル上げをしていく事が1つ目。

次に商業ギルドで私が持つ彼方の世界の色々なアイディアの権利を売る事が2つ目。

あとは旅と言えば馬車。

なので、他の街へ移動する為の馬車を作る事が3つ目かな?



「うふふ、お隣の国に行く途中にはディオンのお父様がいらっしゃるし、今から楽しみよ。」

「・・私はあの一族にディア様を見せたくはないのですが。」



気乗りしない様なディオンの声。

ディオンに視線を向ければ、その顔はとても不機嫌そうだった。



「ん?何で?」

「人間を見下す様な一族なんですよ?ディア様へ何をしでかすか。」

「・・・へぇ、そんな自分達至上主義なおバカさん達だから、私のディオンにひどい事が出来たんだね?ふふ、今のディオンを見たら、おバカさん達は、一体、どんな顔をしてくれるのかしら?」



今からディオンのお父様と、一族の皆さんに会うのが楽しみだわ。

とても待ち遠しい。

ディオンの父親や、その一族を私が許す?

はい、あり得ません。

そんなおバカ達への優しさなど、ディオンへの扱いを聞いた瞬間に一気に消え失せたに決まっているではないか。

報復一択である。



「ディオン、こちらからお父様達を色々と煽ってみる?楽しい事になるかもよ?」

「あの一族の者達と一切ディア様は話さなくて良いのです。」

「何で?」

「バカがうつるので。」



辛辣なディオン。

ディオンの中に父親や一族に対して一切の慈悲はない模様。

うん、当たり前だよね?

今更、どんなに許しを請うても今のディオンは自分を捨てた父親や一族を省みる事はないだろう。

バッサリ切り捨てそうである。



「ふふ、私達が行くのを楽しみに待っていてくださいね?ディオンのお父様?」



自業自得。

因果応報。

その言葉の意味を、私がじっくりと教えてあげますから。

ディオンのお父様と一族へ会う事を楽しみにした翌日、ロッテマリーをメイド長(仮)に据え、アディライトとリリス2人の監視の元、他の子達の指導に当たらせる。

ルルーシェルはロッテマリーのフォローをする為の手伝い要員だ。

屋敷の采配と皆んなの事は全てロッテマリー達に任せ、私は自室で寛ぐ。



「ディア様、パーティーメンバーの内訳が出来ました。どうぞ、ご確認を。」



自室でまったりと本を読んでいた私。

そんな私の元へロッテマリーが訪れ、恭しく手渡される新しい子達のパーティーメンバーの内訳のリスト。

内容に目を通していく。



「1つのパーティーメンバーの人数は6人。バランスの取れたパーティーメンバーとなる様に4つに振り分けました。」



領主の娘だったからか、皆んなへ采配を振るうのが上手いロッテマリー。

現に仕事も的確である。



「うん、上手くパーティーメンバーを振り分けられているね。ロッテマリー、お疲れ様。」



ロッテマリーによって能力と与えたスキルが均等に生かされるように考慮して振り分けられた6人グループが4つ作られたパーティーメンバー。

文句のない出来である。

ちなみに、ロッテマリーとルルーシェルは他の皆んなとのパーティーメンバーには入っていない。

彼女達は指揮する側なのだ。



「あぁ、勿体無い、お言葉です、ディア様。」



や、め、て、ッ!

ロッテマリーから向けられる、きらきらした瞳が心苦しい。

くっ、苦行だ。



「み、皆んなの様子はどう?」

「はい、今はルルーシェルが皆んなへ一通りの武器の扱いを徹底的に教え込んでおります。私もルルーシェルも、ほとんどの武器を扱えるので指導の方はご安心ください。」

「それは凄い!やっぱり、ロッテマリーとルルーシェルの2人に皆んなの事を任せてよかったよ。」

「恐れ入ります。」



ロッテマリーが軽く頭を下げる。



「皆んなディア様の為に励んでおりますわ。もう数日、武器の扱いや戦い方を教え込んだらディア様からいただいた力を実際に試しに街の外へ実戦しに向かおうかと考えております。」

「そう、皆んな絶対に無理だけはしないようにね?」



釘を刺すことも忘れない。

ロッテマリー達や皆んなに何かあったら嫌だもの。

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