第132話 女神認定

和やかな空気が私達の間に流れる。

フィリアとフィリオの可愛さに、ほっこり私も癒されました。



「ふかふか~。」

「気持ち良いね?」

「このまま、ここで寝れそうだな。」



どうやら他の子達も、こうして私の様にカーペットの上に直接座る事を気に入ってくれた様子。

笑顔が出てくる家族の姿に頬が緩む。

この笑顔を守らなくては。

それに必要な事。



「まず始めにしなくてはいけない事は、皆んなの冒険者登録からかな?皆んなの身分証代わりにもなるし、冒険者として行動するなら冒険者登録は必要よね?」



ゆったりとカーペットの上に座った私はクッションに凭れて首を傾げた。

皆んなの冒険者登録は必須。

何をするにしても身分証は必要だからね。

さっさと皆んなの冒険者登録で身分証を手に入れてしまおう。



「ロッテマリー、ルルーシェル。」

「はい、ディア様。」

「ご用命でしょうか?」

「うん、しばらくして落ち着いたら、私達は他の国へ遊びに行く予定なの。私達が留守の間は、ロッテマリーとルルーシェルの2人にこの家の維持と、他の皆んなの指導をお願いするわ。」



少しだけこの国でゆっくりとした後、他の街へ行こうと思っている私。

その間の私の代わりにこの屋敷の采配と他の子達の指導を任せるなら、ロッテマリーとルルーシェルの2人しかいないだろうと思っている。



「どう?ロッテマリー、ルルーシェル、この役目を引き受けてくれるかしら?」

「わ、私が、その様な大役を!?」

「・・誠に恐れながらディア様、ロッテマリーお嬢様は分かりますが、その様な重要なポストに獣人の私を重用するおつもりなのでしょうか?」



突然の指名に驚く2人。

自分が獣人だからと、ルルーシェルに至っては否定的な声を上げる。



「まず、ルルーシェル、私は獣人だからと言って差別はしない。ここでは全員平等であり、家族なの。」



ルルーシェル以外にも、この場には獣人の子がいる。

私は等しく接する気だ。

種族も境遇も、ここでは関係のない事。

コクヨウとディオンの2人と一線を超えたとは言え、他の皆んなを冷遇する気はゼロである。



「・・家族、ですか?」

「そう、私はこの場にいる皆んな全員が大切。だから、ルルーシェルが獣人だからと言って何も気に病む事はないし、もっと自分の種族に胸を張りなさい。」

「っっ、ディア様ッ!」



ルルーシェルの瞳が熱を孕み潤む。

あれ?

なんか、“さすがは、慈愛の女神”って小さく呟いているのが聞こえるんだけど!?



「やっぱり、ディア様の事を唯一の主人と決めた私に間違いは無かった。」



ロッテマリーもルルーシェルの隣で、私に対して恍惚の表情で同じ様に瞳を潤ませてるし。

・・これ、私への崇拝度が上がるイベントだった?

頬が引き攣る。



「かしこまりました、ディア様のご期待に添えますよう、ルルーシェルと共に誠心誠意、そのご命令を遂行させたっていただます。」

「お任せ下さい、ディア様。」



頭を下げる2人。

いわゆる、土下座である。



「・・・2人とも、お願いだから跪きとか土下座は止めて!?私、それ嫌いなの。」



命令したくないよ?

でも、これだけは慣れないの。



「ご不快、ですか?」

「私達のディア様への曇りない忠誠の証なのですが。」



顔を上げたロッテマリーとルルーシェルが悲しげに眉を下げる。



「2人の顔が見えなくなるのが嫌!後、そうやって家族が頭を下げるのって変でしょう?」

「あぁ、ディア様ッ!」

「本当に、何処まで慈悲深い方なのでしょうか。」



うん、もうダメだ。

何を言ってもうっとりと妄想の世界へ入ってしまう2人に私は肩を落とした。



「ーー・・はぁ、アディライト。」

「はい、ディア様。」

「2人の事を、お願い。」

「かしこまりました、ディア様。2人の事は、このアディライトにお任せ下さい。」



ロッテマリー、ルルーシェル、アディライトに大人しく教育されておくれ。

主に少しでも言動が良くなる様に。

ロッテマリーとルルーシェルの私への可笑しな崇拝は脇へ置いておいて、さくさくと他の子達へのスキルを付与していこう。

スキル付与する人数が多い事だしね?



「「「女神様!!」」」



ーーー・・その結果、全員から女神様認定されました。

解せぬ。

大勢の子達に土下座されている光景は、なかなかシュールなものがある。



「っっ、だから、皆んな、お願いだから土下座は止めよう!?」



本当、今の私の切実な願いだよ。

・・泣いて良いですか?



「ふふ、他の皆さんも、ディア様の素晴らしさを実感されたんですね!」

「その気持ち分かりますものね、ロッテマリーお嬢様!」



自分達の同志を得たとばかりに喜ぶ、ロッテマリーとルルーシェルの2人。

・・うん、2人ともブレないね?

何とか私の説得の甲斐があってか皆んな土下座だけは渋々だけど止めてくれた。

私への崇拝だけは最後まで絶対に無くなりはしなかったけど。

逆に止めないでくださいと懇願される始末。



「つ、疲れた。」



あまりの疲れに、主寝室の自分の大きなベッドへと倒れ込んだ。

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