第128話 信者が増えました

驚く2人の顔を覗き込む。



「ねぇ、ロッテマリー、ルルーシェル。2人は私に買われるのは嫌かしら?」

「っっ、私は、お嬢様が助かるなら、誰に買われても良い。どの様な扱いを私は受けようとも、覚悟はしている。」

「ふふ、ルルーシェルの1番はブレないね。」



お嬢様第一。

家族になってくれたら、ロッテマリーほどでなくても良いけど、ルルーシェルにも私の事も好きになって欲しいな。



「ロッテマリーは?」

「・・ディアレンシア様、でも、私達の事を、買っても、意味が、ない、ですよ?」

「大丈夫、私に買われるのが2人が嫌じゃないのなら、何も心配いらないわ。」



2人に微笑んで、今まで静かに傍観者になっていたハビスさんへ視線を向けた。



「ハビスさん、2人との奴隷契約をお願いします。」

「・・・よろしいのですか?」

「もちろん、だってーー」



何も出来ない?

ロッテマリーが自分を買う意味がないと言うなら、私がぶち壊してみせる。

ーー・・理不尽な現実を。



「私がロッテマリーとルルシェルの2人を助けると、もう決めましたから。」



もう、これから先、私が誰にもロッテマリーとルルシェルの2人の事を傷付けさせない。

例え、ロッテマリーの祖国が相手でも。



「あと、ハビスさん、これから起こる事の他言無用をお約束ください。」

「・・?承知いたしまし、ソウル様の不利益になる様な事は誰にも申し上げないとお約束いたします。」

「ありがとうございます。」



頷き約束してくれるハビスさんへ微笑み、ロッテマリーとルルシェルへと視線を戻す。



「ロッテマリー、ルルシェル、まずは貴方達の傷付いた身体を私が治すよ。だから2人とも、これから先もずっと私の側にいてね?」



2人へと私は魔法を使った。

淡い光が傷付いた2人の身体をゆっくりと包み込む。

私の魔法が2人の身体を癒していく。



「えっ、?」

「っっ、身体が、治った!?」



そのあまりの光景に驚愕を露わにするロッテマリーとルルーシェルの2人。

呆然と自分の身体を見下ろす。



「な、なんと、ソウル様は光魔法の使い手でしたか!」



ハビスさんも驚きの声を上げる。



「どう?欠損部分は全て治ったと思うんだけど、身体で変なところはない?」

「あり、ません。ルルは?」

「わ、私も、です。まさか欠損が治る、なんて奇跡ですよっっ、」

「ルル、そうね、まさに奇跡ね。」



お互いの手を取り合い、ロッテマリーとルルーシェルの2人は大粒の涙を流す。

ーー・・うん、良かった。



「2人とも、しばらくはあまり無理はしちゃダメだよ?失った血は戻ってないから安静にしてる事。」

「「っっ、」」



私の声にハッとした2人は何を思ったのかベットから飛び降りたと思ったら、そのまま跪き頭を下げた。

ーー・・私に向かって。

・・・なぜ、いきなりそうなる。



「・・あの、2人とも?」

「はい、我が女神よ。このロッテマリーに何なりとお申し付けを。」

「女神様、私の数々のご無礼、どうかお許しください。」



自分の顔が盛大に引き攣った。

いや、あのさ?

険悪な間柄になるよりは良いんだけど、いきなり女神様扱いはどうなの?



「落ち着こう!?2人とも少し落ち着いて跪きは止めようね!!?」

「・・・女神様が言うのであれば、従います。」

「・・・女神様の御心のままに。」



ねぇ、なんで!?

土下座を止めさせただけなのに不満そうな顔に見えるのは私だけ?



「2人とも、そんな事をされてもディア様がお困りになるだろう?不満そうな表情は控えなさい。」

「っっ、コクヨウ!」



この私のいたたまれなさを、コクヨウは分かってくれるんだね!!

期待の眼差しをコクヨウへ向ける、が。



「女神呼びは心の内でするのです。ディア様の素晴らしさを、どうでも良い者達に知らしめる必要はありませんからね。」

「コクヨウ!?」



コクヨウ、私が思っていた事と違う!

まさかの裏切り。

私信者であるコクヨウに期待して、信じたのが間違いだったの?



「なるほど。」

「わざわざ無礼者を女神様に引き寄せる必要はないと言う事ですね!」



コクヨウの言葉を聞き、納得とばかりに頷き合うロッテマリーとルルシェルの2人。

ちょ、そこは納得しないで!?



「いや、いや、私は女神様じゃないから!普通にディアって呼んで?」

「っっ、愛称呼び!?」

「なんて慈悲深い方なんでしょうか!?」



・・・愛称呼びを許可しただけで2人の私への好感度が上がる、の!?

ダメだ、もうこれは魔法で治せない。

泣いて良いだろうか?



「・・ハビスさん、2人の奴隷契約の手続きをお願いします。」

「かしこまりました。いや、ソウル様も大変ですなぁ。」



・・・うぅ、ハビスさん。

哀れむような眼差しが胸に痛いです。

私のライフがガリガリと削られていくんですけど!?

なぜか、信者が増えました。

・・・ねぇ、やっぱり泣いても良いだろうか?







のちに、寵愛の女王と呼ばれる少女の側に侍る2人の乙女がいた。

白銀の剣、ロッテマリー。

白銀の盾、ルルーシェル。

周囲の者達に2人がそう呼ばれるのは、もう少し先の話である。

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