第124話 奴隷達との対話
私達の事は商会でも知れ渡っているのか、すぐさま商談の為の部屋へと丁寧に通されて数分でハビスさんが現れる。
「おぉ、これはソウル様。本日はオーヒィンス商会へお越し下さいましてありがとうございます。」
「ハビスさん、お久しぶりですね。」
にこやかに挨拶を交わす。
「お聞きしましたが、最速でSランク冒険者となられたとか。心よりお祝い申し上げます。」
おう、ハビスさんも私がSランクに上がった事を知っているのね。
さすがは商人と言うべきか。
「ありがとうございます、ハビスさん。情報が早いのですね。」
「商人は情報が武器ですから。さて、早速ですが本日は新しい奴隷を購入したいと聞きましたが?」
私の向かいのソファーへ腰を下ろしたハビスさんが話を切り出す。
このままオーヒィンス商会の代表であるハビスさん自ら、私達の対応してくれるみたい。
「はい、私達の拠点となる家を得ましたので新しい奴隷を増やそうかと。」
「左様でございますか。この街に拠点を。」
ハビスさんの瞳が細まる。
「お聞きしたいのですが、今回ソウル様はどの様な奴隷をお求めでしょう?屋敷を得たのであれば、家事の得意な者でしょうか?」
「いいえ、要望は以前と変わりません。冒険者としてやっていっても良い子をお願いします。」
あくまで冒険者になる事は必須。
他の事には頓着はしない。
「今は家事が得意ではなくても、ゆっくりと覚えていってくれれば問題はないです。家事を教える優秀な者がおりますから。」
ハイパー有能メイド、アディライトさんがね。
後輩育成に期待しております。
「ふむ、成る程。」
「それと、1つお願いがあるのですが。」
「お願い?ソウル様が私にお願いとは、どの様な事でしょうか?」
「実はーー」
ハビスさんに、あるお願いをする。
私のお願いを聞いたハビスさんは、驚き、そして楽しそうに笑った。
「ははは、かしこまりました。その様なお願いでしたら何の問題もないのでかまいません。」
「では、お願いしても?」
「えぇ、叶えますとも。お任せ下さい。」
快く私のお願いを受け入れてくれたハビスさんが呼び鈴を鳴らすと、部屋の中へ入って来た若い青年に指示を飛ばす。
それからは以前と同じ。
種族も年齢もバラバラの24人の奴隷達が部屋へ連れられて来た。
ふむ、全員の顔が強張ってるな。
「初めまして、ディアレンシア・ソウルです。」
強張る表情の彼らへ微笑む。
笑顔は人間関係に限らず、物事を円滑にする為に必要だよね?
「「「っっ、」」」
奴隷達の顔が赤く染まる。
ふむ、皆んなの緊張は無くなったかな?
偶にはこの顔も使えるね。
「少し私から皆さんに質問をさせて下さいね?」
あくまで対等に。
奴隷だからと言って、私は彼等を貶めたい訳ではないからね。
前と同様の数個の質問をしながら、彼等の人となりを見極めていく。
「ーー・・最後の質問は、魔族の子達が私の家族にいるんだけど貴方達は仲良く出来るかしら?」
最後の質問。
これが私が1番、重要で聞きたかった事。
「え・・?」
「魔族?」
彼等の顔に困惑が広がる。
「フィリア、フィリオ、コクヨウも『幻影の指輪』を外しなさい。」
「「「はい、ディア様。」」」
私の指示にフィリアとフィリオ、そしてコクヨウの3人がその指に嵌めていた指輪を外す。
その瞬間。
彼らの黒の色彩が露わになった。
「「「ーーっっ、」」」
驚愕に見開かれる、たくさんの瞳たち。
フィリアとフィリオ、そして魔族しか持ち得ない黒の色彩を持つコクヨウを見下し、傷付けるかもしれない存在を自分の内側へいれるつもりはない。
彼等の様子を見つめる。
「この通り2人は魔族の子であり、彼は人間だけど瞳に黒の色彩を持っているの。」
フィリアとフィリオ、コクヨウの3人の指に嵌められた魔道具である幻影の指輪。
魔道具の製作に夢中になった私お手製の中でとてもお気に入りの1つだったりする。
幻影の指輪の効果はこちら。
幻影の指輪
レア度:
機能:破壊不可、所有者制限
製作者:ディアレンシア・ソウル
幻影の指輪
幻影で相手の見ているものの認識を阻害する事が出来る魔道具
認識阻害の為の魔道具だ。
周囲からの煩わしい視線を集める事もないし、隠密や印象操作の際にとても重宝している。
「ひっ、!?」
「っっ、ま、魔族!?」
フィリアとフィリオ、コクヨウの3人の色彩が黒だと知り瞬く間に奴隷達の顔に恐怖の色が宿る。
中には涙を浮かべる者も。
「怖がらせてしまったなら、ごめんなさい。貴方達の魔族への素直な反応が見たかったから、ハビスさんに許可を得て認識阻害させてもらっていました。」
彼等が部屋の中へ入る前に、フィリアとフィリオ、そしてコクヨウの3人に幻影の指輪を嵌めさせたのは私自身。
「私は貴方達に無理強いはしません。どうしても、この子達と一緒にはいたくない、暮らせないと思う方はこの部屋から出て行って下さい。」
言った通り魔族であるフィリアとフィリオ、黒い瞳を持つコクヨウに対する目の前の子達の素直な反応が見たかったからだ。
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