第123話 全員と手を繋ぎましょう

一通り屋敷の中を見て回って満足したので、皆んなを連れて新しくしたい家具や生活に足りない物を買いに街へと向かう。

周りの視線もなんのその。

ご機嫌で大量の買い物を街でしていく。



「ディア様、洋服の生地も見たいのですがよろしいですか?」



あらかた必要なものを買い終わった頃、アディライトが服屋へ行きたいと声を上げる。

どうやら、私の買い物が終わるのを待っていてくれていたみたい。

もちろん、許可を出して一緒に服屋へ。



「この淡い色の生地は、ディア様の白い肌にとても似合いそうですね。」

「アディライト、このディア様に似合いそうなレースも買うべきでは?」

「コクヨウのレースを買うなら、こちらの生地の色の方がディア様には合うだろう。」

「「全部の色、ディア様に似合うの!」」



私そっちのけで、服屋で買う生地やレース、小物を真剣に物色する皆んな。

普通なら奴隷はお金を持たない。

だが、私達は冒険者。

働いた分だけ、皆んなへお金を手渡してる。

ーーーー・・そのお金は、なぜか全員、私の為に使われているのだが。



「・・私、皆んなに貢がれてないか?」



顔が引き攣る。

・・あの、私が皆んなの主人だよね?

なのに、その主人が奴隷達に貢がれるってどうなんだろうか?

甘いデザートは、嬉しいけどね?



「ねぇ、私も混ぜて!?私も、皆んなに似合う服を一緒に選びたい!」



仲間外れは嫌だ。

わいわい楽しげに生地などを物色する皆んなの中へ飛び込む。

たまには、こんな日も良いよね?



「ーーーっっ、今日の売り上げ、過去最高じゃない!?」



嬉しい悲鳴を店員さんが上げた。

この日、ある洋服屋のほとんどの生地や小物類に至るまで、1組の客によって買い占める事になる。

彼女達に自粛の文字はない。



「「「「「ディア様に最高の物を。」」」」」



それが彼女、彼らの共通の合言葉。

全ては、主人の為に。

大量に買った物は、全て私の空間収納の中へ。

手ぶらのまま、皆んなで屋台で買い食いしながら街を回る。

こんな風に誰かと一緒に街を歩き回る事なんて、あちらの世界の私だったら絶対にあり得なかっただろう。



「ーー・・幸せだなぁ。」



何気ない、皆んなとのこの一瞬の日々が何よりの私の幸せ。

・・怖いくらいに。



「僕もです。ディア様との毎日が堪らなく幸福で、幸せを噛み締めてますよ。」

「もう、ディア様の側以外で幸せにはなれないでしょうね。」



微笑むコクヨウとディオンの2人。

私の右手をコクヨウに、左手をディオンにそれぞれ取られる。

それだけで自分の頬がほんのりと染まるのは、2人の事が好きだから。



「あら、私もディア様と手を繋ぎたいです。」

「ディア様と手を繋ぎたい、フィリアも!」

「フィリオも、ディア様と手を繋ぎたい!」



羨ましいそうに私達の繋がれたら手を凝視するアディライト、フィリアとフィリオ。

くすりと、私の口から幸せの笑みが零れ落ちた。



「んー、じゃあ、交代で繋ごうか?」



誰かを特別扱いはしない。

全員が私の特別で、大好きな存在だから。



「ディア様、デザート!」

「ディア様、フルーツも!



私と手を繋ぎご機嫌のフィリアとフィリオが食べたいと可愛いおねだり。

う、可愛い。



「うん、食べよっか?」



そんな姿が可愛かったので、即決で2人が食べたがった物を購入。

あれ、私も皆んなに貢ぐの好きなのかも?

皆んなの事を言えないや。



「まっ、いっか。」



これが私達の日常で幸せなんだから。

他とは比べないの。



「あれ?そう言えば、今日は前ほど周囲から悪口を言われないね?」



私達に向けられる周囲からの好奇の視線は多い。

だけど、それだけ。

魔族であるフィリアとフィリオ、黒い瞳を持つコクヨウへの忌避や、暴言が今日はない。

不思議である。



「それは、Sランクになった私達に暴言や悪意を向けるのは自殺行為と皆んなが知っているからですわ、ディア様。」



私の疑問に答えたのは、アディライト。

同然とばかりに微笑んでいる。



「へ?もう、私達がSランクへ上がった事が街中に知れ渡っているの?」



アディライトの言葉に、私は驚く。



「最速でSランクに上がったので、私達の事は街中とても話題になっているみたいですよ?」

「そうなんだ?」

「ふふ、これでおバカさん達への抑制力になるので良い事です。」



アディライトがブラックな笑みを浮かべた。

なにやら、お怒りの様子。

・・うん、怖いからこれ以上なにも聞かない事にするよ。



「ーー・・さて、ディア様?あらかた街で必要な物は買い終わりましたが、これからどうなさいますか?」

「んー、後は人手かな?あの屋敷の中を綺麗に維持するのに人手が必要だし。」

「では、奴隷商へ?」

「皆んながそれで良ければ奴隷商へ行きたいかな?早く新しい子達に会いたいし。」



新しい出会いに私の胸が期待に高鳴る。

皆んなからの了承を得て、コクヨウを買った奴隷商であるオーヒィンス商会へと向かった。

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