第118話 追求と示す力
迷宮攻略の間の成り行きで魔族を倒したら、なぜだか貴族達から私が脅威扱いされました。
・・・これ、怒って良いかな?
「ふふ、なんだか、とても面白いお話ですね。」
口角は上がっているけれども、全く笑っていない瞳を私はこの国の最高権力者である国王陛下、ミハエル様へと向ける。
吹き荒れるブリザード。
内心では貴族達からの理不尽な言われ様に怒りで腸が煮えくり返っております。
「すまん、ソウル嬢。」
「・・・いえ、私の事はお気になさらず。」
目を伏せる。
・・・チッ、先に謝られてしまった。
高位の、しかも国の最高権力者である国王ミハエル様からの謝罪を受け入れないなど許されない。
とても不本意で癪だけど。
「そして、とても言い難いのだが、一部の者は其方は魔族の手先であり、この国を滅ぼす為に私に近付いているのだと勘ぐっておるのだ。」
「はい?」
私が魔族の手先?
何をトチ狂って、そんなバカげた発想になったんだ?
可笑しいでしょう、その言い分。
「・・あの、国王陛下に近付くも何も、私は呼ばれたからこの場にいるのですが?」
断じて、この場にいるのは私の意思ではない。
拉致られたんですが?
それをどう見たら、私が国王ミハエル様に近付くって発想になるの?
「私が魔族の手先だと、その一部の方々がそう思われた理由とは何なのでしょうか?」
「其方が魔族を倒せたのも、手先だったから。その功績を元に国の内部へと入り込み、内側から崩していく算段なのでは無いかとの主張があったのだ。」
「はぁ、そう、なのですか。」
呆れて言葉も出ない。
魔族を倒せたら国へ仇なす反逆者になるものなのだろうか?
意味が不明だ。
「そもそも、ずっと昔から魔族と人間は敵対しておりますよね?魔族は自分達と敵達している人間である私を手先にするのですか?自分達の手先となる前に、憎いであろう人間の私は魔族の手によってこの世にいないのでは?」
「それすら理解出来ぬのだ。」
疲れたように、国王ミハエル様が小さく溜め息を吐き出した。
国王ミハエル様、色々と苦労しているんですね。
「ご心中お察しいたします。」
「あぁ、有難い。」
私の励ましに力なく国王ミハエル様は微笑む。
はぁ、仕方がない。
この国の国王陛下であり、最高権力者のミハエル様に恩を売っておくのも悪くないよね?
「恐れながら、国王陛下。私はこの国を滅ぼす事など考えておりませんし、魔族の手下などでもございません。」
きっぱり否定。
ありもしない濡れ衣で処刑は勘弁である。
降りかかる火の粉を排除しましょうか。
「と言いますか、私が魔族の手下などになる必要がないと言う方が正しいでしょうか?」
「ほう?その意味を聞いても?」
「もちろんでございます、国王陛下。」
にっこりと微笑む。
教えましょう、私の力の一部を。
「魔族の手下になる必要がないと申しましたのは、そのような事をせずとも私はこの国を簡単に滅ぼす事が出来るからです。」
それを私が望めば、だけどね?
私は自分の国が欲しいと思った事はない。
それなのに、変な言い掛かりを向けるのは本当に止めて欲しいんですけどね!?
ぴしりと凍り付くこの場の空気。
「・・・ソウル嬢、其方は自分が何を言ったか分かっておるのか?」
「はい、もちろんでございます国王陛下。分かっていて、私は事実を告げたまでですが、ご不満でしょうか?」
「っっ、な、なんと不敬な!!」
私と国王ミハエル様との会話に割り込む、元凶の内の一人。
ふむ、貴方が発言の許可もなく王との会話に割り込むのは不敬な事ではないのだろうか?
謎である。
「カーシュ公よ、王の許可もなく会話に割り込むとは其方の方が不遜ではないのか?」
「も、申し訳ございません!」
「まだ王たる私との話が終わっておらぬ。其方は黙っておれ。」
「っっ、し、しかし、」
「黙れ、と、私が申しておるのだ。」
「・・はい。」
出ました、伝家の宝刀、王様のご命令。
殊勝な表情を保ったまま心の中で、もっとやってやれと国王ミハエル様を応援する私。
だって、怒られたのは自分が悪いのに私の事を睨んでくるんだもん。
「ーーー・・カーシュ公だね?」
忘れません、その名前。
私の危険人物リストに載せさせていただきます。
その名前をちゃんと覚えておくから!
(ーーーリリス。)
(ご安心を、ディア様。すぐさま、この場でディア様へ敵意を向けている人間全ての詳しい情報を揃えてみせます。)
あら、何とも頼もしい事。
するりとリリスが私の影から出て行くのを感じながら、国王ミハエル様に向き直る。
「さて、ソウル嬢よ、先ほどの続きだが其方がこの国を簡単に滅ぼす事が出来るとは、どのような意味だ?」
「まずは、皆様からの疑いを晴らす為に私の力をご紹介しとうございます。」
「力?」
「はい、左様です、国王陛下。危険な事ではございませんので許可いただけますでしょうか?」
「・・危険な事では無いのだな?」
「はい、左様です。」
「良かろう、許可する。」
「ありがとうございます、国王陛下。アスラ、ユエ。」
国王ミハエル様からの許可を得てその名を呼べは、私の足元からするりと影が滑り出て来る。
フェンリルと九尾の2匹が。
「っっ、なっ、フェンリルと九尾、だと!?」
国王ミハエル様が驚愕の声を上げる。
私の従魔であるアスラとユエ2人の登場に動揺が室内に広がった。
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