第117話 国王陛下と厄介ごと
目を釣り上げる、ルカリオさん。
あれ?
「・・そう、でしたっけ?」
「はぁ、まぁ、良い。魔族は迷宮内で何を企んでいたのやら。しかし当の魔族がこれでは、何も聞くことは出来んな。」
「すいません。」
「いや、魔族を相手に戦って生き残れるだけでも凄い事なんだ。お前さんが謝る事はない。」
「ありがとうございます。」
うーん、私のスキルならベルゼを生き返らせる事も出来そうだが、止めよう。
ルカリオさんには、申し訳無いが。
「あの、ベルゼは迷宮内でキメラを作っていました。」
「何!?キメラ、だと!!?」
「はい、迷宮内で失踪した冒険者がキメラ製作の犠牲になったかと。」
キメラの遺体も空間収納から取り出しながら、その作るベースとなるのは人間やモンスターだとルカリオさんに告げる。
ルカリオさんの顔が痛ましげに歪む。
「そのキメラで、魔族はルーベルン国を荒らすつもりだったかのか?すぐさま、この話を国王へとご報告しなければ。」
「では、この魔族の遺体もお持ち下さい。ルカリオさんのご報告の信憑性も出る事でしょう。」
「感謝する。この件のお前さんへの褒賞に関しては、国王との話し合いの後になるが、構わないか?」
「それは大丈夫ですよ。なによりも優先されるのは魔族の脅威へ対しての対策でしょうから。褒賞の事に関しては、ゆっくりで構いません。」
お金には困ってないしね?
「あと聞きたんだが、お前さん空間魔法を使えるのか?」
「はい、使えますね。」
素直に頷く。
ここまで私達の存在が注目される事を報告したのだもの。
私が空間収納を使える事もついででしょう。
「・・・本当にお前さんは、どこまで規格外な人間なんだよ。」
呆れるルカリオさん。
私は黙って、にこりと微笑むのだった。
険しい表情になってしまったルカリオさんへ魔族であるベルゼの報告を終えた私達は宿へと戻る。
『お前さんの事についても、国王の耳に入る事になるだろう。』
ーー・・厄介ごとの終わらぬまま。
厄介ごとは、本人である私の意思に関わらずやってくるもんだ。
分かってたさ。
でも、どうしてこうなった!?
「其方が魔族を倒したと言う冒険者のディアレンシア・ソウル嬢か。私はこのルーベルン国の王、ミハエル・ルーベルンと言う。」
何故、一般人の私達が王宮で国王と謁見しているのでしょうか?
今日は宿でまったりする気だった私達。
なのにだよ?
冒険者ギルド長であるルカリオさん本人が私達が泊まっている宿までやって来て、お城まで拉致するってどう言う事ですか!?
「・・ルカリオさん?」
「・・・その、すまん。」
その元凶であるルカリオさんに、じっとりと恨みの眼差し向ければ、すぐさま謝られる。
謝られてもこの恨みは絶対に忘れませんからね、ルカリオさん?
心に決め、国王ミハエル様に向き直った。
「国王陛下、私に発言の許可をいただけますでしょうか?」
内心の動揺を綺麗に隠し、ルーベルン国国王陛下であるミハエル様に向き直った私は優雅さを意識しながら頭を下げる。
私の後ろに控える皆んなの存在が、今日は心強く感じるよ。
「其方の発言を許可しよう。」
「ありがとうございます。お初にお目にかかります、ルーベルン国国王陛下。私はディアレンシア・ソウルと申します。王宮でのマナーなどまるで知らぬ小娘ですので至らぬ事があると思いますが、何卒ご容赦くださいませ。」
意訳:私達は一般人。王宮内のマナーなど知らないから、何かミスしても許してね?
自己申告大事。
マナーも知らない無礼者って、処罰されたくないしね。
何度でも言おう。
私達は一般人で、こうして王宮内にいる事さえあり得ないんです。
「うむ、顔を上げよ。」
国王ミハエル様から許可を得て、下げていた顔を上げた。
周囲を貴族らしき人達に囲まれて、こちらを値踏みするような視線達。
煩わしい視線達にうんざりんなんですけど?
「こうして偉大なる国王陛下へ御目通りが叶い、この上のない光栄でございます。」
本心を笑顔で覆い隠し、国王と対面です。
この非常事態に、現実逃避したい気分でいっぱいである。
切実に帰りたい。
「急にこのような場所へ呼んだのはこちらなのだから、マナーの事も気にせずもっと楽に致せ、ソウル嬢。本日、この場に其方を呼んだのは、色々と討伐した魔族について詳しく話を聞きたいと思ったのだ。」
「と、言いますと?私は冒険者ギルド長であるルカリオさんに、魔族の討伐については全て伝えましたが。」
首を捻る。
他に何を聞きたいと言うのだろうか?
「魔族の事もそうだが、聞きたいのはソウル嬢、其方についてだ。」
「はい?私の事に、ございますか?」
目を瞬かせる。
「ソウル嬢のルーベルン国に来る前の足取りが全く掴めぬ。のう、ソウル嬢。それは、とても気になると思わぬか?」
「・・・。」
・・・なるほど、ね。
この場に呼び出されたのがルカリオさんに魔族討伐の報告してから時間が少し経ってからだったのは、私の事を色々と調べていたからか。
「国王陛下、気になると言われましても私はここから遠く離れた田舎町で生まれた、今はただのしがない冒険者ですよ。それ以上でも、それ以下でもありませんとしか言いようがございません。」
「しかし、そうは言っても納得しない者もおるのだ。魔族を倒した其方の力がこの国の脅威となり得るのでは、と、な。」
「脅威、で、ございますか?」
「其方は魔族を倒し、その野望を退けた。その力が我が国へ向かわぬか心配なのだろうな。」
国王ミハエル様の視線が、その一部の貴族達の方へと向く。
私も国王ミハエル様と同じ方向へと視線を向ければ、こちらを憎々しげな顔で見つめる集団一行様。
ふむ、あそこにいる人達が私の存在が国の脅威だとうるさく騒いだ長本人達ですか。
・・・余計な事を。
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