第5章〜拠点編〜

第116話 ギルド長と魔族の報告

魔族であるベルゼと倒し、ルーベルン国の迷宮攻略の証である魔石を手に入れて宿に帰ってきた私は、甲斐甲斐しく皆んなにどろどろに甘やかされながらお世話をされ、ようやくその重い腰を上げた。

これからやる事はたくさんある。

さっさと嫌な事は終わらせてしまおう。



「うん、頑張れ、自分。」



自分自身を励まし、皆んなを連れて冒険者ギルドへと足を運んだ。



「・・えっ、と、ミュアさん、は、と、」



ミュアさんの姿を探して、私はきょろきょろと賑わうギルド内を見渡す。

まだ早い時間帯のせいなのか、ギルド内に人が多い。



「あっ、ミュアさんいた!」



ミュアさん発見。

ちょうど他の人への対応が終わったらしいミュアさんの元へと近付く。

今日もケモノ耳が素晴らしい。



「あっ、ディア様。」



私に気が付いたミュアさんが笑顔で出迎えてくれる。

ミュアさんみたいな美人なお姉さんの笑顔は、色々と癒されるよね!

ほっこりする。



「お久しぶりですね、ディア様。」

「はい、ミュアさん、お久しぶりです。あの、今日はギルド長に大切なお話があるのですが会えますか?」

「・・ギルド長に大事なお話、ですか?何か訳がおありのようですね、分かりました。ギルド長へお話を通してみますので少しお待ちいただけますか?」

「はい、大丈夫です。お願いします、ミュアさん。」



奥の部屋へと引っ込むミュアさん。

待つ事数分。



「ディア様、奥のギルド長室へどうぞ。」



戻って来たミュアさんの案内でギルド長室へと案内される私達。

ミュアさんが1つの扉の前で立ち止まる。



「ギルド長、ディア様と、そのパーティーメンバーの方々をお連れしました。」

「ーー・・入れ。」



ギルド長と思われる声によって、ミュアさんが目の前の扉を開けた。

そのまま中に通される私達。

ギルド長室の中にいたのは、茶色の髪のどっしりとした体格の男性だった。



「お前さんがミュアが言うディアレンシア・ソウルか?」

「はい、そうです。ますば、本日はお時間を頂きまして、ありがとございます。」

「いや、良い。俺はこのルーベルン国の首都の冒険者ギルド長をしてる、ルカリオだ。まぁ、そこに座れ。」



促され、ソファーへ腰を下ろす。

他の皆んなは、私の後ろで佇む事にしたらしい。




名前:ルカリオ・オルファー

LV41

性別:男

年齢:48

種族:人族

HP:4150/4150

MP:2805/2805

スキル

気配察知、危険察知、身体強化、風魔法、剣術、体術、




ほう、ルカリオさんは、この町で会った誰よりもレベルが高い。

さすがはギルド長と言うべきか。



「で、ミュアが優秀だと褒めるお前さんが、ギルド長である俺に何の用だ?」

「本日は、ルーベルン国のダンジョン内で戦闘になった魔族についてギルド長へご報告に参りました。」



感心しながら、本題を告げた。



「「・・は?」」



私からの報告に、ルカリオさんとミュアさんの2人がその場に固まる。

静まり返る室内。



「・・・今、なんて言った?」



その静けさを破ったのは、ギルド長であるルカリオさんだった。



「魔族と戦闘になりました。」

「・・いつ?」

「4日前です。場所は、迷宮際奥である45階層のボス部屋の中ですね。あっ、あと、ルーベルン国の迷宮は攻略しました。」



ついでだから、迷宮攻略もご報告。

私達のギルドカードをミュアさんに見られたら、迷宮攻略をした事実はすぐに分かってしまう事だしね?



「これが迷宮攻略の証の魔石です。」



魔石を机の上に置く。



「・・そうか、迷宮も攻略したか。」



頭痛がするのか、ルカリオさんが自分のこめかみを揉む。



「一応確認だが、お前さん達が迷宮内で戦ったのは本当に魔族だったのか?お前さん達の見間違いではなく?」

「本当です。あっ、なんなら、ご自身の目で確認されますか?」

「はっ?」

「ちょっと待って下さいね?」



ベルゼの身体を空間収納から出して、驚くルカリオさんの目の前のテーブルの上に横たえる。

この際だから、私の空間収納の事も披露してしまおう。



「っっ、なっ、これは、!?」

「これが、私が迷宮内で戦った魔族のベルゼです。ね、本当に魔族でしょう?」



この世界に例外のコクヨウを除いて、魔族以外で黒髪黒目の色彩を持つ種族は存在しないのだから。

机の上に置かれたベルゼの遺体。

黒髪黒目を持つベルゼは、誰が見ても間違い無く魔族と分かるもの。



「一応、鑑定ができる方を呼んで、確認してもらってくださいね?」

「・・あぁ、」



声を振るわせるルカリオさんが頷く。



「これで、ルカリオさんも私の話を信じていただけますよね?こうして、実際に魔族の遺体が有るんですから。」



これ以上の証拠はないでしょう?

呻きながら、また額を抑え始めるルカリオさん。



「・・まさか魔族を討伐しているとは。」



お疲れの模様。

まぁ、うん、心中お察しします。



「・・・おいッ!」

「はい?」

「お前さんから魔族と戦ったとは聞いたが、倒したとは言ってないだろうが!!?」



ルカリオさんが吠えた。

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