第111話 敗者と勝者
恐怖しろ。
その感情がお前が他者へ与えてきたものだ。
「ベルゼ、理解ができたかしら?この場で獲物として狩られるのは、私じゃなく、貴方の方だって事が。」
敗者と勝者。
私の逆鱗に触れた者を許しはしない。
「この場での敗者はベルゼ、お前で、勝者はこの私。お前が侮っていた卑小な小娘にさえ、お前は負けるのよ。」
魔族だろうが、何だろうが、私にはどうでも良かった。
ただ、私の大切な者に害意を向けなければ、それだけで目の前の魔族はどうでも良い存在となる筈だったのに、ベルゼは私の逆鱗に触れた。
「バカね、自分から破滅の道へ向かって来るなんて。」
愚かとしか言いようがない。
「リリスの配下の子達に貴方が何もしなければ、私達はこの場からいなくなってあげたのに。もしかして、破滅願望でもあったの?」
「っっ、」
「ふふ、ベルゼ、貴方が悪いんだよ?私の大切な子達を害してしまうから。」
うっそりと微笑んだ。
「相手に与える苦痛と恐怖、そして痛みを知らないお前に慈悲は与えない。この世界には貴方よりも強い者がいる事を痛感し、後悔しながら死んで?」
「っっ、」
ベルゼに微笑みを向けながら、じわりじわりと、氷でその身体を固めていく。
思い知れ。
お前が他者へ与えていた苦痛と恐怖、痛みをその身で感じながら。
「くっ、」
苦悶の表情を浮かべるベルゼ。
どうにか抗おうとしているが、無駄な足掻き。
「無駄よ、ベルゼ。どんなに足掻こうとも、その氷は貴方には絶対に溶けない。」
「ぐぐ、おい、この氷を溶かせ!」
「そう言われて、せっかく貴方の事を拘束したのに解く訳ないでしょう?これ以上、貴方に私の大事な子達に刃を向けられても困るもの。」
抗えないように。
私の後ろにいる大切な子達に刃が届かせぬ為にも氷の拘束は解かない。
ベルゼの目の前に立つ。
「ーーー・・ベルゼ、もっと絶望と恐怖を感じて?」
その頬を撫でた。
絶望と恐怖を感じながら、痛みを味わって消えていけ。
見開かれるベルゼに瞳。
「っっ、な、なぜ、お前の様な人間なのに!?」
「なぜ人間である私の魔法が魔族である自分の事を拘束する氷を溶かせないか?それが不思議なの?」
「・・お前は、ただの人間だろう!?なぜ、魔族である私の魔力を凌駕できる!!?」
「ふふ、ベルゼ、それは貴方のレベルが私よりも劣るからよ。」
「・・・は?」
口を開き、惚けるベルゼ。
この世界では、レベルの上がりが高くなるにつれて段々と緩やかになっていく。
長寿の種族でも、それは例外ではない。
しかし、私達のように経験値倍増のスキルがあったとしたら?
「ーー・・ベルゼ、今の私のレベルは108だよ?」
言うまでも無く、何の縛りもなくこの世界の誰よりも早く高レベルにたどり着く事になる。
相手とのレベルの差は、私達の強みだ。
そのレベルの差は、抗いようもない敗北を相手に与える事だろう。
名前:ディアレンシア・ソウル
LV108
性別:女
年齢:16
種族:人族
称号:世界を渡りし者、神に見守られし者、寵愛し者
HP:41005/41005
MP:38240/38240
スキル
言語理解、空間収納、鑑定、経験値倍増、マップ、気配察知、危険察知、隠蔽、状態異常耐性、体力回復上昇、魔力回復上昇、攻撃力上昇、防御力上昇、身体強化、精神耐性、全属性魔法、詠唱破棄、武器作成、思考加速、剣術、体術、転移、従魔召喚、スキル付与、スキル改変、リバイブ、経験値共有、魔道具製作
ユニークスキル
創造魔法
従魔:リリス
従魔:アスラ
従魔:ユエ
装備品:帰還の首飾り
誰にも負けない絶対的な力が欲しかった。
大切なものを、自分のこの手の中から失わない為に。
その為に得た力。
今、ベルゼに対して牙を剥く。
「なっ、!?」
驚愕に見開かれるベルゼの瞳。
「ただの人間であるお前のレベルが108だと!?出鱈目な事を言うな!」
「ふふ、だたら目でも嘘でもないよ?」
「っっ、事実だと、言うのか・・?ただの人間が私よりも・・。」
愕然とするベルゼ。
その顔色が段々と蒼白になっていく。
「あら、ようやく自分の方が窮地だと理解できた?ベルゼ、今の貴方のレベルは76。普通の人間なら太刀打ちができないレベルだけど、うふふ、でも、私には敵わないね?」
にこりと微笑み、ゆっくりとベルゼに毒を流し込む。
思い知れば良い。
自分が誰のものに手を出したのかを。
名前:ベルゼ
LV76
性別:男
年齢:124
種族:魔族
HP:28850/28850
MP:37460/37460
スキル
生活魔法、闇魔法、火魔法、風魔法、結界術、気配察知、状態異常耐性、身体強化
鑑定で見たベルゼのステータスは、私や他の子達よりも、そのレベルが低い。
持っているスキルもそれほど多くもないし。
結界術は、気になるけど。
私達以外のものが相手だったのなら、魔族であるベルゼが勝てていたのだろう。
この場の支配者はベルゼだった。
「どう?理不尽に与えられる恐怖の味は?」
でも、ベルゼは私の下。
今、この場の完全なる支配者は私なのだ。
「ベルゼ、喧嘩を売ってしまった相手が悪かったね?」
この私の敵ではない。
が、
「くっ、私は偉大なる魔王様の為にも、このままお前達にヤられる訳にはいかないのだ!出て来い、お前達!!」
手負いの獣は足掻くもの。
ベルゼの声に反応するように、その足元の闇が揺らめぎ、それが私達の前に姿を表した。
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