第104話 貴方達がいない夜
私との触れ合い禁止令。
フィリアとフィリオの2人が皆んなから言い渡された、それが今回の罰の内容。
そうなると必然的に私もフィリアとフィリオの2人と触れ合えない事に。
「・・その罰、私の方こそ耐えられるかしら?」
あんなにも可愛い2人なのだ。
可愛い2人の事を抱き締めたり、頭を撫でたくなりそう。
「コクヨウ達が私に触れられない事を極端に嫌がる理由が分かった気がするわ。」
痛感する。
愛おしい者を可愛がれない事の苦痛を。
「そりゃ、嫌がる訳ね。」
何よりの罰だわ。
分かっていても、耐えるしかない現状。
だってーー
『ディア様、フィリアとフィリオの2人を甘やかしてはいけませんよ?それでは、2人への罰になりませんから。』
にっこりと微笑む、アディライト。
『ちなみに、ディア様がフィリアとフィリオの2人を甘やかした場合は、数日の間はデザート抜きとなりますので。』
実に、私の事を理解している。
『もしも、ディア様がフィリアとフィリオの2人を甘やかしてしまったら、私は悲しみに新作のデザートを作れなくなってしまうかも知れませんね。』
まさに、脅迫だった。
「ぐぬぬ、可愛いフィリアとフィリオの2人が目の前にいるのに愛でられないなんて、何と言う拷問!」
悲し過ぎるではないか。
自分のベッドの上で、フィリアとフィリオの2人の事を愛でられない現実に1人で苦悶に唸り声を上げる。
「うぅ、でも、アディライトが作る美味しいデザートが食べられなくなるのも辛い!」
究極の2択だ。
「ーーー・・ディア様、どうしました?」
「何かありましたか?」
「・・コクヨウ、ディオン。」
いつの間にか、コクヨウとディオンの2人が寝室に入って来て、私の顔を覗き込む。
縋る様にコクヨウとディオンの2人を見上げる。
「ねぇ、コクヨウ、ディオン。フィリアとフィリオへの罰、無くせない?」
私からのお願いに、コクヨウとディオンの2人が顔を見合わせる。
そして言うのだ。
「ダメですよ、ディア様。」
「2人への罰は、ちゃんと受けなければ意味がありませんからね。」
と。
笑顔なのに、反論は許されなさそうな雰囲気。
「あう。」
がっくりと、私は肩を落とした。
「ふふ、ディア様も愛おしい者に触れられない事の苦痛を知ったのですね。」
「何よりも堪えるでしょう?」
「はい、身に染みて実感させられました。」
涙を飲んで我慢です。
「その内、フィリアとフィリオとの触れ合い禁止令も取れますから、そんなに落ち込まないで、そろそろ寝ましょう、ディア様。」
「さぁ、疲れを明日まで残しては大変ですからね。何も考えず、眠りましょう。」
「うん。」
コクヨウとディオンの2人に慰められながら、私は布団に包まった。
どれぐらい、時間が経ったのか。
「・・ん、」
沈んでいた意識が浮上する。
私が薄っすらと目を開けた先、真っ暗闇の部屋だけが映る。
「・・・コクヨウ?ディオン?」
いつもなら、2人の体温が私の身体を包み込んでいるのに、なぜかいない。
この広いベットの中に、今は私1人だけ。
「・・・2人とも、いない、の?」
誰も私の側にいない。
「ーーー・・また、私は1人ぼっち?」
冷たいシーツに、寝起きでぼんやりする頭で私は身体を震わせた。
「っっ、あっ、やっ、」
怖い。
絶望が私を支配する。
私は1人、その場で絶叫を上げた。
「やだ、嫌だよ、1人は怖い、助けて、」
頭を抱えて、踞る。
やっぱり、罰が下ったの?
幸せに浸ったから?
ーー・・皆んな、悪い子の私の前からいなくなってしまうの?
「っっ、ディア様ッ!?」
乱暴にドアが開けられたと思ったら、私の身体は暖かな温もりに包まれる。
冷えていた身体が、体温を取り戻す。
嗅ぎ慣れた匂いに、蹲ったままだった私は顔を上げた。
「コクヨウ・・?」
私の身体を包み込むのは、やはり思っていた通りコクヨウで。
その顔は悲しげなものだった。
他の皆んなも、同じような顔をしている。
「っっ、お側を離れ、お一人にして申し訳ありません。ディア様、何か怖い夢でもご覧になりましたか?」
「・・っゆ、め・・?」
違う、あれは夢なんかじゃなくて。
「・・っっ、目、が覚めたら、ベットの上に私一人、で、」
「はい、」
「っっ、皆んな、私の前からいなくなったかと思って・・。」
涙が落ちる。
この幸せが崩れ落ちてしまうかもしれない事に怯えない日はない。
だからこそ、コクヨウに、ディオンに、皆んなに愛される日々は私を心底安心させた。
なのにーー
「うぅ、バカ、私の事を一人にしないでよッ!」
私を暗闇に1人残し、恐怖を与えた。
理不尽な怒りだと分かっている。
「っっ、もう、私を不安にさせないでッ!」
また身体を震わせた。
皆んなを責めたい訳じゃないの。
なのに、止まらない。
「ディア様、申し訳ありません。」
「っっ、」
「泣かないで、下さい、ディア様。」
コクヨウの細い指先が、私の頬に流れる涙を優しく拭う。
「ーー・・貴方をそんなにも不安にさせる原因は、一体なんですか?」
「・・・、」
口を噤む。
原因は痛いほど分かっている。
「っっ、私が、生まれてしまった事がいけなかったの。」
私が生まれた事。
それば1番の間違いだったの。
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