第102話 閑話:叱責
アディライトside
ディア様が急にモンスターの前に現れた時は自分の心臓が止まるかと思った。
何故、大人しくなさって下さらないのですか!?
いくらディア様がお強いと言えど、勝手にモンスターの元へ行くなどお控えいただきたい。
だと言うのに。
「はっ、一人で転移してモンスターを仕留めればーーーー」
「ーー・・ディア様?」
また何か企むディア様に、私は笑顔を向ける。
ディア様は自由を好む方だ。
そんなディア様に好きな事をさせてあげたいが、身の危険がある事は止めていただきたい。
「アディライト、私も皆んなと一緒にモンスターと戦いたいの!」
「ーー・・ディア様、迷宮内で大人しくなさってくださるなら、最新のアイスクリームの味を休憩の時にお出ししますよ?」
「えっ!?」
私の提示したアイスクリームと言う餌に食いつくディア様。
「モンスターを倒したいとディア様が我が儘を言うなら、今日は無しですね。せっかく、ディア様に喜んでもらおうと用意したのに残念です。」
「はい、分かりました!もう2度と勝手にモンスターと戦いなんて我が儘は言いません!」
私からのデザートの誘惑で、ディア様はあっさりとご自分の意思を翻した。
・・チョロすぎです、ディア様。
しかし、ここは心を鬼にして厳しくしなくては。
「では、ディア様が誓いを破った場合、これからのデザートを出す事を停止しますからね?」
そう、これはディア様への牽制なのだ。
勝手にご自分1人でモンスターと戦わない為の。
「うっ、分かった。」
デザートの誘惑には勝てないのか、渋々、ディア様が頷いた。
「だから、お願い、アディライト。アイスクリームの新作、食べたいの。」
決して、私の手を握り縋り付くディア様の姿に絆された訳ではない。
もう勝手に動かない事を条件に、休憩時間に最新味のアイスクリームをお出しする事を約束した。
「ありがとう、アディライト。大好き。」
・・くっ、どこまで可愛らしいの、ディア様は。
その後、約束通り休憩の時間に最新味のアイスクリームをディア様にお出しする。
「はぅ、美味しい。」
途端に満面の笑みで幸せそうにアイスクリームを頬張るディア様の姿と言ったら。
「本当にお可愛らしい。」
眼福ものだわ。
そのお姿を、私の中で永久保存してしまいたい。
どの姿も素晴らしいのだけどね。
「ディア様、口元にアイスが付いていますよ?」
「こちらの味はいかがです、ディア様?」
ほら、その証拠に甲斐甲斐しくディア様に寄り添い餌付けするコクヨウとディオンの2人の頬も緩み切っているではないか。
その笑顔を見れるなら、なんでもディア様の言う事を聞いてしまいたくなる。
が、先に、これだけは済ませなければ。
「フィリア、フィリオ?」
2人の事を呼ぶ。
『フィリアとフィリオの2人は悪く無いので、許して上げてください。』
こればかりは、大切なディア様の頼みでも今は聞けない。
今は私達の戦力の底上げが優先。
とは言っても、許されない事がある。
「「っっ、はい。」」
びくつきながら、私の側に来る2人。
私は厳しい眼差しを、そんなフィリアとフィリオの2人に向けた。
「今の私達のレベルは、ディア様より全く劣っているのですよ?なのに、その差をまた開かせるつもりですか?」
私達は、大切なディア様のお荷物になる訳にはいかないのだ。
「ごめんなさいなの。」
「ごめんなさい。」
しょんぼりと、項垂れる2人。
「罰として、2人にはディア様の触れ合いをしばらく禁止します。」
「「!?」」
途端、ファリアとフィリオの2人の顔色が変わる。
「もう、絶対にしないの!」
「だからお願い、許して!」
「ダメです。」
目を潤ませる2人にも、私は厳しい表情を崩さない。
2人がまだ子供だからと言って、私は一切甘やかすつもりはないのだ。
「私がディア様から授かった『直感』スキルが、この先で良くない事が起きると知らせてくれたのを貴方達も知っているはずですよ?」
直感スキル。
それは、これから先の未来で起こるであろう出来事を少しだけ予知するスキル。
このスキルによって、この迷宮の奥で何かが起こる事が予想された。
ディア様への脅威。
それは、私達にとって許される事ではない。
「フィリア、フィリオ?これから貴方達2人の教育を徹底的にしますからね?」
「あうっ。」
「はうっ。」
がっくりと肩を落とす2人。
人間との関わりを避け続けたフィリアとフィリオ達は、圧倒的に教育が足りない。
ビシバシと2人の事を鍛えていかなくては。
「ーー・・それにしても、」
私の直感スキルが反応する、この先に待ち受けるディア様への脅威とは一体、何なのでしょうか?
マップのスキルも、行った事のない場所に何があるかは表示されない。
「何だったら、ディア様に新しく直感よりも上位である未来予知のスキルでもいただこうかしら?」
だが、未来予知のスキルは見たいものを自分で選べないと聞く。
「不便ですわ。」
ひっそりと溜め息を吐き出す。
今は地道にレベルを上げて、この先に起こる脅威へ備えねば。
「全ては、ディア様の為。」
絶対に誰にもディア様の事を指一本傷付けさせません。
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