第101話 私、叱られる

フィリアとフィリオの2人も、私の共犯になってくれるらしい。



「ふふ、じゃあ、他の皆んながモンスターを倒す前に3人でやっちゃおうか?」

「やるの!」

「楽しみ!」



ひっそりと悪巧みする私達3人で笑い合う。

さて、なら私も動きますか。

ちょうど良く私達の方へ向かって来るモンスターがいる事だし、ね。



「フィリアとフィリオ、私の腕に捕まって?転移で一気にモンスターの前へ飛ぶから。」

「「はい、ディア様。」」



フィリアとフィリオの2人が私の腕に触れる。

それを確認した私は、モンスターの前へ一気に転移した。

転移によって一瞬にしてモンスターの前に躍り出た私フィリアとフィリオの3人。



「「「「ディア様!!?」」」



突如現れた私達の姿に皆んなが、一斉に驚きの声を上げる。

が、今の私はモンスターにだけ意識が向いている為、皆んなの声を気にする事はななく、一直線に目の前の敵であるモンスターへと向かって行った。



「ーーー・・どうして、こうなったの?」



結果を言おう。

モンスターは、もちろん瞬殺でした。

・・・とても悲しい事に、フィリアとフィリオの2人の手によって。

あれ?



「うぅ、私もモンスターを倒したかったのにッ!」



私が動くより早く、フィリアとフィリオに2人によって呆気なくモンスターは倒された。

ねぇ、私の出番は?

なぜ皆んな私がモンスターを倒す前に、あっさりと仕留めちゃうの?

がっくりと肩を落とす。



「くっ、まさかの最大の敵は、私の大切な家族達だったなんてッ!」



悔しい。

絶対に今度こそは私もモンスターを倒せると思ったのにな。

その時、良い事を私は閃く。



「はっ、一人で転移してモンスターを仕留めればーーーー」

「ーー・・ディア様?」

「っっ!!?」



芯から冷える、ひやりとした声だった。

私の呟きを遮り、真っ黒な笑顔を浮かべたアディライトの声は。



「・・・あ、アディライト!?」



顔が引き攣る。

・・・なんか、怒ってる?



「うふふ、まさか、ディア様お一人でモンスターと戦うなどと言いませんよね?」



口元は弧を描いているのに、アディライトの目は全く笑っていない。

恐怖である。



「や、アディライト、あの、ね?」

「ディア様?」

「・・えっと、」

「言いませんよね、ディア様?」

「っっ、はい、すいませんでしたッ!」



ダメだ。

今のアディライトをこれ以上怒らせたら、何が起こるか分からない。

目をさ迷わせて誰かに助けを求めようにも、縮こまるフィリアとフィリオ以外の皆んなもアディライトと同じ様な怖い笑顔だし。

私の必死な現実逃避は出来ませんでした。

む、無念。



「フィリアとフィリオの2人に対してのお仕置きは後にするとして、先ずはディア様からですね?」

「ひッ!?」



あっ、これは詰んだよ、私。

身の危険を感じる。

じんわりと、背中に変な汗が伝う。



「・・・あ、あの、アディライト、さん?」

「何でしょう、ディア様?」

「フィリアとフィリオの2人は悪く無いので、許して上げてください。」



反省してる。

でも、フィリアとフィリオの2人は悪く無い。

私が誘ったのが原因だし。



「はぁ、ディア様?あの時のフィリアとフィリオの2人は、ディア様の護衛です。」

「ん?」

「分かりませんか?護衛なら、何よりもディア様の御身を守る事を優先すべきなのですよ?」

「で、でも、私がモンスターと戦いたいって言ったのが原因なんだし、2人の事を許してほしいなって。」



上目遣いでアディライトを見上げる。



「・・えっと、アディライトさん?私の事も許して?」

「・・・。」



上がる、アディライトの眉。

うっ、怖い。

が、ここは主人としてビシッと言わねば。



「アディライト、私も皆んなと一緒にモンスターと戦いたいの!」

「ーー・・ディア様、迷宮内で大人しくなさってくださるなら、最新のアイスクリームの味を休憩の時にお出ししますよ?」

「えっ!?」



・・何、ですと?

最新のアイスクリームの味って言った?



「モンスターを倒したいとディア様が我が儘を言うなら、今日は無しですね。せっかく、ディア様に喜んでもらおうと用意したのに、残念です。」

「はい、分かりました!もう2度と勝手にモンスターと戦いなんて我が儘は言いません!」



モンスターと戦うより、私は美味しいアディライトが作ったデザートの方が大事。

満面の笑みで、私はアディライトに頷いた。



「・・本当ですか?」

「本当!誓って、勝手にモンスターとは戦わない!」



主人の威厳?

そんなもの、アディライトの作るデザートの前では、何の役にも立たないのだ。



「では、ディア様が誓いを破った場合、これからのデザートを出しす事を停止しますからね?」

「うっ、分かった。」



美味しいデザートの為、我慢します。

私も戦いたいけどね。



「だから、お願い、アディライト。アイスクリームの新作、食べたいの。」



アディライトの手を握り縋り付く。



「ーーーっっ、良い、でしょう、ディア様が約束を守るのであれば、お出しします。」

「やった!」



悦びに飛び跳ねる。

最新のアイスクリームの味は、何だろう?

期待に胸を弾ませた。

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