第65話 コクヨウの告白


アスラにスキルを付与していく。

それが、これ。




名前:アスラ

LV1

種族:フェンリル

隷属:ディアレンシア・ソウル

称号:寵愛されし者

HP:1420/1420

MP:1210/1210

スキル

鑑定、経験値倍増、マップ、気配察知、危険察知、状態異常耐性、体力回復上昇、魔力回復上昇、攻撃力上昇、防御力上昇、身体強化、精神耐性、詠唱破棄、思考加速、風魔法、重力魔法、マップ、威嚇、威圧、噛み付き、気配遮断、探知、俊足




「うん、完成!」



出来上がりに私は満足げに微笑む。



「アスラ、新しいスキルはこれから試してみて?他に欲しいスキルが出来たら、その都度に付与するから。」

「承知した。」



ぱたりと、アスラの尻尾が振られる。



「ディアよ。」

「うん?」

「これからは、我を頼るが良い。」

「アスラを?」

「うむ、この貰った新しい力は、友であるディアの為だけに使おう。」

「っっ、アスラ・・。」



やだ、胸がキュンとしたじゃないか。

アスラ、素敵。



「うん、アスラ、ありがとう。凄く頼りにしているね?」



アスラの頭を撫でる。

今日、新しい従魔のアスラが私達の仲間になりました。



「もう、ずいぶん夜も更けた。ディアは寝るが良い。」

「そうだね、お休みアスラ。」



アスラに促されソファーから立つ。

そのまま寝室へ向かった私は、アディライトがシーツを整えてくれたベットでコクヨウと一緒に眠りへと付く。

夢を見ていた。



『ーーーどうして、お前が生きているんだ?』



あの頃の、小さな私とお父さんの夢。

いつも、空腹だった私。

私が食事を与えられるのは、何日もこの空腹を我慢し続けた後。



『ーー・・ほら、ありがたく食え。』



一欠片のパン与えられる。

私を殺さぬ為に。



『っっ、何で、お前は生きているのに、あいつは死ななければならなかった!?』



夢の中のお父さんの言葉が、容赦なく私の胸をえぐる。

分かっていた。

私が全て悪いって事は。



『あいつを殺したお前を、俺は絶対に許さない。幸せになんかするもんかッ!』



お父さんにとても私が恨まれるている事も。

胸が痛い。

苦しくて、悲しくて、この身がバラバラになってしまいそう。



『ごめんなさい、お父さん。』



私なんかが生まれてきてしまって、ごめんなさい。



『お母さん、命を奪ってごめんなさい。』



謝り続ける、小さな頃の私。

もがいて、足掻いて。

・・もう、私は1人では満足に息もできないの。



『っっ、誰か私を助けてッ!』



小さな私が蹲った。

ーー・・このまま、消えてしまいたいよ。

貴方の幸せとは、何?

今、周りを見渡した時、最後に自分の側には何が残っているだろうか。

私にはーー



「ーーーっっ、ディア様!?」

「・・・・コク、ヨウ・・?」



身体を揺すぶられて、沈んでいた意識が浮上する。

うっすらと目を開けた私を、心配そうな表情のコクヨウが見下ろしていた。



「・・・あれ、私・・?」

「・・凄くうなされていました。何か怖い夢でも見ていたのですか?」

「・・何、で?」

「・・・、ディア様が、泣いていらっしゃるから。」

「泣いている?」



恐る恐る、自分の頬に手を添える。

指先が、涙で濡れた。



「っっ、あっ、っっ、はっ、ぁっ、」



お父さんの怨嗟の呪縛は、私の心をまだ強く縛り付ける。

まるで私を許さないと言わんばかりに。

いつまでも、記憶の中のお父さんは私を離さず、支配し続ける。

今も、なお。

私の記憶に強く刻まれた、お父さんからの呪縛。



「ディ、ディア様!?」

「うぅ、」



泣き出す私に、コクヨウが目を見開いたのを視界にしながら涙を零す。

なんで、お父さんは私を離してくれないの?

解放されたい。



「っっ、コクヨウッ!!」



縋るように目の前のコクヨウの胸元を掴む。

楽になりたいよ。

もう、私は疲れたの。



「ーーーっっ、お願い、私をいらなくなったら、その時はコクヨウ達のその手で殺して?」



誰かに置いていかれるのは嫌。

1人は怖い。

期待して、そして裏切られる事に堪えられそうにないよ。



「っっ、なっ、!?」

「お願い、コクヨウッ!」



いらないと捨てるぐらいなら、いっそ、その手で私の息の根を止めて。

これ以上、傷付かない為に。

全てを終わらせてしまえば、もう苦しむ事もないでしょう?



「死ぬなら、貴方達の手でが良い。」



本望だ。

大切な存在の手で死ねるなら。



「っっ、そ、んな、そんな事、絶対にする訳がないでしょうッ!?」



コクヨウの力強い両腕が、私の身体をきつく抱き締める。

痛くて、苦しいのに安心する私。



「絶対、離しません。」

「っっ、コク、ヨウ・・。」



暖かくて、私を包み込むコクヨウの腕の中で静かに涙を流す。



「ーーー・・好き、です、ディア様の事が。」

「っっ、」



コクヨウの言葉に目を見開いた私は、身体を震わせた。



「っっ、な、に・・?」



コクヨウの腕の中から、顔を上げる。

好き?

コクヨウが、私を?

・・あぁ、そうか、敬愛の方の好きか。



「ディア様、言っておきますが貴方への思いは敬愛の方の好きではありませんよ?」

「!?」

「思っている事が、全て顔に出てますよ、ディア様。」



な、何と!

自分の頬を手で覆う。

余りの驚きに、涙も引っ込んでしまった。



「ーー・・恋愛対象として、ディア様、僕は貴方の事が好きなんです。」



コクヨウに取られる私の手。

そして、コクヨウから手の甲に口付けを受けた。



「っ、え・・?」



呆然とする。

こんな私の事を、好きだと言ったの?

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