第64話 悪意で流します

カウンターに置かれる、私達を襲ってきた人達のギルドカード。

私達を襲ってきた全員が冒険者ギルドに所属し、魔族狩りでお金を稼いでいた人達だ。



「「「「なっ、!!?」」」」

「まさか、冒険者が犯罪に走ったのか!?」

「・・ギルドカードに犯罪履歴が残っているなら間違いなくそうだろ。」

「いや、しかし、彼女達は何で狙われたんだ?」



ギルド内が騒めく。

どうやら、私達の話を聞いていたらし。

驚くよね?

冒険者のギルドカードさえあれば、身分証となり街や他国へ行っても犯罪履歴のオーブに触れる事はないから、犯罪者となってもバレる確率は低くなるんだもの。

同じ冒険者達にとって、私とコクヨウが倒した彼らは普通に同業者だったに違いない。



「あっ、ミュアさん、そのギルドカードの持ち主達が私達を襲った理由は、フィリアとフィリオが魔族だから傷付けようとしたみたいですよ?」



これは、リリスの情報。

静かに怒り狂ったリリスが倒した男達の身元を短時間で探り出した。

間違いなく彼等は魔族狩りの一味。



「もしくは、フィリアとフィリオを捕まえて、自分達の奴隷にしようとしたのかもしれません。」



だから、ギルド内の全員に聞こえるよう大きな声で男達の追加情報を。

告げ口するのは、完全に悪意です。



「・・冒険者が全員そうだと思いませんが、ミュアさん、私、少し怖いです。」



まつげを伏せる。

騙すようで、ミュアさんには申し訳ない。

が、皆んなの安全の為。

私の背後でも、ざわざわと冒険者達が騒めく。



「ーー・・もしかして、あの子達は魔族だから襲われたのか?」

「でも、あの子達は魔族でも他人の奴隷だろ?他人の奴隷を傷付ける様な行為は犯罪になるぞ?」

「・・・かわいそうに。」



集まる同情の眼差し。

うん、これ以上のお馬鹿さんが出ないように皆さんが抑制力になってね?

私とコクヨウが倒した男達のギルドカードを全てミュアさんに預け、そのまま冒険者ギルドを出た私達は宿へと戻ってきた。



「はぁ、さっぱりしたぁ。」



さっぱりする為にお風呂に入り、上がった私はリビングのソファーで寛ぐ。



「ふふ、魔法って、本当に便利よね」



風魔法で、ドライヤー代わりに簡単に髪が乾かせるんだから。

魔法で簡単に乾いた髪に指を通す。

こちらの世界に電気製品が無くても、大抵の事は魔法で代用ができてしまう。

嬉しい事だ。



「・・・ミュアさんに、なんか悪い事をしちゃったなぁ。」



仕事を増やしちゃったし。

今度、ミュアさんにアディライト特製のおやつでも差し入れしようかな?

うん、良い考えかも。

きっとミュアさんも喜んでくれる事だろう。



「ディア様、お風呂上がりに冷たいお水でもいかがですか?」

「わぁ、嬉しい。ありがとう、アディライト。」



自分の髪から手を離し、アディライトから差し出された水の入ったコップを受け取る。

中身を口に含めば、潤う喉。



「あぁ、冷たい水が美味しい。生き返る。」



一息つけた気分。



「ディア様、今日は直ぐに休まれますか?」

「うーん、寝たい、けど、その前にアスラの強化をしたいかな?」

「かしこまりました。アスラ様の強化をされている間にディア様のベットを整いておきますね?」

「うん、よろしく!」



私から空のコップを受け取ったアディライトは、そのまま寝室の方へと消える。

ベットのシーツを整えているんだろう。

最初は止めたが、本人が嬉しそうにやっているので、途中から諦めた。

今は好きにさせている。



「さて、その間に私はアスラの強化をしてしまいますか。アスラ、良いかな?」



私の足元の側が自分の定位置とばかりにその場に寝そべるアスラを見下ろせば、ゆっくりとその顔が上を向いた。

私を見上げるアスラ。



「うむ、それは良いが、ディアよ、その強化とは一体何だ?」

「それはね?」



アスラに私が持つスキル付与の事を伝える。

私の持つ恩恵は、特殊だしね。



「ほう、ディアはユニークスキルの持ち主なのか。なるほどな。」

「秘密ね?」

「承知した。で、ディアはそのスキルを使って我の強化をしようと言うのだな?」

「うん、良いかな?」

「無論だ。もっと強くなれると言うのなら、我に異存はない。」



アスラの尻尾が振られる。



「了解。まず、アスラのステータスを最初に見させてもらうね?」



了承をアスラからもらい、ステータスを見させてもらう。

どれどれ。




名前:アスラ

LV1

種族:フェンリル

隷属:ディアレンシア・ソウル

HP:1420/1420

MP:1210/1210



「・・おぉ、」



思ってた通りやっぱりアスラのステータスは凄い。

これは、かなり私達の強力な戦力になる。

さすがは、伝説のフェンリル。



「ねぇ、アスラ?」

「何だ?」

「アスラはどんなスキルが欲しいとか何か要望はある?」

「ふむ、要望、か。そうだな、もう少し素早さを上げたい。」



ほう、素早さを、ね。

ならーーー



鑑定、経験値倍増、マップ、気配察知、危険察知、状態異常耐性、体力回復上昇、魔力回復上昇、攻撃力上昇、防御力上昇、身体強化、精神耐性、詠唱破棄、思考加速、風魔法、重力魔法、マップ、威嚇、威圧、噛み付き、気配遮断、探知、俊足



が、アスラへ付与する候補かな?



「アスラ、私が思い付いた強化候補一覧を伝えるね?」



後はアスラ本人の意思をちゃんと確認してから、スキルの付与だね。

私が思い付いた候補一覧をアスラに伝える。

たらーーー



「うむ、それで異存はないぞ。」



との、お返事。

スキルの候補が決まったから、さっそくアスラに付与していこう。

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