第34話 閑話:フィリア・フィリオの過去
フィリアside
私と弟のフィリオの両親は純血の魔族で、2人の血を引く子供の私も当然、魔族の特徴である黒を受け継いで生まれた。
そして、双子の弟も。
魔族である事実を、嫌だと思った事はなかったが、周りは私達の存在を認めない。
だから、家族4人は人里離れた山奥でひっそりと暮らしてた。
ずっと、私達の両親が死ぬ、その時まではーーー
『・・・ごめんね、フィリア、フィリオ。』
『お前達を、苦しめてしまう。』
私達の両親は、魔族でありながら戦いを好まない温厚な性格の人達だった。
穏やかで、とても優しくて。
大好きな両親。
『愛してるわ、フィリア、フィリオ。』
『私達の宝物。』
私達を愛おしげに抱き締めてくれる2人の温もりが好きだった。
その両親の温厚で優しい性格のせいで、同じ魔族の仲間達とも、また人間とも暮せない事を2人は私達によく謝っていたね。
ーーーーでも、そんな優しい両親も、もう、いない。
「ひひ、魔族の子供を捕まえられるなんて運がいい。この子供達を売れば大金が手に入るからな。」
子供である私達が暮らしていけるはずもなく。
食料を手に入れようと森の中を散策している時に運悪く捕まってしまった。
そのまま私達は売られる事となる。
・・・奴隷として。
「明日、この街のオークションが開かれる。そこに、私は君達を商品として出品するつもりだ。」
両親を失った幼い私達は奴隷商にあっさり捕まり、色々な所を転々としながら巡り巡ってオーヒィンス商会に留まる事になる。
そこで数年過ごし、私達双子が12才になった年だった。
私達の行き先が決まるオークションへ、いよいよ商品として出品される事になったのは。
「ーーーー・・フィリオ、貴方の事は私が絶対に守るから。」
だって、私はお姉ちゃんだから。
自分の半身でもある弟のフィリオの事を、何があっても絶対に守ってみせる。
傍のフィリオの手を強く握りしめた。
「こんにちは、私の名前はディアって言うの。貴方達のお名前は?」
そこで、私達は出会う。
ーーーーディア様、貴方に。
「ほう、魔族の奴隷か。楽しみがいがありそうだ。」
集まる醜悪な視線。
この先の未来に絶望と諦め、弟を守ると言う再度の決意を固めた私の前に、貴方は現れた。
「そう、分かった。私が必ず2人を買うわ。待っていてね?」
優しい声だった。
今はいない、私達の両親のような優しい眼差しをした人。
何でだろう?
目の前のこの人は、私やフィリオを見ても険悪の表情をしない。
私達は人に憎まれる魔族なのに。
「・・・待っている。」
あの優しい声の持ち主である貴方を。
ずっと、フィリオと共に。
弟を抱き締めた。
フィリオside
まだ色あせない優しい記憶。
幸せだった日々。
『大好きな、私達のフィリア、フィリオ。』
『俺達の、大切な子供。』
今も、蘇る。
両親の優しい声が。
ーーーーもう、2度と聞けない両親の声、得る事のできない腕の温もり。
・・それだけが悲しい。
『愛してるわ、フィリア、フィリオ。』
『私達の宝物。』
そう言って、抱き締めてくれる腕も。
2人の両親の温もりも、あの日、永遠に失われた。
もう二度と、あの日々に戻れない。
「明日、この街のオークションが開かれる。そこに、私は君達を商品として出品するつもりだ。」
ーーーー来た。
僕達がこのオーヒィンス商会に来て数年。
ついに、僕達の未来が決まる、この時が来たんだ。
「・・・フィリオ。」
「・ん、」
「ーーーー・・フィリオ、貴方は私が絶対に守るから。」
姉のフィリアと手を繋ぐ。
何があっても、姉のこの手だけは離さないと固く誓って。
「・・・ねぇ、フィリオ。」
「うん?」
「明日、私達を買う人は、どんな人かな?」
「・・分からない。」
姉のフィリアと2人、寄り添う。
明日への不安を、2人で分かち合うかのように。
いつも、そうだった。
孤独も、不安も、全てを2人で分かち合って生きて行く。
ずっと、これからも。
「・・優しい人が良いわね。」
「・・・うん。」
フィリアに頷きながら、それは無理だろうと心の中では思っている。
だって、僕達魔族は他の種族から嫌われているから。
それでも願う。
「ーーーー・・フィリアが、幸せになれれば僕はそれで良いよ。」
片割れの幸せを。
ずっと、僕を守ろうと頑張ってくれようとしているフィリアが笑えれば僕は嬉しいんだ。
「こんにちは、私の名前はディアって言うの。貴方達のお名前は?」
僕達の前に突然現れた、ディア様。
ーーーー優しい女神。
「そう、分かった。私が必ず2人を買うわ。待っていてね?」
魔族である僕達に優しく笑いかけてくれた貴方。
待とう。
フィリアと共に。
怯える心を隠し、大切な姉と抱き締め合った。
名前:フィリア
LV2
性別:女
年齢:12
種族:魔族
HP:580/580
MP:1120/1120
スキル
生活魔法、気配察知、危険察知、水魔法
名前:フィリオ
LV2
性別:男
年齢:12
種族:魔族
HP:585/585
MP:1130/1130
スキル
生活魔法、気配察知、危険察知、風魔法
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