第33話 魔族の奴隷

絵画、骨董品、武器、奴隷。

オークション会場内はブースごとに分けられて展示、あるいは商品である奴隷達が椅子に座らせられ、お客の購入意欲を高める様にされているのだとか。

その中で私の目的は、もちろん奴隷のブース。

絵画や骨董品は一先ずスルーし、新しい武器作成の参考の為に武器類を一通り見た後は、そのまま奴隷のブースへと向かう。



「ふふ、まぁ、色んな武器を見られたのは楽しかったけどね。」



こうして実際に武器を見るのは、これから先、自分が作る時に役立つからだ。

アイディア集めです。

今回のオークションに出品された武器達は、とても参考になりました。



「ディア様が嬉しそうで、僕も嬉しいです。」

「ふふ、今日もコクヨウは可愛いね。」



ご機嫌な私に嬉しそうなコクヨウに癒されながらたどり着く、奴隷のいるブース。

私の目的の場所である。



「さて、私のお目当ての子達はどこにいるのかな?」



さっそくブースの中へと入っていく。



「ーーー・・おや、ソウル様ではありませんか。」



・・・たら、さっそくハビスさんとかち合う事になった。

うん、確かに、ね?

マップ上でハビスさんが会場内にいるのは事前に知っていたから、必ず会う事になると分かってたけど、こんなに早くですか。



「・・・えぇ、久しぶりですね、ハビスさん。」

「ソウル様はお変わりなく、お元気そうで安心いたしました。」



笑いながら、ハビスさんはコクヨウへと視線を向ける。



「コクヨウも、あの頃より表情がとても柔らかくなりましたね。良い主人に出会えた様で、なりよりです。」

「・・はい、お久しぶりです、ハビスさん。ディア様には良くしていただいており、巡り会えた事にとても感謝しています。」



話して良いかと伺う様な眼差しに笑って頷けば、コクヨウがハビスさんに対して軽く頭を下げて感謝を述べる。

うん、良い子。

こうやって気遣いが出来て、私を立てる事を怠らない。

どう、私のコクヨウは、可愛くて素直で良く出来た子でしょ?

ドヤ顔をしたいが、グッと我慢。



「おや、おや、コクヨウに惚気られてしまいましたか。これは参りましたねぇ。」



参ったと言いながら、ハビスさんのその口元は緩み、嬉しそうで。



「ーーーー・・本当、あの日にソウル様とコクヨウを合わせて良かった。そう、今日の2人のお姿を見て強く思いましたよ。」



・・・強く、私に印象を残した。



「さて、ソウル様。本日このオークション会場へわざわざ来られたのは、例の魔族をお求めだからですか?」

「そのつもりです。ハビスさんも、その為に、コクヨウに魔族の話を聞かせていたオークションへの招待状を、私にくださったんでしょう?」



ハビスさんへ、私は咎めるような眼差しを向ける。



「ふふ、一体、何の事でしょうか?」



首を傾げ、とぼけるハビスさん。

はぁ、この狸。

呆れの眼差しを向ける。



「さすが、やりての商人ですね、ハビスさんは。」

「お褒めに預かり、誠に光栄です。」



にこりと、ハビスさんは笑う。



「褒めてません。今のはハビスさんへ私なりの、ただの嫌味です。」



唇を尖らせる。



「まぁ、まぁ、そう気を荒立てないで下さい、ソウル様。」

「・・・一体、誰のせいですか。」

「ふふ、すみません。それでは、お会い下さい、ーーーー」



ハビスさんが招き入れた部屋の中。



「あの子達が、今回、私どもがオークションに出展する双子の奴隷達です。」



ーーーー・・が寄り添う様に、椅子に静かに座っていた。

それは、遡る事2週間前の話。



『それと、ディア様。魔族の奴隷について、ですが。』

『うん?』

『実はーーーー』



それは、リリスから聞かされた事。

それはーーー



『ーーーその奴隷は、双子なのです。』



それが、リリスからの報告で知った魔族の奴隷の情報だった。

魔族だけでも貴重なのに、双子。

私の中の双子への関心も、リリスからの報告で格段に跳ね上がった。



「ソウル様、彼らが姉のフィリアと、弟のフィリオの姉弟です。見ての通り、紛れも無い魔族の血統を持った、双子の奴隷ですよ。」



魔族の血統の双子。

私は目の前の双子にさっそく鑑定を行う。





名前:フィリア

LV2

性別:女

年齢:12

種族:魔族

HP:580/580

MP:1120/1120

スキル

生活魔法、気配察知、危険察知、水魔法





名前:フィリオ

LV2

性別:男

年齢:12

種族:魔族

HP:585/585

MP:1130/1130

スキル

生活魔法、気配察知、危険察知、風魔法





おお、なかなかのステータスだ。

やはり、彼等に流れる魔族の血のおかげか、レベルの低さに比べてHPとMPが高い。

それに、水魔法と風魔法をそれぞれ覚えているし。

うん、やっぱり2人は買いだな。



「いかがてしょうか、ソウル様。この子達は、ソウル様に気に入っていただけましたでしょうか?」

「えぇ、私は2人の事をとても気に入りました。今日の彼等の競りに是非とも、私も参加したいと思います。」



こんな逸材、買わない訳がない。

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