第2.6話

 ボスはボス部屋といわれるボスモンスター専用のフロアにいることが多い。同じモンスターでもレベルの差やモンスターの状態によって強さが変わる。

 例として、ゴブリン王 レベル63 怒り状態などがあげられる。


「さぁ、開けるぞ」

「もっちろん!どんどんいっちゃって!」

 最後のフロアの扉が開けられた。そこは東京ドーム1個と半分くらいの広さのひらけた場所だった。

「ボスモンスターはどこにいるんだ?」

 そう言ってどんどん真ん中のほうへ進んでいくソウシ。

「ソウシ!危ない!」

 スミレが叫ぶと、上から龍がソウシに向かって突進してきた。

「うわぁあああ!あっぶねぇ!」

 なんとか突進を回避したソウシだが、少しダメージをくらってしまった。

「あれは、青龍 アズゥドラゴン!レベル55 怒り状態だ。攻撃力上昇のバフがかかってるからダメージには気をつけて!」

「おーけー!俺が気をひいてるからKLに攻撃は任せるぞ!」

 なにも言わず、わかっていたかのように弓をとり矢を構えているKLとすぐさま盾を装備するソウシ、後衛からの攻撃、指示をするスミレ。この編成に分かれるまでわずか5秒もかからなかった。スミレの影に隠れる2人の男はこれがプロというやつかと感動した。

 フロア全体に轟く金属音と共にすぐさま矢が突き刺さり悲鳴をあげるボス。その隙を逃さないように水魔法を放つスミレ。

 そしてボスのHPあと2割程度になったとき、

「即死攻撃くるよ!ソウシ、KLを守って!」

「あいあいさー!こっち向きやがれ!ガーディアンフィールド!」

 ビビりながらスミレの影に隠れていた男が聞いてきた。

「ガーディアンフィールドってどんな技なんですか?」

「あれはねぇ、特定の範囲にいるモンスターのヘイトを集めて、少しの時間どんな攻撃も無効化するスキルだよ。ウォリアーには必須スキルだね」

 そんなことを話していると、ボスは攻撃モーションにはいり、KLはソウシの後ろにまわりソウシに攻撃を防いでもらおうとする。とても連携のとれた動きだ。

 だがソウシは弾き飛ばされた。なんとガーディアンフィールドの攻撃無効時間を越えた継続ダメージを与えられていたのだ。ノックバックが激しく、ソウシはフロアの壁まで吹き飛ばされ、身動きがとれないほどにダメージをくらった。

 だが、どんなことがあろうと自分自身の仕事は全うしなければならない。KLはなんとかボスの攻撃を避けながら矢を何度も撃ち込んだ。スミレはソウシの回復を優先、KLのフォローをしていた。

「やばい、即死くるよ!KL避けて!」

 KLは矢を使い攻撃を反らそうとした。その時だった、もう矢が切れてしまっていた。

「だめだ、この攻撃をくらえば…」

 小さな、それでいて悔しさのこもった声がした。目の前が真っ暗になったと思ったら、まだ回復の不十分なソウシが目の前に立っていた。ガーディアンフィールドを使い、すぐさまスミレが持続回復スキルと超回復スキル、防御力アップのバフをかけてなんとか耐えしのいだ。

「矢がなくなってるぜ、さっさっと調合しな」

 その言葉を聞きKLは懐かしいシルエットを思い浮かべていた。

「弓持つものは矢を切らさず。この前も教えただろ?」

「そうだよな、、、少しだけ時間をくれ3秒あれば十分だ。」

 矢の材料を全て使い、矢を999999本用意した。

「さぁ、、、リスタートだ。」

 キラリと光る赤い目と、ニッと笑みを浮かべる顔はまさに狂人だ。けれどもどこか優しさが隠れていた。

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