第5話 家族の気遣いと必然の運命

 お父さんとお母さんにご挨拶してそうくんを後にした。お店を閉めた後にも関わらず蒼くんのお父さんはわざわざ餡団子あんだんごをたくさん焼いて持たせてくれた。


「おかえり!」

「デートどうだった?」

「相手の男の子はどんな子なの? 格好良いの?」

 家に帰ると家族がやけに明るく接してくる。

 相手の子? あれ? 私お見合い収録した時に相手の事を話してなかったんだっけ?

「今日のデートの相手、私言ってなかったっけ?」

「聞いてない……よ……ねぇ?」

「『決まった。二週間後にデートの収録してくる』って聞いただけ。何かあなた思いつめたような顔しちゃってそれ以上聞けなかったし」

 母の愛里沙ありさが神妙な顔で言う。

 それ思いつめてたんじゃなくて運命感じて感極まってただけなんですけど。

「あー! 餡団子だ!」

 私が手に持っていた餡団子の包み紙を見つけて小五の香織かおりが叫ぶ。

「あんた精餡堂せいあんどうに行ってきたの?」

「あっ、うん。寄って来た」

「まさかとは思うけど蒼くんにお別れなんてしてないでしょうね?」

「ん? 別れ? ん?」

 言ってることがよく分からず悩んでいると母が言う。

「だって『偶然の出逢いが二回あれば必然の出逢いだ』って言ってたじゃない。裏返せば『偶然の出逢いが二回なければ必然じゃない』ってことでしょ?」

「偶然の出逢いだったよ。しかもよくよく話をしてみると今回が四回目の出会いだった」

「何それ?」

「今日デートしてきた相手は蒼くんだよ」

「「「えーーー」」」

「あんた、蒼くんとデートだったの? お見合い相手ってもしかして蒼くんだったの?」

「あっ、うん、そう。スタッフが選んだお見合い候補十四人の中に偶然にも蒼くんがいたのよ」

「それであなたは問答無用で蒼くんを選んで、今日は仲良く二人でデートを楽しんで帰りに精餡堂に寄って餡団子を買って帰ってきたっていうわけ?」

「これはお父さんがお店閉めた後にわざわざ焼いて持たせてくれた。お父さんの奢り」

 家族の間に不穏な空気が流れる。頼むから睨むのはやめて欲しい。

「で、蒼くんとはこれからどうするの?」

「お付き合いする事にした。お父さんとお母さんにも『お付き合いさせていただくことになりました』ってご挨拶もしてきた」

「もう付き合うことにしたの?」

「うん。蒼くんが今日の帰りに改めて告白してくれてお互いの気持ちを確認できたし」

 笑顔でそう答えると、「今さら確認もいらないよねー」とか「三年前からお互い好き同士なんでしょ?」とか批判的な会話が聞こえてくるが気にしない。

「私たちは今日一体何やってたんだ?」

 鷹西際さんが頭を抱える。

「『お見合い相手に蒼くんがいました。蒼くんを選びました』って早く言いなさいよ」

「言ってなかったっけ? 言った気になってた」

「で、ウチにはいつ連れてくるの?」

 考えてなかった!

「近いうちに」

「考えてなかったでしょ?」

「すみません。考えてませんでした。ご心配をお掛けしました」

 私は頭を下げる。

「まぁでも良かったわ。一時いちじはどうなることかと心配したけれど無事にくっついて。これで無事に希有きう美有みうに会えるわね」

 えっ? 今、ママは希有と美有って言ったよね? 未来で産んだ私と蒼くんの子供たち。会いたくても五年経たないと会えない。

「えっ? ママどうして子供の名前……」

「あぁ、忘れて忘れて」


 そんなの忘れられるわけないじゃん!

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バーガーショップで出会った君へ 相内麗 @yukiy777

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