1-16 リーザ

「あなたは誰ですか?」


そりゃそうだろうな。目が覚めたら変なおっさんが横にいたら思わず聞いちゃうよな。


「改めてはじめまして。俺はコージという単なる旅人だ。体調はどうだ?苦しくないか?」


リーザの体中にあったやけどの跡がすっかり消え、肌に生気が戻っていた。


「コージさんは神様なのですか?」俺の質問には答えず変なことを聞いてきた。


「なぜに神かと?」この世界は神様がその辺に普通にいるのかな?


「だってあんなに苦しかったのに、こんな楽になって、傷跡もきれいに治せるって神様くらいしかできないかと」


「いや そんな高尚なもんじゃないよ」


「じゃ魔法使い様ですか?」


「うーん 少し違うけど似たようなモノだと思っていいよ」


「助けてくれてありがとうございます。でも、どうして私はここにいるのですか?前は奴隷商の元にいたはずですが」


「無理に思い出さなくてもいいよ。今は何も考えずに休んで体を治すことだけ考えて」


「治ったらまた売られるのですか?」リーザは思わず身構えながら少し声を落として聞いてきた。


「売らないよ。隷属関係を確認して問題ないようだったら、そのまま好きにしていいよ。帰る場所があるならそこに帰るのもいいし、どこか行きたい場所があるならそこに行ってもいい。君はもう自由だよ」


「行き場所なんてどこにもないです」ほとんど独り言のように聞き取れないような小さな声でつぶやいた。


「そっか じゃどうするか決めるまでここにいるといい。メシ位出してやるよ。どの道 その腕と脚を治すまでは大人しくしててもらうがな」


「腕と脚も治るのですか?」元々大き目の眼ががばっと大きく見開いた。


「この後少し栄養取ってもらってからひと眠りして起きたら治ってる予定だ」


「すごい魔法使い様なんですね。でも何でそんな親切なんですか?私は治療費払えませんよ」まだ 疑ってる・・・・。


「別に金取らないから安心しろよ」


「何かの実験台にするとか生贄にするとか慰み者にするとか食べるとか・・・」やっぱり怪しいよな。普通疑問に思うよな。


「・・・食べねーよ 俺幼女趣味じゃねぇーし。邪教信者でもないし っかよくそんな事思いつくな。まあいいや。とりあえず普通の食事はまだ出来ないから経口栄養食な」


ステラと相談して用意しておいたゼリー状の栄養食を出してスプーンで口元へ運ぶ。事前の3Dスキャンで胃に物が入っていないことは分かっていた。道中ほとんど食事を与えられていなかったのだろう。固形物は体に悪いとステラ言われて3Dフードプリンターでゼリー状の栄養食を作ってもらった。猫人族の好みが分からなかったで、検索魔法で地球の子供用流動食のレシピを探してファブリケーターで再現した。


「食べていいんですか?」


「食べなきゃ治らないぞ」


差し出したスプーンをパクっと咥え、少しだけ微笑んだ気がした。


「のど詰まったりしてないか?まずくないか?」


「大丈夫です。美味しいです。甘くて」


甘味効かせて正解だったな。そのまま用意した量を食べきった。薬呑みで水を飲ませながら体調を確認した。


「さて少し落ち着いたらまたひと眠りしてもらうよ。起きたら腕と脚が治ってるから」


「ありがとうございます」そのままベットに体を沈め目を閉じた。ファブリケーターから出された点滴セットで麻酔を投薬して落ち着いていることを確認した。


『ステラ リーザの状態はどうだい?』


『問題ありません。移植手術はじめます。拡張仮想ディメンションストレージ展開 術式展開”ネイ セサカ カソウス コウロウス” ”デラステピロフィフィシ キッタロ” ”スキーマ エパナフェロ” エカト フォレス』ステラが聞き取れただけで3種類の魔法を同時に多重展開した。

 リーザの体の周りを大きな魔方陣が包み、空間から腕と脚が展開してきた。あるべき場所へ仮置きされると2か所の接合部に腕輪のような魔方陣が現れ回転し始めた。

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