1-15 ロリコン誘拐犯疑惑

『お客様 おはようございます。』ステラの声で目が覚めた。


昨日はコテージの外で夕食を食べた後ソファーでうとうとしてしまった。防壁の周囲には、まだゴブリン達がうろうろしている。こんな状態でソファーで眠れるんだから、この能力は間違いなくチートだ。


『おはよう ステラ。リーザの状態はどうだ?』身体を起こしながらステラに進捗状況を確認した。


『はい 無事に生命の危機は脱しました。現在は重症感染症に関しましては治癒完了しています。内臓の修復ですが、緊急度の高い腎臓の進捗は98%です。その他の臓器は64%です。腎臓の修復が完了次第、声帯の修復にかかります。それで体内の主要部分の修復は完了します。その後は全身の皮膚を修復後、一度意識を戻します。長時間の麻酔は脳損傷のリスクがありますので。部位欠損以外の修復の完了は本日の夕方頃を予定しています』

ARでTODOリストと各項目が表示され、それぞれの進捗をステラが説明してくれた。


『そうか ありがとう。』ベットの上を見ると大きな魔方陣の上に寝かされたリーザの周りをいくつもの小さな魔方陣がくるくると回っている光景は昨日のままだ。ただ顔色を見る限り生気は戻ってきている。


『部位欠損の治療まで終了するのにはどの位見ておけばいい?』


『欠損した部位のバイオプリントはファブリケーター内で現在も行っています。予定では明日の朝には完成します。接合は光魔法とファブリケーターの組み合わせで1時間位です。ですが、体力を回復し歩けるようになるまでには数日を要するかと思います。人造合成した部位は、接合した神経や魔力を馴染ませるリハビリに時間が少々かかるかりますので』


『分かった。リーザの件はこのまま進めるとして問題はこの朝からうるさいゴブリンどもをどうするかだよな』索敵術でコテージ周辺を検索すると優に100匹以上がたむろしている。採掘場跡地でキャンプしていた時は勝手に結界に突っ込んで死んでくれていたが、この周辺にいるゴブリンどもは、より賢いらしく死体はなかった。


『昨日は数匹 雷撃で倒しましたが、その死体はゴブリン達が食べてしまったと思われます』・・・習性は同じという事か。


『拡張仮想ファブリケーターってどのくらい離れたら使えなくなる?』

『正直想定していない使い方ですので実際にやってみないと何とも言えないですが、基本的にはファブリケーターは魔法の一種ですので離れれば離れるほどコントロールが難しくなります。現在は手術中ですのでこの防壁内位が限界かと』


 気になっているのはここにはいない1000匹以上の集団のことだ。見た限り下っ端の兵がファイターというクラスなら他にもより強い個体が複数いるだろう。そんな奴らが1000匹以上もここを目指して来たら正直この防壁では耐えられないと思う。偵察して戦うなり逃げるなりの判断材料は欲しいが、今ここを離れる訳にはいかない。消去法で籠城継続か。


『了解した。因みに夕方まで訓練していたいのだがAR騎士さんは魔法扱いになるのかな?』


『はい。残念ながらファブリケーターの機能の一部となっております。』


『そっか じゃ銃の手入れと型稽古して時間潰しているよ』


『かしこまりました。引き続きリーザさんの治療の監督を継続しています。目が覚めたらお呼びします』


そうして ゴブリン達の鳴き声というか罵声の中 安全な庭で格闘とショートソードの型稽古に励みながら日中をすごした。



コテージに戻りリビングのテーブルで銃を分解清掃しているとステラが呼びかけてきた。


『予定の治療が完了しました。リーザさんの意識が戻ります』


『ありがとう。今そっち行くよ』俺は銃を組み立てて寝室に行った。


ベットで寝ている横に立ち上から見下ろした。


 その姿を改めて見ると12歳という年齢より幼く感じた。猫人といっても見た目は人とさほど変わりなく、頭の上に小ぶりな猫耳があるのと長めのしっぽがあるくらいだ。顔立ちは丸顔で肩まで位の銀髪、目がやたら大きいかわいらしい子だった。


首を少しだけ起こし、辺りを見回した後、俺と目が合った。


「はじめまして リーザさん」最初が肝心だからな。さわやかさを意識して満面の笑顔で挨拶した。


「あなたは誰ですか?」怯えたように聞いてきた。・・・・この会話って傍から見ると俺がまるでロリコン誘拐犯で、怯える被害者との会話みたいじゃないか


これがリーザとの初めての会話になった。

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