1-11 出発

 こうして更に20日間ほどかけていくつかの廃坑や草原を移動しながら素材集めと戦闘とトレーニングを重ね、装備を作った。


 集まった素材は鉱石類の総計123.9t 各種土総計186t 食用可能肉が2.2t きのこや果物などの収穫物 21.2t 植物類総計4.2t(未加工状態)木材類計6.5tその他(主に魔獣の素材)3.8tと、とんでもない量になった。土類がこんなにも多いのは畑用の腐葉土と建築用のセメント原料、火薬の原料、ガラスや陶器類の原料と使い道があるからだ。流石惑星開拓用の3Dプリンター、女神様が俺に何を期待しているのか分からないがコミュ障の俺が一人で開拓して行けるようにしてくれたらしい。ありがたやありがたや。因みに不要な土やゴミはぼた山状態にして戻しておいた。いきなり全くなくなるとおかしいからね。


 集めた素材を使って日が落ちるとコテージで色々と装備や武器、薬品を作った。

靴は木の皮のサンダルからアースリザードの皮で作ったコンバットブーツ。薬品をいれるガラスの小ビンに体力を回復し外傷を直す各種HPポーション、MPを回復させるMPポーション、汎用性の高い解毒ポーションこれらは錬金術のトレーニングを兼ねて作りためした。他にも非殺傷性の武器として手榴弾型のスタングレネードも10ダースほどや朝食で食べているシリアルバーも作りだめしておいた。


これで準備は整った。この地を離れる時期だ.


翌朝、外に出て日課の魔獣回収を行いコテージを収納して排水穴を埋めた。


 腰には左にはショートソード、右にはマキシム45、背中にはメッセンジャーバック風自家製マジックバック(小)もちろんディメンションストレージ内にはマキシムカービンと弾丸も入れた。


 本当はこのまま、どこか山の中に引きこもってもいいかなと思っていたが、調味料や小麦、豆類を仕入れたいという欲求に勝てなかったのだ。それに人と話したかったというのもある。この世界を見てみたいという好奇心を抑えられるほど枯れちゃいなかった。そういう訳で俺は山から出て街に向かうことにしたのだ。これだけの素材があれば街が気に入らなければどこかに一人で籠ればいいかと考えたら気が楽になった。


「さっ 行きますか」誰も聞いていないけど何となく口に出して歩き出す。


途中の植生を観察したり、探査術の練習をしたり素材回収したりしながらのんびりと2日ほどかけて歩くことにした。せっかく来た世界じっくり楽しみながら移動したいしね。野営は予定では1泊だがコテージをディメンションストレージから出すだけなので苦痛にならない。こうして移動初日に最初に出没した草原の横を抜け、その夜は風呂を愉しみボア肉のステーキを自分で焼きのんびりとした。翌朝は日課のように結界に阻まれた魔獣を収納し、コテージを収納して歩き出した。


歩きながら色々と考える。この後 起こりそうなことを。

よく異世界物の主人公は自重するとか能力を隠すことに労力を費やすが俺はそんな気はさらさらない。場合によってはもっと強力な火器も用意できるしファブリケーターによる補給能力を考えたら大概の相手を返り討ちにして山に籠ってほとぼりを冷ます位は訳が無い。寧ろ自重するその気使いでストレスを溜めることはしたくなかった。


歩きながら久々にステータスを見てみた。


名前:コージ(高瀬 浩二)

 種族:ヒト族

 年齢:15歳(39歳)

 性別:男

 LV 15

 HP(生命力):2500

 MP(魔力):10800

 

【スキル】

  異言語理解

  格闘術:LV2

  短剣術:LV2

  射撃術:LV3

  生活魔法:LV1

  鑑定術:LV2

  隠ぺい術:LV1

  錬金術:LV4

  鍛冶術:LV4

  付与術:LV5

  探査術:LV2

  詠唱破棄

  多重魔術行使

  魔力操作:LV3

  魔力耐性

  毒耐性

【ユニークスキル】

  取得経験値増加

  ファブリケーター(統合開発環境)

  ハイスピードマルチシンク(高速並列思考)

  ディメンションストレージ(無制限)

【魔法属性】

 火:LV2

 水:LV3

 土:LV3

 風:LV3

 光:LV1

 聖:LV1

 闇:LV1

 無:LV3

 空:LV5

 *一部古代魔法のみ有効

【加護】

管理神”プリティー”シェミエルの加護


いくつか上がっているスキルがあることに気が付いた。

『ステラ ステータスでいくつか上がっている項目があるのだけどなぜ?』

『LV関連は戦闘による経験値獲得ですね。スキルは戦闘経験とトレーニング、生産系スキルと魔法関連はファブリケーターの使用によるものです』

この世界に来て既に3週間過ぎているからな。毎日 戦闘と訓練 生産と採取をひたすら繰り返していたから結構上がるもんだな。頑張った 俺 取り敢えずおつかれ。

『このステータスでこの世界で生き残ることは可能かな?』

『それはどうでしょうか? 生死はステータスだけで決まる物ではないのでわかりかねます』

『それはどこの世界でも同じか』

 

 前の世界でも優秀だから成功できるか?と言えば必ずしもそうではないことは知っている。優秀過ぎて疎まれたり、運が悪すぎるとしか思えない奴とか本人の能力が全てでもないことはたくさんの実例を見てきた。特に就職氷河期に卒業した世代なら共通認識として知っている。世代自体が既にハンデだと思うし、団塊世代の急速な退職で人手不足だとか言い出しても今更もう遅いとしか思えなかった。

この世界ではどうなんだろうか?


「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」ダーウィンの著書の言葉として知られているが実際、出典とされる「種の起源」にはそのような記述はないらしい。1960年代にアメリカの意識高い系経営者が書いた自己啓発本の中でもっともらしい引用として使っただけで何故かそのまま定着してしまったそうだ。とまとめサイトに書いてあった。


生物学者による最新の学説によると生き延びる条件は”運+環境に合わせて生き方を変える努力”なのだそうだ。この世界で生き延びる身体的条件は女神様に貰ったが運のパラメーターは見えないし、環境に合わせるといっても合わせる先の社会的環境がよく分からない。

 ステラに色々と聞いてみたが俺の質問が的確ではなかったらしく答えがかみ合わなかった。ステラのサポートはそもそも体系だった知識の習得には不向きなことに気が付いた。冷静に考えてみると戦闘系スキルの習得は講義動画+ARによるシュミレーターという別のやり方で行っていた。


どこかでこの世界の事を知っている人間に1日中質問したい。誰か日雇いで雇えなかな そんな事を考えながらテクテクと歩き続けた。


訓練のために使い続けている探知術に何かが引っかかっている気がする。複数の群れのような感じだが遠すぎてなんだかよく分からない。

『ステラ 何か探知魔法に引っかかっているんだが分かるか?』

『お客様の探査術レベル2で特定できない距離ですと1Km以上離れているので今のところ問題ないかと思います。念のためこちらでもモニターして接近した際はご連絡いたします』


何だろう まっ 気にしすぎてもしょうがない。なるようになるさ。


そのまま都市へと向かう道を歩き続けた。

 

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