1-9 トレーニング・デイズ
カーテンもない窓から日が差し込み目が覚めた。
さわやかな朝・・・と思いながら窓の外を見ると魔物の死骸の山が出来てた。
幸い匂いがないので耐えられたが朝から憂鬱だったりする。
昨日 ファブリケーターで部品を作り自分で組み立てたベットから出てリビングへ向かう。いつもだとTVを付け天気を確認したり、タブレットでNewsを見たりするのだが、そんな気の利いた物はない。とりあえずダイニングテーブルに座り、ステラを呼び出す。
『ステラおはよう。朝 食べるものストレージにないかい?』
『おはようございます。 昨日収穫した素材から加工したエナジーバーとハーブティー、果物ならご提供可能です』
『それをお願いできる?』
目の前に小さな魔法陣が出現するとまず皿が2つ作られ、出来上がりをどかすと次はカップが作られた。
次に魔法陣が出てきた時 魔法陣内に皿を置いてください。と声がしたので置くとそこにエナジーバーが2本徐々に出現してきた。
『これは昨日採取した食物から栄養素を取り出し培養したうえで今、3Dフードプリンターで製造しました。まだ素材の種類が不足しているためレシピは少ないですが当面飢えは回避可能です』
更にカップを置くとさわやかな香りがするハーブティが空間から注がれ、桃っぽい果物 アルボル2つと頭で思い浮かべながら空いている皿を見ると空間からアルボルがぽんっといった感じで出現した。 これで朝食の準備完了。なんかこの辺だけ無駄に22世紀っぽくて魔法感全くないのがすごい。ハリーが嘆き悲しんでる気がしてきた。十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。クラークの法則の逆版を見ている気がする。
頂きます。思わず手を合わせてからハーブティーを飲んでみる。うん 地球のと同じ。つかおいしい。で問題のエナジーバーっぽいやつ。見た感じは普通のエナジーバーだが、食べてみると・・・普通のエナジーバーだ。若干柔らか目 ソフトクッキーより少し歯ごたえがある食感で味はほんのりとした甘みがあるがあまり味がしない。この辺が素材不足なのかな。アルボルと一緒に食べてみると適度な甘さと食べ応えを感じた。
『さて ステラさんや 表に転がっている死体は何か教えて欲しいんだがいいかのぅ』食後のお茶を愉しみながら聞いてみる。
『はい。あれは昨晩このコテージを襲撃しようと試みた魔獣の死骸になります。昨晩張って頂きました攻性防御結界による雷撃魔法で無事撃退いたしました。後ほど収納&プレ加工して頂ければ食糧優先で加工処理いたします』
『了解 サンキュー ステラ』もはや驚きはしない。科学技術のように見える魔法なんだから・・・。
食事を取った後 クリーン&収納 と唱えると食器類は殺菌・洗浄された状態で収納され朝食終了。
表に出て昨晩の獲物を確認してみる。フォレストボア3頭、フォレストウルフ5頭、雑魚ゴブリン8匹、ストーンスコーピオン2匹、・・・そうそうたる結果だ。防御がすごいのを喜んでいいのか、こんな物騒な連中のそばにいることを嘆き悲しむのがいいのか・・深く考えると頭が痛くなるのでとっとと収納してしまおう。
収納し終わったタイミングでステラに声をかけた。今日も素材回収でいいかな
『はい まだ弾丸のストックが十分でないのと、この先必要になる資源もありますのでお願いします。午前中は、ぼた山で資源回収と射撃の練習、銃のデータ収集。午後は廃坑内に入り魔物を狩りながら格闘のトレーニングと採掘しましょう。コテージは結界を張ってここに置いていきましょう』
因みになぜぼた山で資源集めをするか聞くと この廃鉱山の最盛期は精製技術が低く捨てられた山から相当量の金属が回収できるからだそうだ。実際、銅・鉄・錫・亜鉛・マグネシウム・ニッケル・チタンの他 魔力鉄や魔力銀といった各種魔法金属、少しではあるがミスリル・オリハルコン等の希少魔法金属が回収できた他 廃坑からは土魔法を使って若干の宝石の原石類も手に入れることができた。この界隈が標本箱と呼ばれるくらい鉱物の種類が多いから最初の採掘に最適だったそうだ。
この界隈で特徴的な産出物の火薬の原料と無魔力な、くず鉱石ギッハの確保。これはこの先移動先で入手しにくいので今の時点で持てるだけ持って行った方がいいとのことでトン単位で集めた。
昨日の隣の廃坑入り口のぼた山を収納し更地になった広い場所を使ってステラ先生の指導の下、使用可能な初級魔法と生活魔法の全種、結界魔法と探査魔法を練習した。本来なら構成呪文の意味を学び、マナを練り上げ何年もかけて身に着けていくものらしいのだが、転移の際、再構築された肉体に初めから覚え込ませてあるらしい。それで一度ステラ先生と同期しながら発動させると完全に使えるようになった。うーん チート過ぎるかも。確かにこの状態に攻撃魔法まであったら最早、魔王呼ばわりされても仕方ないな。見た目がイケメンだったら勇者様なんだろうけど、おっさんだから間違いなく魔王扱いだろうな。
ポイントになるのはファブリケーター扱いの魔法だ。ファブリケーターから転用して攻撃に使えそうな魔法は、ウィンドカッターっぽい「トルエノ フィロ」やウォーターカッターっぽい「ネロ クシフォス」は範囲攻撃が可能だ。だけど絶対的な制約がありディメンションストレージの外で使う場合、発動させる対象に一度触れる必要があることだ。そのため制御に失敗すると自分も巻き込まれるリスクがある。ステラさんに制御をお願いして目ぼしい魔法を一通り発動してみたが攻撃目的では危なっかしくて使えそうにない。ただ一つだけ「ネロ モディフィカル」という魔法は自爆のリスクなく使えそうだった。この魔法は接触している限りファブリケーター扱いで発動する水属性魔法+錬金術の複合魔法で水分を一瞬にして魔素へ変換してしまう。木材の乾燥や野草からポーションやお茶を作るための前加工用に使うための魔法だが、魔獣を瞬間で干物にできる物騒な魔法でもあるのだ。ますます魔王っぽいですけど。
『この魔法で魔獣を処理してしまうと素材は使い物になりませんのでご注意ください』
その後は格闘と短剣術の訓練。教師役はAR表示された仮想騎士が努めてくれた。なんか「通信教育で空手をマスターしたことがありましてね」的な感じもするが体に馴染んだスキルの力を引き出すとともに実際に相手を殺すという部分に慣れるために体の動きを確かめながら型を確認していく。これに関しては毎日訓練しないとダメなのは分かった。
そして射撃 ハンドガンで木を的に慣れるところから始める。まずはきちんと操作できるのか?の確認をして暴発のリスクがないことを確認することから始め、反動や音量の確認、射程距離や減衰率確認、各種弾頭の効果を実際に試してみた。
というかリアルヒャッハー!って感じ?マキシム45の使用感はほとんどエアガンのようだった。消音器がかなり効いていてる上に、グリップとストックに付与した空間魔法がいい仕事をしていてほとんど反動を感じさせない。しかも弾丸に付与した魔法が想像以上に効果的だった。これだと0~50-100mまではマキシム45で行ける気がしてきた。思いつくままに立木をターゲットに乱射状態で感覚を掴んでいた。
その後は毎日 朝起きたら 素材集め 格闘、短剣、銃たまに魔法を訓練し、夜は武器や装備、各種の魔道具っぽい物を作った。単調と言えば単調だが 毎日何らかの発見やら学びがあり退屈せずに過ごせた。人と話さないでも案外平気だったことが最も意外だった。正直ホームシックみたいなものにかかるかと思っていたが全然そのようなことはなく楽しく暮らしてた。
『これで現状の攻撃手段はご理解頂けたと思いますがいかがでしょうか?』
ショートソード+ハンドガン+初級魔法による近接戦闘は何となく形になりつつあった。AR先生ありがとうございました。まぁできれば中・遠距離用の武器か魔法が欲しいところだけど。
『中・遠距離の戦闘は敵味方の識別ができるようになってからの方が良いかと思います。また、現状のスキルや魔法の威力、武器のスペックを理解の上で戦闘スタイルを模索することをお勧めします』
『そうだな。という訳で早速実践してみたいのだが、手ごろな相手はいるかな?』ステラに聞いてみる
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