1-7 完成 ドリームハウスっぽい何か
廃坑の入り口付近まで来ると大きな赤さびが混じった10mくらいの高さがある土の山がいくつも見えてきた。今度はここで炭鉱夫させられるのか。まあ魔法唱えるだけだからいいけど。
『では このぼた山へ「素材収納&プレ加工」を実行してください』
ここで何でこんなに素材を集めるのか?というか何トン収納できるんだ?このディメンションストレージってスキル。
『ディメンションストレージは無制限で収納可能です。収納時に自動でタグ付けされる他、お客様が任意でタグ付けすることが可能です。このタグを思い出して頂くことにより取り出しが可能になります。また、ファブリケーターによって自動的に素材として消費されることもございます。現時点での収容された物の一覧は”リスト”とイメージして頂ければ目の前に表示されます。
尚 現在大量の素材を集めている理由でございますが、家と武器を作るために必要だからです。何が何でも今日中にやらないと武器もなしに野宿が想定されます。この界隈で野営しますと86.7%の確率で明日の死が予測されます。今のボッチ状態で拠点が無いと眠ることができませんので』 そりゃそうだ ぼっちだと見張りがいないから眠れない。それはあまりにも辛すぎる。
早速家を作る。ステラに言われて頭の中でイメージすると目の前にARでCADが表示された。あくまでも野営用という事で45㎡1LDKの平屋で作図した。透明な大型タブレットが目の前に出現してそれを操作している感じだ。不思議と違和感なく操作できている。一から作図するというよりも思いついた大きさから自動でいくつかのテンプレートが表示され、それをカスタマイズする感じだ。設備類もいくつか選択肢が示され選んでドラッグアンドドロップで選択していく。風呂とトイレは広め。リビングは実質的に作業スペースだ。
ステラに電気や水回りについて聞くと、電気は無く照明や給水設備類、冷暖房・台所の火は魔道具で作ることを勧められた。但し魔道具を作る素材はまだ不足しているので、水と火は今のところは自分の生活魔法。で落ち着いたら魔道具を作るつもりだ。排水は土に穴掘って流す。移動するときは土魔法で埋めていけば問題ないだろう。
で、修正した図面をARの右下にあるプリントボタンを押すと、ファブリケーターにセットされ「プリント」が実行される。
地面に巨大な魔法陣が現れると骨組みの鉄骨が徐々に出現してきた。この鉄骨はさっきぼた山から収集した鉄を加工した物だ。骨組みが5分くらいで出来上がると、次に小さめの魔法陣が4つ、骨組みの横に出現し、高速で骨組みに沿って動き出す。まさにインクジェットプリンターの動きみたいだ。1方向に動くたびに10cmずつ壁が形成されていく。以前Webで見たイタリア製の家を作る3Dプリンターの圧倒的進化版といった感じだ。セメントに近い土素材とぼた山から抽出した金属を混ぜて魔法で高速乾燥させているようだ。
『壁の素材は超速乾コンクリートとギッハという魔力の無い魔石を砕いたものの混合物です。魔力を注ぐことで建物全体に結界魔法を付与できます。中空構造ですので見た目ほど重くはないです。内部の什器と家具類、窓・ドア類はディメンションストレージ内で加工中です。デザインに関して特にご指定がなかったので地球世界の図面よりサイズ優先で選びました。後日アップデートして頂ければと思います。家が組みあがりましたら、窓枠・扉・水回り・配管類をご自身で組み立てた上で組み付けてください。完成後 壁に魔力を充填し、魔力結界と物理攻性結界を付与してください。尚 この家は完成後は収納することにより移動が可能になります』
すげー ありがたい。インドア派の俺にとってこの世界で不安なのが野営だったのだ。特に風呂とトイレがきつい。大体、世間の陽キャ達は何が楽しくてキャンプするのかが理解できない。快適な洋式トイレと大きなお風呂は俺にとって絶対のジャスティスなのだ。
早速、残りの組み立てに入る。建物の躯体が出来上がると魔方陣から組み立てる順に次々と建材が出てくる。まずは床下の一部に深く穴を掘るために土を収納した。この穴に汚水を流し込むためだ。次に床下に埋める給排水パイプ。これを組付け、次は床材、釘、金槌という順番だ。それをAR表示で指示されたように組み立てていく。なんか原寸大プラモデルといった感じかな。これはこれで楽しい。3時間ほどかけて家具まで含め組み立て、中に配置し結界魔法をかけると夕方になった。
まずは入浴。ウォーターで水を張り適温になるまでファイアで加熱する。ウォーターは自力で、ファイアボールはステラのサポートをお願いしてコントロールしてもらった。いきなり火事になったら笑えないからね。異世界入浴は想像以上に気持ちよかった。
中に入り配置した椅子に座って落ち着く。昼間 野草摘みの際、巻き添えで狩った角突きウサギもどきをファブリケ-ターで解体し可食部分を一口サイズにプレカットしてもらってサイコロステーキにして食べた。味付けはもちろん塩だけ。醤油やコショウが懐かしい。でもおいしいからいいか。
食後 ソファでまったりしていると
『次に武器類ですが何を作成しますか?』
『その前に教えて欲しい。この世界の魔獣ってやつを。特に直近で遭遇しそうなやつとか食べられる奴は詳しく知りたい』
長い話になるのでざっくりまとめると
・地球世界の下位構造世界なので生き物も似ているが魔力があるせいで魔獣という存在がいる。
・動物でこの辺にいそうなのは鹿・イノシシ・牛・ひつじ・狼・鳥・リス等々
・魔獣だとスライム・ゴブリン・オーク・オーガ・コボルト・フォレストウルフ・ソリッドボア・フォレストベアなどなど
・魔獣は一般の動物とは異なり体内に魔石を持ち、魔力で体力・運動能力を底上げし、中には魔法を使うもののいる。
・この界隈の魔獣の強さは冒険者ギルド基準でEから精々Cランクというところらしい。このギルド基準に地球世界のヒグマさんを当てはめるとDランク相当だそうだ。
とりあえず地球世界と違ってのほほんとしていたら生きてはいけないことはだけは理解できた。
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